清涼飲料水のpHを調べると、概ね炭酸飲料はpH2台、果汁飲料はpH3台のものがほとんどである。それぞれ、炭酸やクエン酸などが含まれるのでpHは低いのだろう。 (図1) エナメル質の臨界脱灰pHは5.5であるから、歯は脱灰される。 一方、スポーツドリンク(P)はpH3.5、経口補水液(O)ではpH3.8となっていた。 当然、これらも歯を脱灰する。 (図2) それならpH5.5以上にすれば歯に影響を与えない・・と思うのは素人の発想なのだろうか? 確かに酸味が強いほど、スカッとして口当たりが良い。 これまで、他の理由について考えてきた。 先日、広島県呉市の大和ミュージアムに行った。 https://yamato-museum.com/ 土産コーナーには、炭酸飲料の"ラムネ"が販売されていた。 (図3) さて読者は、戦艦大和の艦内で"ラムネ"を作っていたことをご存じだろうか? 当時、乗組員にとっては、甘い味は数少ない嗜好品であった。 また長旅を癒す目的もあり、たいへん好評であったらしい。 (図4) でもどうしてラムネを作っていたのだろう? さて、もし艦内で火災が発生すればどの様にして消火するだろうか・・? まず"海水"が、頭に浮かぶ。 しかし、そうではない。 閉鎖空間では、二酸化炭素を利用するのだ。 そのために、炭酸ガス発生装置を備えていたのである。 もちろん現在の船舶も、この方法が採用されている。 (図5) この装置を転用し砂糖を加えれば、簡単にラムネができる。 かくして戦艦大和に限らず、他の大型艦でも作られていたらしい。 さて、大和でラムネを作っていた"他の理由"。 どうやら、水の腐敗にも関係がありそうだ。(参考1) 水もタンパク質など不純物が含まれていれば腐敗する。 そこには雑菌が関与する。 しかし、多くの細菌は酸に弱い。 コレラ菌はおよそpHが5.0付近。 比較的酸に強いミュ-タンス連鎖球菌でもpH4.8。 さらに強い乳酸桿菌でもpH4.0より低くなると活動できない。 腐敗した水が原因で、食中毒が起きればたいへんだ。 そこで炭酸ガスを加えpHを下げると、それが抑えられる。 仮に問題が起こった場合、ラムネでも急場をしのげるかもしれぬ。 どうやら、スポーツドリンクのpHが低いのは、このあたりにも理由がありそうだ。 次回へ続く・・・ 参考1: 水は72時間経過すると腐敗が始まる。 しかし振動を与えと腐敗しない。 これは嫌気性菌の増殖が抑えられるためである。 そのそのため航行中の水は腐敗しにくい。 しかし停泊中は,この限りではない。 前回の記事 脱水と経口補水液 その1 脱水と経口補水液 その2 脱水と経口補水液 その3 脱水と経口補水液 その4 脱水と経口補水液 その5 脱水と経口補水液 その6
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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