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コラム

第6回(最終回) 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方:幼児食期の大切さ

第6回(最終回) 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方:幼児食期の大切さ
第6回(最終回) 歯の萌出状態から考える離乳食の進め方:幼児食期の大切さ
最終回は、意外と指導のブラックホールになっている離乳食完了期から乳歯咬合完成期までの食事形態(幼児食期)の大切さについてお話しします。

(1)幼児食期とは

1歳から6歳未満を幼児といいますが、この時期も口腔内の状態に大きな差があります。一般的に1歳半ぐらいには第1乳臼歯が萌出し、噛む能力が次第に向上してきます。そしてそのあたりが離乳食完了期となります。その後乳犬歯が萌出し、第2乳臼歯萌出完了までの時期は、大人が食べるよりも少しやわらかめで離乳食完了期より一口大きめの食事を考える必要があります。そこで、大人の食事に徐々に近づけていく段階として、幼児食を考えていく必要があります。 幼児食は口腔状態に合わせて、第1乳臼歯が生えそろってから、第2乳臼歯が萌出し始める幼児食前期と、乳歯列が完成し、8本の乳臼歯がしっかりと咬合するようになる幼児食後期に分けて考えるのが合理的です。 機能の発達とアンバランスな食事を続けていると、うまく噛めない、丸呑みをする、いつまでも口に貯めて飲みこまない、歯ごたえのあるものが嫌い、などの弊害が出てきます。これは、将来の咬み合わせや歯並びに大きく影響していくと考えられます。1つ1つのステップを大事にして焦らずその子を見つめながら進めていきます。

(2)幼児食前期(第1乳臼歯萌出完了から第2乳臼歯萌出期)

図1 幼児食前期の上顎、下顎、咬合の状態。 図1のように第2乳臼歯の生える状態により食材の種類や大きさ、固さ、形状を進めて行きます。米飯は普通の硬さが処理できるようになります。まだ処理しにくい食材もありますが、徐々に範囲を広げていくことが大切です。食材の硬さの目安はその子がフォークなどで無理なく半分に切れるくらいがその子の噛める硬さであることを参考にすればよいと思います。

(3)幼児食後期(乳歯咬合完成期)

図2 幼児食後期の上顎、下顎、咬合の状態。 図2のように乳歯が20本生えてしっかり噛み合うようになったら大人と同じものを食べられるようになってきます。そこで噛みごたえのあるものを食材に入れて、すりつぶす力をつけていきます。また、前歯でかじり取り唇を閉じて食べ物を保持し舌や頬の筋肉をさまざまに動かしながら奥歯に運び細かくしたり、すりつぶして唾液と混ぜて食塊を作り飲みこんだりという一連の咀嚼嚥下の集大成の時期となります。食材には加熱するとやわらかくなる物とそうでない物がありますから注意が必要です。幼児の噛む力は大人の約半分といわれているので硬いものにこだわるのではなく、噛みしめて味の出る食材を使ったり、調理したりすることを指導していきましょう。 4歳2か月 女児 5歳3か月時 5歳10か月時 図3 姿勢、食べ方指導で咬合の改善が見られた症例。 幼児期になると正しい姿勢で食べる指導も大切です。食事の姿勢は毎日繰り返すことなので噛み合わせにも大きく影響してきます。図3に姿勢や食べ方の指導のみで反対咬合が改善した症例を提示します。

終わりに

今回の連載をとおして子ども一人ひとりの口腔の発育状態に沿った離乳食の進め方がいかに大切であるかがおわかりいただけたら嬉しいです。食べることはあまりにも日常的な事なので、この点についてはどちらかというと軽視されてきたように思います。しかし口腔機能が十分に育てられなかった子どもは食に関してだけでなく構音、呼吸、顎顔面の成長発育にさまざまな影響が現れてくることも知っておかなくてはなりません。それは幼児期だけでなく長い成人期、老年期のQOLを大きく左右していくと考えられます。口は健康の入口であり、幸せの入口でもあることをわれわれはもっと啓発していく必要があると思います。

著者外木徳子

千葉県開業

略歴
  • 1983年、東京歯科大学卒業。
  • 同年、小児歯科学講座助手として入局。
  • 1992年、博士「歯学」の学位取得。
  • 1994年、東京歯科大学を退職(小児歯科学講座非常勤講師就任)、千葉県美浜区にて、とのぎ小児歯科開院。
  • 2010年、日本小児歯科学会専門医指導医。
  • 著書に『歯と体の発達に合わせた赤ちゃんと幼児のごはん』(婦人之友社編)がある。

歯科がカギを握る!小児の口腔機能育成―歯の萌出状態から見た哺乳、離乳食の進め方―

外木徳子

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