日本ではあらゆる業界で人手不足が叫ばれるようになって久しいですよね。
厚生労働省が発表した2018年度平均の有効求人倍率は1.63倍と、1990年度のバブル期の1.43倍を超える高水準を記録しました。
歯科業界でも同じことが起きており、歯科衛生士の採用に頭を抱えている院長や採用担当者もかなり多くいます。
歯科衛生士の応募が来ない状況をどう打開し、優秀な歯科衛生士を採用するにはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、優秀な歯科衛生士の求人・採用方法や注意点を解説します。
1.なぜ?求人を出しても歯科衛生士が来ない理由
人手不足は歯科業界においても深刻な問題となっています。
なかでも、歯科衛生士の採用に難儀している医院はとても多く、募集を出しても全く応募がないという声を多く聞きます。
実際、2018年度の歯科衛生士の求人倍率は21倍となっており、歯科衛生士は空前絶後の人手不足であることがわかります。
しかし、このような状況下で歯科衛生士を採用できている医院ももちろんあります。
しかも、医院の規模はあまり関係なく、ドクターがひとりだけの小規模な医院でも歯科衛生士を採用できているところはあるのです。
では、歯科衛生士が来ない医院はいったい何ができていないのでしょうか。
1-1.女性が多い職種ならではの難しさを分かっていない
歯科衛生士の男女比は、女性がほぼ100%です。
専門学校を卒業した新卒で21歳と、これから結婚や出産を控えている年齢といえますよね。
夫の転勤や出産など、女性ならではのライフスタイルの変化に伴い、離職してしまう人がとても多いのです。
さらに離職率だけでなく、復職率も低いことが歯科衛生士不足の原因となっています。
歯科医院はコンビニよりも多いといわれ、近隣の医院との差別化のために夜間・土日も診療する医院が増えているなかで、長時間勤務を強いられるためです。
「共働き世帯も増えているし、歯科衛生士だってお子さんを保育園に入れられればバリバリ働いてくれるだろう」と楽観視している院長もいるかもしれません。
しかし、職場復帰をしても子どもが小さいうちは長時間勤務は難しく、子どもの急な病気などで仕事を休まざるを得ないことが多くなり、結果やめてしまう歯科衛生士が多くいるのです。
そして、一般企業に勤めている女性社員との一番の違いは国家資格を持っているということ。
企業勤めであれば、それまでに築いてきたキャリアや役職を子育てのために捨てるわけにはいかない、ということがモチベーションとなり、育休明けに職場復帰する方が多いです。
対して歯科衛生士は、資格を持っているからこそ自分で働く場所を選べるため、同じ医院に復職する人が少ない傾向にあります。
1-2.歯科衛生士目線に立った求人広告が分かっていない
募集をしても歯科衛生士が来ない医院は、その医院自体に問題があるのではなく、求人のコツが分かっていないことが原因である可能性もあります。
ここで、某求人サイトに掲載されていた「A歯科医院」を例に見てみましょう。
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・先月オープン。最新の医療機器、設備 ・清潔感にも気を配り、患者だけでなくスタッフも安心安全な環境
・キッズスペースやおむつ替えコーナーも完備
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この求人のどこに問題があるの?と思った方もいるかもしれませんが、分からなかった方はまだ歯科衛生士の視点で求人について考えられていないということです。
ずばり、この求人広告は医院そのものの広告になっていて、求人の広告になっていないのです。
最新の医療機器、キッズスペースありなどの情報は、働く場所を考えている歯科衛生士にとって、それは重要なことでしょうか?
残念ながら、医院の設備や特徴だけで勤務先を決める歯科衛生士はほとんどいません。
歯科衛生士が求人時にチェックしているポイントは、もちろん個人によって違いますが、例えば以下の項目において他の医院と比較検討されています。
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・給与や福利厚生
・外部での歯科保健指導の有無
・講習会費用の負担状況
・スタッフの雰囲気が伝わる写真 など
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特にまだ現場で働いたことがなく、イメージが持ちづらい新卒の人は特にその傾向が強いでしょう。
まずは興味を持ってもらい、見学や面接に来てもらうための広告にする必要があります。
1-3.歯科衛生士にしてほしい仕事を自分で分かっていない
求人広告を出したり面接をしていく中で、どんな仕事をしてほしいかを伝えることはとても大切なことです。
訪問歯科や予防医療に力を入れる歯科が増えている中で、歯科衛生士の需要も高まっています。
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・院内の仕事だけでなく訪問診療なども担当するのか
・将来的にスタッフを取りまとめるリーダー的ポジションを任せるのか
・どう成長していってほしいのか
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…など、歯科衛生士の仕事範囲を明確にし、キャリアビジョンを院長がある程度考えた上で、意見をすり合わせていくことが大切です。
2.優秀な歯科衛生士を採用するには
これらの課題をクリアして無事に歯科衛生士の応募が来たとき、次のミッションは優秀な歯科衛生士をどのようにして採用するか、です。
いくら人手不足とはいえ、勤務態度が著しく悪いスタッフや、いかにもすぐにやめてしまいそうなスタッフを雇うわけにはいかないものです。
ここでは、どのようにすれば優秀な歯科衛生士を採用できるのかを考えていきましょう。
2-1.雇用条件の整備
多額の広告費を支払ってようやく採用できた歯科衛生士を定着させるためは、雇用条件を整備し、長く働いてもらえる環境を作ることが大切です。
雇用条件とは、人を採用し雇用契約を結ぶ際に必ず明示する事項で、下記の内容を明示することが労働基準法により義務付けられています。
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・労働契約の期間
・就業の場所
・始業・終業時刻および時間外労働の有無、休日など
・給与の計算方法および賃金の支払い日など
・退職や解雇に関する事項
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小規模の歯科医院の中には、これらの条件が曖昧になっており、昇給や報酬の基準が明確になっていなかったり、残業代が不払いになってしまっている医院もあります。
実際に勤務してからのミスマッチを防いで長く勤務してもらうためにも、明確に雇用条件を定め、面接の際に歯科衛生士とのコンセンサスを取るようにしましょう。
2-2.能力給の設定
歯科衛生士の働くモチベーションを高めるために、基本給に加えて能力給を設定するのも良いでしょう。
等級を設けて年1回など定期的なペースで査定をすることを求人票に明記すれば、自己研鑽に励む意欲の高い優秀な歯科衛生士が応募してくれるはずです。
また、長く働いてもらうために、5年勤務したら5万円のボーナスを渡すなど、勤続ボーナスを約束するのもいいかもしれませんね。
いずれにせよ、単純な基本給アップではなく、長く働いてもらうための仕組みとして給与体系を考えることが大切です。
2-3.自院に適した求人方法の選択
歯科衛生士の求人情報を出す媒体は、インターネットの求人サイトや歯科衛生士専門学校、ハローワークなど、さまざまな種類があります。
いままでは専門学校に提供される求人情報から応募する人が多くを占めていましたが、近年は専門学校生でもインターネットから応募する人が増えています。
コストはかかってしまいますが、歯科医療に特化した求人サイトへ広告を出すことを検討しましょう。
駅から遠いロードサイドの医院は、その地域に住んでいる有資格者を見つける必要がありますよね。
このような医院の場合、その地域の人を対象としたハローワークやタウン情報誌などの地域に根ざした媒体の活用が有効です。自院に適した求人方法を選択しましょう。
2-4.求める人物像の明確化
歯科医療従事者としての適性があるかどうか、自院に合っている人材かを判断するために、求める人物像を明確化する必要があります。ここが曖昧だと、採用する歯科衛生士のスキルにばらつきが出る、ミスマッチにより離職率が高まる、既存スタッフとの相性がよくないなどの問題が発生する恐れがあります。
医院の方向性や、現在医院で活躍している人物をモデルにしつつ、採用基準および面接時のチェック項目を設定しましょう。
2-5.面接の質問・確認項目の見直し
自院に適した優秀な人材かどうかを判断するためには、面接時の質問項目を精査する必要があります。
応募者の人となりを見るのには、その人がいままで取り組んできた部活やアルバイトなどで苦労した経験、乗り越えた経験などを聞くのがよいでしょう。
また採用後の働き方が互いにイメージできるような質問も効果的です。
例えば、具体的な事例を挙げて対処法を答えさせる質問は、ロールプレイの要素も盛り込むことができ、応募者の対応力や歯科衛生士としての資質を見るのにおすすめです。
3.歯科衛生士が来ない!注意すべきポイント
何ヶ月も求人を出しているのに、歯科衛生士の応募が全く来ない場合は、なにかしらの問題・状況があることを疑った方がよいでしょう。
これからお伝えする項目で当てはまるものはありませんか?
歯科衛生士の募集・採用をするにあたって、注意すべきポイントについて解説します。
3-1.口コミの内容
インターネットが普及して、病院検索サイトや地図アプリなどに口コミが書かれることが増えました。
歯科衛生士は、事前に応募する歯科医院の口コミをネットで確認していることが多いです。
そのため、口コミの内容が悪ければ、本来応募してくれるはずだった人材を逃している可能性があります。
口コミの内容はチェックしておくようにしましょう。
医院内でパワハラや女性スタッフ同士のいじめなどがある場合、口コミや噂で悪評が広まっていて人材が集まらない可能性があるため、その場合はまず環境の整備が必要です。
また、悪い口コミが付いてしまったときは返信機能を活用し、真摯に対応することが大切です。
誹謗中傷などの場合は、事務局に連絡して削除依頼を出しましょう。
3-2.広告の掲載期間
歯科衛生士が来ないからといって長期間広告を出したままにしていると、慢性的な人手不足=何かしら問題のある医院なのでは?と思われ、人材を逃す可能性があります。
求人サイトなど、アクセスすればすぐに情報が出てくる場所に広告を載せている場合は、掲載期間を調整しましょう。
3-3.スタッフ間のコミュニケーション
歯科衛生士、歯科助手含め、女性が中心となる職場だけにいじめなどの難しい問題が発生する可能性があります。
人間関係がうまくいっていない医院は、離職率が高いだけでなく、人材が集まりません。
院長は経営者でありスタッフを雇う立場でもありますが、積極的にスタッフとのコミュニケーションをとり、なんでも相談できるオープンな関係を作ることが大切です。
そのためにスタッフごとに役割を設けたり、イベントを定期的に開催するなどして、スタッフ同士がコミュニケーションを深めていける環境づくりを行いましょう。
スタッフ同士の雰囲気がよい医院は、人材が長く定着する他、紹介によりよい人材が集まりやすい傾向にあります。
まとめ
歯科衛生士の応募を増やすために、今すぐに改善できることは多くあります。
もちろん、改善したからといってすぐに結果が出るわけではありません。
一番大切なのは、あなたの医院が歯科衛生士をこんなに必要としている、だからぜひ働いてほしいという意思をしっかりと伝えることです。
その熱意があれば、きっと優秀な歯科衛生士を採用できるはずですよ。