ブランディングの重要性については前回述べましたので、今回は具体的に当院のブランディングについて説明します。ブランディングは、院長の診療スタイルや、どのような歯科医院にしたいかにより具体化するものですので、あくまでも一例として捉えていただければと思います。

まず、ブランディングの第一歩として、どのような歯科医院にしたいかを深めていきます。これは第１回で述べたキャリアデザインの考え方と同じです。そこで、開業準備の最初の段階における漠然とした私の考えを下記に記します。

・老若男女問わずどなたにも受け入れられる歯科医院にしたい
保険診療中心の一般開業医として、地域に根付いた歯科医院にしていくことがメインコンセプトですので、年齢性別関係なくだれもが入りやすい歯科医院を目指す。

・落ち着いたリラックスできる雰囲気
保険診療は、多くの患者さんを診ないと利益が上がらないため、慌ただしい感じになってしまいがちです。慌ただしい歯科医院ですと、自由診療で時間をかけて良い治療を受けたい患者さんが離れてしまいますし、歯科に恐怖心を抱いている患者さんにとっても緊張が強くなってしまいます。このような負の連鎖が生じないために、保険診療で多くの患者さんを診る必要があるとしても、慌ただしさを感じない落ち着いたリラックスできる雰囲気にして、その結果として、自由診療を希望しやすい歯科医院を目指す。

上記2点「だれにでも受け入れられて、落ち着いたリラックスできる雰囲気」を考えたときに、思いついたのがスターバックスコーヒーです。スタバはどの店舗も重厚すぎず、ファーストフードみたいな軽さもなくちょうど良いお洒落な感じですし、子連れママさんから、学生、サラリーマン、お年寄りまですべての年齢層が利用しています。また、何年経っても古さを感じず、逆に雰囲気に深みが出てくる感じもとても共感できます。そこで、スタバみたいな感じにしていこうと方向性を決め、それを具体化していきました。

開業準備の際、内装と外観の設計業者、ホームページの制作業者など、それぞれの業者に依頼します。院長が統括しているとはいえ、それぞれバラバラに作っていくことでブランディングが曖昧になってしまうと思います。そこで、建築士（内装と外観などのハード面を担当）、デザイナー（色調、ロゴ、ホームページ、名刺、ユニフォームなどのソフト面を担当）、私の三者でチームを結成してトータルデザインしていくことで、ブランディング（自分の理想の歯科医院）を具体化して作り上げていきました（図1、2）。
 

図1　当院外観。設計、ロゴ、色調、さらに植栽も含めたトータルデザイン。


図2　受付。コンセプトどおりにスタバのような落ち着いたリラックスできる雰囲気。


読者の中には、「すでに開業してしばらく経っているし、あまり参考にならないな……」と思われた方もいるかもしれませんが、ブランディングの一環として開業後も実行していることがあります。それは、季節ごとに待合室や受付、診療室のインテリア雑貨を変えていることです。

我々歯科医師はどうしても診療に集中しているため、インテリアにはあまり配慮しなくなってしまい、何年も同じポスターが貼ってあったり、ホコリの被った造花が置きっぱなしになっていたりすることも多いのではないでしょうか。患者さんは思いのほかいろいろ見ています。インテリアを季節ごとに変えることで、細かいところまで気が届いている歯科医院だと感じてもらい、患者さんの安心や信頼につながると思っています。飾るインテリアで診療室の雰囲気も変わりますので、これだけでも十分ブランディングになります（図3、4）。


図3　待合室の棚にはインテリア雑貨だけでなく雑誌や物販品もディスプレイして空間づくりに利用。


図4　診療ブースの間に設けた飾り棚にも、小物を置いて季節ごとに変えている。

ブランディングに注力することは、自分の理想の歯科医院をつくり上げるだけでなく集患にとっても、無目的な広告よりも効果ははるかに大きいと思います。ぜひ参考にしていただければ幸いです。