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脱水と経口補水液 その6

脱水と経口補水液 その6
脱水と経口補水液 その6
清涼飲料水のpHを調べると、概ね炭酸飲料はpH2台、果汁飲料はpH3台のものがほとんどである。それぞれ、炭酸やクエン酸などが含まれるのでpHは低いのだろう。

(図1)
エナメル質の臨界脱灰pHは5.5であるから、歯は脱灰される。
一方、スポーツドリンク(P)はpH3.5、経口補水液(O)ではpH3.8となっていた。
当然、これらも歯を脱灰する。

(図2)
それならpH5.5以上にすれば歯に影響を与えない・・と思うのは素人の発想なのだろうか?
確かに酸味が強いほど、スカッとして口当たりが良い。
これまで、他の理由について考えてきた。

先日、広島県呉市の大和ミュージアムに行った。
https://yamato-museum.com/

土産コーナーには、炭酸飲料の"ラムネ"が販売されていた。

(図3)
さて読者は、戦艦大和の艦内で"ラムネ"を作っていたことをご存じだろうか?
当時、乗組員にとっては、甘い味は数少ない嗜好品であった。
また長旅を癒す目的もあり、たいへん好評であったらしい。

(図4)
でもどうしてラムネを作っていたのだろう?

さて、もし艦内で火災が発生すればどの様にして消火するだろうか・・?
まず"海水"が、頭に浮かぶ。
しかし、そうではない。
閉鎖空間では、二酸化炭素を利用するのだ。
そのために、炭酸ガス発生装置を備えていたのである。
もちろん現在の船舶も、この方法が採用されている。

(図5)

この装置を転用し砂糖を加えれば、簡単にラムネができる。
かくして戦艦大和に限らず、他の大型艦でも作られていたらしい。

さて、大和でラムネを作っていた"他の理由"。
どうやら、水の腐敗にも関係がありそうだ。(参考1)
水もタンパク質など不純物が含まれていれば腐敗する。
そこには雑菌が関与する。
しかし、多くの細菌は酸に弱い。
コレラ菌はおよそpHが5.0付近。
比較的酸に強いミュ-タンス連鎖球菌でもpH4.8。
さらに強い乳酸桿菌でもpH4.0より低くなると活動できない。
腐敗した水が原因で、食中毒が起きればたいへんだ。
そこで炭酸ガスを加えpHを下げると、それが抑えられる。
仮に問題が起こった場合、ラムネでも急場をしのげるかもしれぬ。
どうやら、スポーツドリンクのpHが低いのは、このあたりにも理由がありそうだ。

次回へ続く・・・

参考1:
水は72時間経過すると腐敗が始まる。
しかし振動を与えと腐敗しない。
これは嫌気性菌の増殖が抑えられるためである。
そのそのため航行中の水は腐敗しにくい。
しかし停泊中は,この限りではない。

前回の記事
脱水と経口補水液 その1
脱水と経口補水液 その2
脱水と経口補水液 その3
脱水と経口補水液 その4
脱水と経口補水液 その5
脱水と経口補水液 その6

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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