これまで述べてきた様に、初診や定期健診でPMTCを行っていた場合・行わなかった場合を比べると、実際の治療ではどちらが泣かないだろう? 当然、PMTCを行ってきた方が、タービンの音や刺激に慣れ泣かないはずだ。 さて、恐怖心が強い子どもは、歯ブラシからコントラに代えると嫌がることがある。 ここで、そのコツについても触れておく。 まず歯ブラシを行うときは、わざ視野に入れ一定リズムで磨く。 こうして、歯ブラシが来ると、息を止め口を開けるという回路を作っておく。 そしてコントラに変える場合は、同じリズムで視野に入れないように側方(死角)から挿入する。 ところでPMTCは、子どもの恐怖心を軽減するだけではない。 新人ドクターの研修にも有効だ。 大人と比べ小児の口腔は狭く、タービンやバキュームの動きが制限され形成が難しい。 そこで最初に、幼稚園児や小学生に歯垢染色剤で染め出しを行う。 染色された歯垢は、すべて齲窩だとイメージする。 こうして薬指をレストとして、染色部位をポリッシングする。 これは形成時、患歯に確実にバーを当てるトレーニングとなる。 また舌が動き傷つけないように配慮するなど、形成以外にも気をつけなければならない。 そこでバキュームを術者が持つことで、舌や頬の排除の方法を確認することも必要だ。 例えば、右下に齲窩があると仮定する。 注水下でPMTCをし、左手のバキュームで舌の排除をすれば、まさに形成の練習だ。 筆者自身も体動の大きな障害児に対し、タービンでの形成前には、必ず注水下でPMTCを行うことにしている。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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