歯科医院には、どのくらい患者さんが来院してくれるのでしょうか。 特に独立開業を目指している歯科医師にとって、患者数は気になる点でしょう。 理想の年間売り上げや1日の患者数、売り上げアップの秘訣について解説します。歯科医院の平均患者数はどのくらい?
厚生労働省の発表している医療施設動態調査によると、全国にある歯科医院の数は、平成27年以降で約68,000軒を維持しています。 日本フランチャイズチェーン協会では、コンビニエンス統計データで全国の店舗数を約55,000軒と発表しています。 コンビニの数よりも多い歯科医院には、1日何人くらいの患者数が通っているでしょうか。 1日あたりの平均患者数=1施設当たりの医療費(入院外/年間)÷1日当たりの医療費÷診療日数 厚生労働省の医療費の動向データを基に算出すると、 1日あたりの平均患者数=3,972万円÷6,591円÷235日=25名 平均患者数は、25名ということがわかります。 1日の診療時間を8時間とすると、1時間あたり平均3人。1人当たり20分が施術時間の目安となります。1日どのくらいの来院数を目指せばよいか?
歯科医院を経営するためには、金融機関への返済や医療機器の買い替え費用、人件費などを売り上げから確保する必要があります。 余裕を持たせるには、5,000万円の売り上げを目指す必要があるでしょう。 前述の通り、1日の平均患者25名で約4,000万の売り上げならば、1.25倍の32名の平均患者数を目指しましょう。 つまり、8時間診療なら1時間当たり4名を治療する必要があります。 しかし、「患者数は一日15人しかいない」「1時間で4名も治療できない」といった悩みを持っている歯科医師もいるかもしれません。 その対策については、後ほど解説します。歯科医院の平均売り上げ
厚生労働省発表の平成29年 医療経済実態調査によると、開業した歯科医院の平均売り上げは、約4,000万円と言われています。 ただし、売り上げがそのまま歯科医師の年収になるわけではありません。 売り上げから諸経費を引いた額が、純利益(=収入)となります。 ・勤務医の収入目安 平均給料(年額)586.4万円 賞与34.6万円 年収621万円 ・開業医の収入目安 年間収益4,068.6万円 費用(スタッフの給与や医薬品など)-2,880.7万円 損益差額1,187.9万円歯科医院の1日の売り上げ計算方法
歯科医院の1日当たりの売り上げは、患者さん1人当たりの平均診療報酬と、1日のレセプト枚数を掛けあわせた数値となります。 ※保険診療だけでなく、自費診療があった場合には、そちらも加算してください。診療報酬とは?
診療報酬とは、医療保険から医療機関に支払われる治療費で、薬価基準や特定保健医療材料費、診療報酬(技術科)などに区分されます。 医療行為の種類に応じて定められている点数で数えられ、1点当たり10円として計算されます。 例えば、初診料(診療所・歯科)で180点、心電図検査で150点、盲腸の手術で6,420点といった具合です。 診療報酬は、患者さんの受ける医療行為と関係しています。 この診療報酬の合計点数が歯科医院の売り上げにつながります。 一方で、診療報酬で定められている点数が国の政策で引き下げられると、比例して売り上げは下がります。 実際に、厚生労働省の発表の平成30年度診療報酬改定の概要 歯科では、「歯科外来診療環境体制加算」25点と「再診時歯科外来診療環境体制加算」5点が、それぞれ23点と3点に2点分引き下げられました。レセプト枚数とは?
レセプトは、ドイツ語で「Rezept」と綴られます。 英語では「receipt」、つまりレシートのことです。 医療保険加入者が歯科医院を受診すると、3割負担で治療を受けられます。 歯科医院は、残りの7割を保険者に対して請求しなければなりません。 請求時に根拠となるのが、このレセプトです。言わば、売り上げとの引換券に当たります。 患者さんが1人来院するとレセプトを1枚発行することになるため、「レセプト枚数」は実患者数を表します。計算シミュレーション
では、歯科医院の売り上げや経費の内訳について、「院長の平均収入ってどれ位?歯医者の売上・費用・利益の出し方も解説」を参考にシミュレーションしてみましょう。 以下は、年間の売り上げを4,000万円、診療日数235日(変動比率20%、労働分配率30%、固定比率35%)として考えた場合の例です。 1日当たりの売り上げ高 17万円 - 変動費(材料費や技工代など) 3.4万円 - 人件費 4万円 - 固定費(家賃・水道光熱費・リース代など) 6万円 = 利益 3.6万円(年間では、235日分の846万円) さらに、金融機関や家族、知人からの借入があれば、借入返済額として計上します。 また、人件費は、「限界利益×労働分配率」で計算しています。 限界利益とは、年間の売り上げから変動費を差し引いたもので会計上の経営判断に用いられる数値です。 そして、利益から諸々の税金を引かれた額が、院長の手取り額となります。歯科医院の売り上げをアップさせるポイント
ここからは、歯科医院の売り上げをアップさせるためのポイントを3点解説します。診療報酬を増やす
1人当たりの診療報酬を増やしましょう。 検査などを含め、診療報酬の項目を増やせないか確認してみてください。 意味のない医療行為を行う必要はありませんが、患者さんにとってプラスになる医療行為がないか探ってみることをおすすめします。診療時間を延長する
夜間や日曜に診察することで、平日の日中に来れないビジネスマンや学生などの患者さんを獲得できるかもしれません。 ちなみに、厚生労働省の医療施設(静態・動態)調査によれば、日曜診療(18時以降)を行う診療所の数は、平成14年で964軒、平成26年で2,474軒と増えています。キャンセル率を減らす
予約がキャンセルになると、空き時間ができてしまいます。 患者さんのキャンセルを防ぐためのポイントは3つです。 ・初診時に予約の意義や価値を伝えておく 初診時には、治療計画を患者さんと一緒に立てる際、予約制について触れておきましょう。 例えば、「予約なら患者さんのためだけに時間を使える」「治療が一度遅れると、症状が長引いてしまう」といった具合に、予約の意義や価値を理解してもらうことが大切です。 ・予約を守ってくれたら感謝を伝える 予約時間を守ってくれた患者さんに対し、感謝の気持ちを伝えましょう。 大げさに言わなくとも「予約時間通りに来院頂いて、ありがとうございます」と一言伝えるだけで構いません。 また、「予約時間通りに来て頂けるので、治療計画に沿って安心して進められています」と、経過が良好なことと伝えてみてもいいかもしれません。 ・予約前にリマインドをかける 予約確認の電話を前日〜3日前に行います。 ただし、「予約確認のために電話しました」と口頭で伝えることは避けましょう。 「〇月〇日〇時からご予約頂いておりますが、何か変わったことはありませんか」といった相手を気遣っている旨を伝えてください。 こういった対策を講じても、キャンセルする患者さんがいるかもしれません。 複数回キャンセルする患者さんに対しては、予約通り来院してもらうために医院側で改善できることはないか、確認を取ってみてもいいでしょう。 また、無断キャンセルをした患者さんに対しては、予約時刻から一定時間経ってから、電話で連絡を入れましょう。目標値を設定して歯科医院経営を
年間で目指したい売り上げから逆算することで、患者さん1人当たりの診療報酬や1日当たりの患者数などが見えてきます。 計算シミュレーションを行うことで現状との乖離を把握し、対策を考える必要があります。 目標値に達するためには、診療報酬を上げる、診療時間を延ばす、キャンセルを防ぐといった対策を講じていきましょう。