8月に入り強い日差しの日が続いている。 東京では、最初の1週間で39人が熱中症により死亡したという。 学校のそばを通ると、部活動で真っ黒になった子ども達で溢れている。 さてこの季節、"脱水・熱中症の予防にスポーツドリンク"というCMが目につく。 予防のため、水筒にスポーツドリンクを入れて持たせる様に指示する学校もある。 しかし、これほど宣伝しているにも関わらず、ラベルを見ると"脱水"や"熱中症"の言葉はまったく書かれていない。 (図1) どうしてだろう? もし脱水に陥った時、これを積極的に飲ませて良いのだろうか? 一方で、スポーツドリンクのpHは3.5なので歯は容易に脱灰される。 (図2) 歯科医師の立場からは、推奨できる飲み物ではない。 でも"飲ませないと脱水に・・"と言われる。 医療従事者の一人として、この点を整理しておく必要がある。 さて多量の発汗により、体内から水分のみならずナトリウムなどの電解質も奪われる。 脱水とは、体から水分が失われるだけでなく、同時に電解質も失われることを指す。 そこで水を飲むと、小腸から吸収され、全身の血管を通じて細胞の周囲に行き渡る。 しかし、これは血漿などの"細胞外液"であり、細胞の中まで到達しない。 真水のみの補給では、細胞外液が増え低ナトリウム血症(水中毒)に陥り、全身倦怠・悪心・嘔吐などを引き起こす。 細胞に入るためには、ナトリウムが必要なのである。 そこで多量の汗をかいた場合は、水分やミネラルの補給が重要となる。 さて腸管の表面では、ナトリウムイオンとブドウ糖を同時に存在すると、水分が急速に吸収される。 (図3) これを"ナトリウムイオン・ブドウ糖共輸送機構"と呼ぶ。 ブドウ糖の濃度が、1~2%の時に最も吸収されやすいとされる。 これ低くても高くても、その効率は低下するという。 (図4) では、スポーツドリンクはどうだろう? 続く 関連記事 脱水と経口補水液 その1 脱水と経口補水液 その2 脱水と経口補水液 その3 脱水と経口補水液 その4 脱水と経口補水液 その5
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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