Dental Life Design

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第1回
口腔機能障害の現状と原因

2019/4/7 デンタル〇〇デザイン

2018年の診療報酬改定で口腔機能に対する保険算定が可能となりました。超高齢社会の日本において、口腔機能の低下、いわゆるオーラルフレイルへの歯科的介入はその先にある口腔機能障害をいかに回避していくかという切実な思いから収載されたと理解しています。

小児歯科の日常臨床の現場では口腔機能不全、つまり口腔機能が正常に発育していない子どもたちに多く出会います。そのたびに小児歯科に携わっている先生方はその原因を探り、個々に対処してこられたと思います。そういった意味で、この努力が保険点数にわずかでも反映されたことは、う蝕や歯周病以外の歯科の分野に目が向けられてきたという結果で喜ぶべきことです。そこで私は、小児歯科の立場から口腔機能不全について6回にわたりお話ししていきたいと思います。

さて、口腔機能不全をもたらす原因は数多くあります。中でも私たちが特に早期から携わっていくべき重要な項目の1つは哺乳期、離乳食期、幼児食期をとおして獲得すべき咀嚼、嚥下の機能を適切なプロセスで指導することであると考えます。

平成27年の厚生労働省の乳幼児栄養調査の結果を見ると、離乳食について何らかの困りごとを抱えている保護者は約75%にものぼります。その中で、丸呑みしている(28.9%)、食べる量が少ない(21.8%)、偏食(21.2%)、食べるのを嫌がる(15.6%)などは、生活リズムの乱れを予想するところもありますが、口腔内の状態(歯の生え方や舌、口腔周囲筋の発達など)を見ないで歴齢で離乳食を進めている場合が多いです。保護者は育児雑誌やインターネットなどで膨大な量の情報を得ているにもかかわらず、子どもの口の中を実際に見たり、子どもの食べる様子をちゃんと見てあげたりしている保護者は意外と少ないことに驚きます。たとえば「早く食べなさい!」と急がされたり、両親が忙しく子どもが独りで食べたりしている様子が目に浮かびます。きっとつまらなそうに、足をプラプラさせて肘をついたりのけぞったりしながら自分の好きなものだけ食べているのでしょう。そんな状態で口腔機能は正常に育っていくわけがありません。また保育園ではよく食べますが、家ではまったく食べないという子どもの保護者に聞き取りをしたところ、まだ切歯が上下合わせて4本しか生えていない子どもに、大人と同じご飯やおかずを与えていた症例も数多く経験しています。

乳歯の萌出時期は、日本小児歯科学会平成18年報告

【図1】
によりますと、30年前よりも個人差が大きくなっていて、ばらつきは切歯より乳臼歯のほうが大きいです。特に上顎第2乳臼歯は、最小月齢と最大月齢の差が男児で2年2か月もあります。今までのように月齢のみで離乳食を進めていくと、それに合わない子どもが増えているということです。ますます個々の成長発育を見ながら離乳食を進めていく必要があることがわかります。

赤ちゃんは液体から個体へと次第に食べ物を進めて行くうちに食べ物を見て楽しみ、口に含み、咀嚼し、嚥下する過程を習得していきます。それは口の状態、歯の萌出状態に合わせて行わないと正しく習得されません。機能の習得に飛び級はなく、形態が整って機能が生まれます。その形態をうまく働かせるための練習が離乳食なのです。間違った機能の獲得はやがて間違った形態へと変化していく危険性があることも知っておかなければなりません。口腔機能が基準レベルまで発達していない子どもたちがこのまま何の介入もなく成長していった場合を想像してみてください。彼らの長い成人期のQOLは低いままです。そしてそれは加齢にともないオーラルフレイルの助長となり得ます。乳幼児期からの早期の正しい介入は口腔機能のレベルを上げ、成人期のQOLを高め、加齢による機能低下の速度を緩やかにすると考えられます。

【図2】

次回から離乳食の各時期に対してお口の状態と絡めながら注意点を話していきたいと思います。

図1:乳歯萌出時期。日本小児歯科学会2018年報告。

図2:ライフステージから見た口腔機能への歯科的介入。