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2026年10月のピックアップ書籍

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2026年10月のピックアップ書籍

日々の小児歯科臨床の良き相談相手となる一冊 小児の臨床の悩みにお答えします 治療から口腔機能管理まで、小児歯科が得意になる本

島津貴咲・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,900円(本体9,000円+税10%)・152頁 評 者 苅部洋行 (日本歯科大学生命歯学部小児歯科学講座) 小児歯科診療では、う蝕や外傷への対応といった治療技術だけでなく、子どもの行動への対応、保護者とのコミュニケーション、成長発達への配慮など、多様な要素が診療の質を左右する。そのため、教科書やガイドラインだけでは答えを見いだせない疑問に直面することも少なくない。本書は、そんな臨床現場で生じる数多くの悩みに対し、実践的な視点から答えを示してくれる1冊である。 本書の特徴は、日常診療で遭遇する疑問をQ&A形式で整理し、簡潔かつわかりやすく解説している点にある。忙しい診療の合間でも必要な項目をすぐに確認できる構成となっており、臨床書としての使いやすさに優れている。一方で、単なる「答えの一覧」ではなく、それぞれの対応の背景や考え方についてもていねいに説明されているため、読者は知識だけでなく、臨床判断のプロセスそのものを学ぶことができる。 本書で扱われているのは、専門医だけが経験する特殊な症例ではない。多くの歯科医師が直面する「よくある悩み」が取り上げられている。そのため、小児歯科専門医はもちろん、一般歯科診療所で子どもを診療する歯科医師や研修医にとっても、有用な示唆に富んでいる。 近年、小児歯科医療においてもエビデンスに基づく診療の重要性がますます高まっている。しかし、実際の臨床では、科学的根拠だけでは判断できない場面も多い。本書は、最新の知見を踏まえながら、豊富な臨床経験に裏付けられた実践的な知恵を随所に織り込み、現場で役立つ形で提示している。そのため、読者は「何を選択するか」だけでなく、「なぜその判断をするのか」という臨床的思考を自然に身につけることができる。 さらに、本書を通して一貫して感じられるのは、子どもと保護者に寄り添う小児歯科医療の姿勢である。小児歯科診療の目標は、目の前の治療を終えることだけではない。子どもが歯科医院を安心できる場所と感じ、将来にわたって継続的な口腔健康管理につなげていくことが重要である。本書には、そのための考え方や診療姿勢が自然な形で示されており、読者は技術だけではない小児歯科医療の本質を改めて考える機会を得ることができる。 小児歯科診療には、すべての症例に当てはまる万能の答えはない。しかし、より良い判断へと導くための「考え方」は存在する。本書は、その考え方を学び、日々の診療に生かすための実践書である。一度通読して終わるのではなく、診療で迷ったとき、新たな症例に遭遇したとき、あるいは自身の診療を振り返りより良い対応を考えたいときに、繰り返し手に取りたくなる。若手歯科医師にとっては日々の臨床の道標として、経験豊富な臨床家にとっては、これまでの診療を改めて見つめ直す契機となるだろう。診療室の書棚に並べるだけではなく、いつでも手に取れる場所に置き、日々の臨床の良き相談相手として活用したい1冊である。

総義歯治療の質の向上を目指す、すべての歯科医療従事者に勧めたい1冊 患者さんにしっかり説明できる6 総義歯治療読本 治療の基本からデジタルデンチャーまで

鮎川保則/鈴木宏樹/松村香織・監著 山崎史晃/神山 敬/副島隆太/鈴木勝比古/古賀智也・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,800円(本体8,000円+税10%)・112頁 評 者 古谷野 潔 (九州大学名誉教授) 「患者さんにしっかり説明できる」シリーズの最新刊として、「総義歯治療読本」が登場した。2024年7月のシリーズ第1弾の発刊以来、ベストセラーを連発し、わずか2年という驚異的なスピードで第6弾の本書が発刊されるに至ったものである。 本シリーズは、臨床現場のニーズを的確にとらえているうえに、構成もたいへん読みやすく工夫されており、巻末に掲載されている“資料”と“患者説明シート”は、診療室での患者説明に切り取って使える便利なものとなっている。こうした特徴ゆえに歯科医師ばかりでなく、コ・デンタル・スタッフにとってもたいへん有用な必携の書となっている。 今回は、総義歯治療を主題として取り上げて、監修・執筆の中心となって本シリーズを推進してきた鈴木宏樹先生と松村香織先生に加えて、九州大学で長年、義歯治療の臨床・教育・研究を推進してきた鮎川保則教授を監著者に迎えて、さらなる内容の充実を実現している。 本書はまず、総義歯新製の基本的なステップをしっかりと復習できる構成になっている。そのうえで保険診療に組み込まれた“3Dプリント義歯”を取り上げて、保険適用デジタルデンチャーへのトライアル・実践方法がわかりやすく解説されている。伝統的な総義歯補綴の臨床知識を整理しつつ、急速に普及するデジタル技術を保険診療でいかに導入すべきかを検討している臨床家にとって、まさに今知りたい情報が凝縮されている。 それに加えてCHAPTER4には、「義歯に関連する保険算定について」まとめられており、近年大きく変化している義歯に関する保険診療の仕組みの再確認にたいへん有用である。 また、本シリーズ最大の特徴である巻末の“切り取れるシート”で取り上げられた「資料3:山本式総義歯咀嚼能率判定表」と「資料4:OHIP-14 質問項目」は、総義歯治療における治療効果を客観的かつ多角的に評価するうえできわめて有用なツールである。感覚的になりがちな義歯の満足度や咀嚼機能を数値・指標として評価できるため、日々の臨床現場へ即座に導入することが強く推奨される。 さらに“患者説明用シート”で取り上げられた「総入れ歯の治療ステップ」「総入れ歯のかたち」「個人トレーのかたち」は、義歯治療の説明に必要なものでありながらこれまであまり取り上げられてこなかったもので、義歯治療を受ける患者が治療を理解するうえで貴重な資料である。「入れ歯安定剤の種類と使い方」については、日本補綴歯科学会の見解に基づいた適切な解説がなされており、臨床医にとっても患者にとっても貴重な知識となるだろう。 最新の保険改定やデジタル技術に即した確かな知識が得られるだけでなく、明日からの診療ですぐに使える“切り取れるシート”が盛り込まれた本書は、総義歯治療の質を一段引き上げたいすべての歯科医療従事者に心からお勧めしたい1冊である。

代用甘味料についてきちんと理解したいと考える歯科関係者への本 これってむし歯になりますか? に根拠をもって答える本 ─代用甘味料を迷わず説明するために─

久保庭雅恵・監 中村恵理子・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,940円(本体5,400円+税10%)・80頁 評 者 杉山精一 (千葉県・杉山歯科医院) う蝕は多因子性疾患で、近年では非感染性疾患として分類され、生活習慣病として認識されるようになってきた。また、生活習慣のなかでも飲食はう蝕に関連する重要な因子である。 多くの患者は、甘い物は歯に良くないということを知っているので、チェアサイドでう蝕リスクの説明をするときに、私たちはいろいろな質問をもらうことになる。この本は、こういった質問に的確に答えたいと思う方にピッタリである。 Introductionでは、甘味料についての“よくある誤解”を取り上げ、その誤解を解いていくために、化学構造、製造・食品表示、歯科(う蝕)、医科(全身の代謝)、規制・安全性、味質の6つの視点(カテゴリー)を挙げている。どの視点で語っているかがわかると甘味料をすっきりと把握できるとしているのはとてもユニークで、この本の特長である。 Chapter1では、6つの視点の1つの「化学構造」を手がかりにして、口腔内細菌が酸を作るかどうか、つまり「発酵性」を基本にして解説されている。化学構造式もあって少々難しいと思う方は、さらりと眺めて進んでほしい。 Chapter2では、いろいろな代用甘味料(キシリトール、ソルビトール、マルチトールなど)の14種類について6つの視点で整理してまとめてある。 Chapter3では、「臨床で“使える形”に落とし込む!」として、キシリトールガム、ゼロシュガー・カロリーゼロ炭酸飲料、糖質ゼロビール、糖類ゼロチョコレート、オリゴ糖飴、コーンフレーク(シリアル)、飲むヨーグルト(加糖)などの10種類について各1ページほどに整理して解説されている。 う蝕リスクの目安についても書かれているので、チェアサイドでの患者さんとの会話で役立つ。Chapter1、2は難しいなと思われる方は、まずこのChapter3から読み始めて、わからないことについて前の章に戻るのもいい。 そして、Conclusionには「患者さんの『続けられる』をつくる言葉」として患者との具体的な会話例がまとめられている。もちろん、この本の内容は科学的根拠に基づいて解説されており、最後にはきちんと引用文献リストが掲載されている。 著者の中村恵理子先生は、「忙しい臨床のなかで、代用甘味料の種類や特徴を整理するところまで手が回らない。けれど、目の前の患者さんには誠実に向き合いたい」という方がたへの思いから、この本を形にしたと書かれている。評者自身、代用甘味料についてきちんと理解しないといけないなと思いながら、今までできていなかった。おそらく多くの歯科医療関係者が同じ思いをしていると思われる。このような思いをおもちの歯科医師、歯科衛生士、その他歯科に関連する多くの医療関係者に、う蝕と代用甘味料についての理解を深められる本として本書をお薦めしたい。

現代顔面外科の新たなバイブルとなる幅広い領域で必読の書 Quint-Med 顔の解剖・加齢変化から考える フェイシャル アーキテクチャー  ボツリヌス・ヒアルロン酸療法の基礎と臨床

Eloá Luvizuto/Thallita Queiroz・著 瀬戸一郎/髙橋 哲・訳 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 36,300円(本体33,000円+税10%)・384頁 評 者 管野貴浩 (島根大学学術研究院 医学・看護学系医学部歯科口腔外科学講座) 顔面は、咀嚼、嚥下、構音、呼吸、視覚、表情形成などの多彩な機能を担うと同時に、個人のアイデンティティや社会生活の質にも深くかかわる、人体でもとくに複雑かつ精緻な領域のため、現代の顔面医療に携わる臨床家には、疾患や形態異常の治療だけでなく、機能性、審美性、整容性、さらには加齢にともなう経時的変化までを統合的に理解する視点が求められている。 本書の最大の特徴は単なる注入手技の解説書でない点にある。顔面を皮膚表面のみでなく、顔面骨格、筋、靱帯、筋膜、脂肪区画、血管、神経などが相互に関係する立体的構築物、つまり「architecture」として理解することを基本理念としている。加齢にともなう骨格の変化、軟部組織の萎縮や下垂、支持組織の変化が、顔貌にどのように反映されるのかを解剖学的・組織学的に読み解き、その理解に基づいて治療方針を構築する過程が、豊富な図版と実臨床症例を通して明快に示されている。 ボツリヌス毒素製剤やヒアルロン酸製剤の治療についても、「どこに、どの程度注入するか」という技術論にとどまらず、治療対象となる組織、作用機序、適応と限界、治療後の経時的変化、さらには併発症の予防と対応までが丁寧に解説されている。顔面の静的形態のみならず、表情運動を含む動的機能を評価し、患者ごとの骨格的・軟組織的特徴に応じて治療を個別化する姿勢は、安全性と再現性を備えた顔面低侵襲治療を実践するうえできわめて重要である。 本書の学術的・臨床的価値をさらに高めているのが、瀬戸一郎先生、髙橋哲先生による翻訳である。医学・歯学の双方に精通し、顎顔面外科を国際的に牽引する瀬戸先生、同じく国際的に口腔顎顔面外科領域において豊富な臨床経験と卓越した学術的実績を有する髙橋先生という、本邦を代表する2人の第一人者による翻訳の意義はきわめて大きい。原著内容を忠実に伝えるのみならず、日本の歯科・医科臨床家に理解しやすく、実践的に活用できる専門書として結実している。 本書は、美容外科や美容皮膚科に限定された書籍ではない。歯科・口腔外科、形成外科、皮膚科、美容外科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科をはじめ、顎変形症、顔面外傷、口腔・頭頸部癌切除後再建など、顔面の形態と機能にかかわる診療に携わるすべての医療者に有用である。外科的治療と低侵襲治療を対立するものとしてとらえずに、患者の機能、整容性、加齢変化をふまえて適切に組み合わせるという、現代顔面医療の進むべき方向性を示す書でもある。 顔面を「形態・機能・審美・加齢」の総体としてとらえる本書は、これからの顔面医療を支える包括的な知識と技術を提示する、唯一無二の学術書である。若手臨床家の基礎教育から、熟練した専門医による治療戦略の再考に至るまで、幅広く活用されるべき座右の書であり、現代顔面外科の新たなバイブルとして、ここに強く推薦したい。

患者さんの「やってみよう」を引き出す! 別冊ザ・クインテッセンス✖︎nico チェアサイド&待合室で活用できる 図解 口腔機能低下症説明ブック

戸原 玄・監修 山口浩平/石井美紀/髙橋知佳・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,500円(本体5,000円+税10%)・76頁 評 者 古屋純一 (昭和医科大学大学院歯学研究科口腔機能管理学分野) 2026年6月の診療報酬改定で、口腔機能低下症に対する口腔機能管理が大幅にプラス改定された。検査から管理・訓練までを日常診療の柱にすえる制度的な追い風が吹く今、現場に残された最大の課題は「患者への説明」である。検査は簡単、管理をどうするか。なぜ歯の治療に来たのに舌圧を測るのか、なぜ体操を続けなければならないのか——ここで患者の納得を得ることが、継続的な管理のポイントである。本書は、まさにこの1点のために作られた1冊である。 監修は摂食嚥下リハビリテーションの第一人者であり、評者とは旧知の仲でもある戸原 玄氏(東京科学大学教授)。執筆は山口浩平・石井美紀・髙橋知佳の3氏。書名のとおり、チェアサイドや待合室で患者と一緒に開くことを前提に、全編を通じて平易な文章と豊富な図で構成されている。Part 1はオーラルフレイルの解説から入り、食べる・話す機能が歯だけでなく口腔周囲筋に支えられていること、その衰えが低栄養やフレイルへ波及することを説く。Part 2は診断基準となる7項目の検査(口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下)を患者目線で解説。Part 3は「舌まわし」「パタカラ体操」「開口訓練」「シャキア訓練」など12のトレーニングと生活習慣指導を収める。 評者は、摂食嚥下障害から義歯治療まで、高齢者の診療を専門として日々臨床にあたっているが、口腔機能低下症については限られたチェアタイムで検査や訓練の意義を伝えきることの難しさを感じることもある。本書の価値は、検査の「意味づけ」がそのまま患者に伝わる誌面設計にある。7項目それぞれについて、何を測り、該当したら何をするのかが一直線につながっており、管理の中身を患者自身が納得しやすいだろう。継続支援への目配りも周到で、行動経済学の知見から先延ばし癖を解説するコラム「人はなぜ健康行動を続けられないのか?」は、評者の持論である「人は楽しくないことは続けられない」ともつながる。 もとより本書が扱うのは“口腔機能の軽い低下”であり、嚥下障害が疑われる症例には専門的対応が必要である——この線引きは本書自身が明記している。また、訓練や指導のエビデンスには濃淡があり、どのような指導をするかについては術者の判断に委ねられる点は注意が必要である。とはいえ、評者の研究ではリーフレットを渡すだけでも口腔機能が向上しており、本書を読むだけでも十分に効果は期待できるだろう。 8020運動の成果で歯は残る時代になった。次のステージは“歯以外の口の機能”を守ることであり、今はそれを国民に広める好機である。チャンスを算定の話で終わらせず、患者の行動変容まで届かせるためにも、待合室に備えておきたい1冊である。

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