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2024年5月のピックアップ書籍

2024年5月のピックアップ書籍
2024年5月のピックアップ書籍

GP&若手口腔外科医必携小手術の導入に役立つ 実践的なノウハウ満載! 必ず上達 歯科小手術 ここからはじめる! これならできる! テクニック

道 泰之/生田 稔/富岡寛文/津島文彦/ 及川 悠/黒嶋雄志/釘本琢磨/大迫利光/ 丸川恵理子/佐藤 昌/中島雄介/樋口佑輔・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,680円(本体8,800円+税10%)・104頁 評 者 丸岡 豊 (東京都:国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科) この本の特徴は「非常にわかりやすく、寄り添ってくれる」ことである。 まずは読み進めてみる。 歯科は外科系診療科の重要な一分野であることは、論をまたない。外科技術は1つ1つの基本の積み重ねであるが、この本においては基本事項に多くのページが割かれ、その構成はまさに手術計画を立案し、実行する流れに沿っている。 第1章をみてみよう。現代の医学では患者の状態を評価し、そして立てた手術方針を患者に説明し、理解を得ることは必須の条件である。われわれ歯科医師は新型コロナの蔓延期には感染対策に細心の注意を払ったが、その大切さも述べられている。 器具の選定・準備も大事であり、これについては鮮明な写真で、そしてキーポイントとなる局所麻酔法等も簡略化された図でていねいに解説されている。 ここまで準備をすれば、いよいよ手術開始である。切開・剥離・縫合、そして止血などの外科手術の基本にも細かい「コツ」があるが、これは最近の本の傾向なのか、QRコードを読み込めばコメント入りの動画も見られるため、さらに理解が深まる。随所に「ヒント」が挿入されており、まさに寄り添って指導を受けているような気になるばかりか、文字の密度もそれほどではないため、読むのも面倒ではない。 続いて第2章は、いよいよ術式別の手技とポイントの解説である。 歯科のなかでもっとも多い外科処置である抜歯からはじまり、膿瘍切開、顎骨嚢胞摘出と続く。つぎに軟組織の手術となる粘液嚢胞摘出や小帯切除、最後に歯根端切除と骨隆起の形成術を取り上げている。各項では、はじめに基礎知識の整理、続いて豊富な写真とイラストを使った手技の解説がなされるのであるが、とくに抜歯の項においては専門医療機関に紹介すべきポイントが書かれており、もちろんこれは術者の技量により異なるが、リスクを回避するうえで非常に役に立つと思われる。また抜歯が終わった際になおざりになりがちな周囲の不良肉芽の掻爬のポイントまで、さらに歯根端切除の術後の予後の評価まで解説されている。 最後の第3章はリスクマネジメントが述べられている。薬剤や治療法の進歩により一見健康にみえる「いわゆる有病者」の患者は多い。正確な情報を集めるためにもっとも重要なのは主治医に診療情報提供を求めることであるが、聞くべきポイントについても解説されている。またさまざまな疾患別に、起こりうるトラブル、事前に集めておくべき情報、そして合併症への対応などがわかりやすく表にまとめられているので、いざというときにもパッと参照できるようになっている。後半には歯科手術で起こりうる代表的な偶発症を事前に学べる工夫もされている。 ざっと概略を述べたが、このようにわかりやすくまとめられた本書は、あまり研修会や実習などに出席できない、多忙を極める先生方に、とくに一読をお勧めする。

歯科衛生士と患者さんにもわかりやすい、著名な執筆者による解説! 超速でわかる象牙質知覚過敏 Dr.とDHのための最新知識と製品情報

吉山昌宏・編著 宮崎真至/須崎 明/向井義晴/保坂啓一/ 米倉和秀/伊田百美香/高木仲人/ 大原直子・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,400円(本体4,000円+税10%)・80頁 評 者 島田康史 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野) 象牙質知覚過敏は日々の臨床で、高い頻度で対応を迫られる疾患の1つである。一見、う蝕のような顕著な病的変化がみられない歯質でも、象牙質の知覚が異常に亢進することがあり、冷温刺激や歯ブラシの接触など、通常は痛みを生じないレベルの外的刺激に対して一過性の痛みを引き起こす状態を「象牙質知覚過敏」というが、象牙質知覚過敏の痛みの強さと持続時間は異なり、日常生活では気にならない軽度のレベルから、食事に支障をきたす強い痛みが比較的長時間持続するものまで、さまざまである。しかし、主に臨床現場で対応が必要となる症例は、知覚過敏が進行して強い痛みをともなうもので、対応に苦慮することが多い。とくに、痛みが強くても象牙質の病的変化が少ない症例は、治療に向けた客観的な診断を行うための情報が少ないことから、適切な治療方針を決めることが難しくなる。 そのような臨床現場の悩みを背景に、本書は主に、歯科衛生士の方が患者に知覚過敏を説明できるように、大きな画像とイラストを活用しながら象牙質知覚過敏の原因と治療法に関する情報を上梓したものである。象牙質が知覚を感じるメカニズムと知覚過敏の病態、また歯ブラシの方法や知覚過敏の治療方法について解説を行いながら、知覚過敏のリスクとして、歯周病や摩耗、歯の亀裂、う蝕などを取り上げ、それぞれの疾患に対して適切に対応する必要性、また、知覚過敏の治療に用いられる最新の材料に至るまで解説を行い、その材料学的な特性と使用方法に関する情報を詳細かつ簡潔に紹介している。歯科医師にとっても参考になる情報が数多く記載されている。 ところで、象牙質知覚過敏における象牙質の知覚の亢進は、従来からBrännströmによる象牙質の動水力学説により、露出象牙質面では象牙細管が開口し、刺激を伝達しやすくなることが定説とされてきたが、そのエビデンスとなる情報は長年にわたり提示されず、推察の域を出ていなかった。 そのような中で、本書の編者の吉山昌宏名誉教授は、象牙質知覚過敏のみられる患者口腔内から象牙質のバイオプシー(生体組織検査)を行って電子顕微鏡観察により、知覚過敏のみられる露出象牙質では象牙質表面で象牙細管が開口していること、また知覚過敏のみられない露出象牙質では、象牙細管に石灰化物が沈着し封鎖していることを証明し、象牙質知覚過敏のエビデンスを提示した著名な研究者である。 また本書の執筆者は、審美修復・接着修復で著名な宮崎真至教授、う蝕や知覚過敏歯の再石灰化治療で著名な向井義晴教授、同じく審美修復・接着修復で著名な保坂啓一教授ほか、著名な臨床家、研究者が加わり、錚々たる顔ぶれとなっている。それぞれの専門的な立場から、臨床症例を提示しながらエビデンスに基づいた詳細な解説が行われており、本書を極めて充実した内容に仕上げている。

歯科から高齢有病者への安心・安全な投薬マニュアル 別冊ザ・クインテッセンス 薬 YEARBOOK '24/'25 患者に聞かれても困らない!歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアル

朝波惣一郎/王 宝禮/矢郷 香・監修 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,380円(本体5,800円+税10%)・192頁 評 者 松野智宣 (日本歯科大学附属病院口腔外科) 本書の初版は平成17年(2005年)に遡る。実に20年も前である。その間、さまざま種類・多くの薬効をもつ新薬が開発・承認されてきた。 超高齢社会で多剤服用が当たり前のようになった現在、歯科からの投薬においてもポリファーマシーを起こさないようにすることが求められている。20年前はポリファーマシーという言葉すら耳にすることがなかったが、歯科医師のために「薬」の飲み合わせに関する本をまとめられた本書の監修代表である朝波惣一郎先生の先見の明には感服するばかりである。 さて、2019年に本書は『薬YEAR-BOOK'19/'20』として、「薬」をよりわかりやすく、読みやすいスタイルにリニューアルされた。まさに、患者に聞かれても困らない!歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアルとなった。そして、同年のクインテッセンス出版の年間ベストセラーにもなったそうだ。 その後、2021年のCOVID-19による緊急事態宣言の中、『薬 YEARBOOK'21/'22』が刊行された。巻頭の特集では、「歯科医院はCOVID-19感染症にどのように備えるべきか」が組まれた。ワクチン接種、感染予防対策、各種検査法などの有用な情報が提供されていた。 そして今回の『薬YEARBOOK '24/'25』でも、これまでの『薬YEARBOOK』と同様に、医療従事者向け医療総合サイト「医薬情報QLifePro」のデータからピックアップされた医科で処方されることの多い内服薬(当然ながら掲載されている薬剤は『'21/'22』からアップデートされている)を降圧薬(一般名として10薬剤)、糖尿病治療薬(11薬剤)、抗血栓薬(11薬剤)、脂質異常症治療薬(11薬剤)、精神神経疾患治療薬(11薬剤)、骨吸収抑制薬(5薬剤)、抗アレルギー薬(3薬剤)、呼吸器疾患治療薬(8薬剤)に分類し、それらの薬剤の特徴が見開きの左ページにコンパクトにまとめられている。一方、右ページには歯科で処方されることの多い内服薬(併用薬)として、抗菌薬、抗炎症薬・鎮痛薬、抗真菌薬・抗ウイルス薬、局所麻酔薬、胃粘膜保護薬の6種(17薬剤)との相互作用と方策がユニークにわかりやすく掲載されている。さらに、漢方薬との相互作用も巻末に掲載されている。 また、今回は、「高齢者特有の口腔粘膜疾患と薬に迫る」というタイトルで、一般歯科臨床で遭遇する機会が増えている口腔粘膜疾患に対する薬物療法、嚥下機能が低下した高齢者への服薬支援や口腔粘膜炎に対する漢方薬の効能について、口腔粘膜疾患や口腔乾燥症などに造詣の深い岩渕博史先生や、高齢者の摂食嚥下に精通している廣瀬知二先生など著名な著者による巻頭特集が組まれている。 すでに、これまでの『薬YEARBOOK』をお持ちの先生にもアップデートされた『薬YEARBOOK'24/'25』をチェアサイドの1冊に加えていただくことをおすすめしたい。

新人指導がラクになる! 医院のレベルアップにもうってつけの書 別冊歯科衛生士 写真でわかる できる 自信がつく 新人DHお助けBOOK

髙田光彦・監修/髙橋規子・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,620円(本体4,200円+税10%)・88頁 評 者 辻本真規 (福岡県・辻本デンタルオフィス) 本書は、新人歯科衛生士がまず身に付けるべき知識を4つのTERMに分け、約80ページに簡潔かつ、丁寧にまとめられている。本欄では簡単に各TERMの紹介、読むべきポイントを解説する。 まず、[TERM1患者導入・医療面接]では、院内コミュニケーションから医療面接について書かれている。新人歯科衛生士は、まずは患者導入などアシスタント業務から始めることも多いだろう。その際に大切な「ちょっとした気遣い」が本項に散りばめられている。多くの新人歯科衛生士(新人歯科医師も含めてだが)は自分のことで精一杯で、患者への細かな配慮を欠いてしまうことが多い。そんな時に気を付けるべきポイントをチェックしておくと、医院としての質の向上につながる。段階的な情報収集やメインテナンス時に何を話すか・確認するかなどを事前に整理しておくことは、新人歯科衛生士にとって患者との付き合い方の参考になるため知っておいてほしい。 [TERM2口腔内検査]の項では、まずP16、17をチェックしていただきたい。新人歯科衛生士がおそらくわからないと思われる、見落としてはいけない口腔内所見が写真で見やすく示されており、見るべきポイントと、原因や今後起こりうる予測が解説されている。それに続く形で、見落としを防ぐための患者・術者のポジショニング、ミラー、ライトのセッティング位置などが示されている。多くの場合、歯科衛生士学校ではここまで細かなことは習わないだろう。新人歯科医師にも読んでほしい内容である。また、頬粘膜や口唇圧、舌圧が強い患者への対応なども紹介されているので見逃さないでほしい。 [TERM3印象採得]の項では、基礎資料として不十分な印象採得が写真で示されており、「このような印象はNG」ということが視覚的につかみやすい。さらに、印象トレーの選択やアルジネート印象材の盛る量にかかわる、欠損や骨の状態などのチェックポイントがわかりやすく示されている。つい見逃しがちなポイントだが、ベテラン歯科衛生士、歯科医師も確認すべき内容である。 [TERM4エックス線写真]は、本書で評者が一番おすすめしたい項である。エックス線写真というのは学生時代に習ってからあまり情報をアップデートしない分野かもしれない。ましてや、学生時代にエックス線写真の位置づけを行うのは数例程度だったように思う。あらためて考えると、漫然と撮影し、コーンカットや根尖が入っていないなどのミス以外は、なんとなく見逃していることに気づかされる。本項では、適切な位置づけで撮影した像とそうでない像の違いや、ミスが生まれる原因である誤った位置づけのしかたが示されているので、新人だけでなくベテラン歯科衛生士、歯科医師も確認し、院内で共有するのがいいだろう。 医院に1冊あると便利な本書は、歯科衛生士だけでなく歯科医師にもおすすめだ。

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