前回、初めて口腔機能発達不全の問題を取り上げたのは、報道特集"かめない子が増えている"(TBSテレビ)だと述べた。 それを遡ると、この問題に気がついたのは現場の保育士達であった。 保育所は、幼稚園と異なり子ども達と接している時間が長い。 幼稚園は弁当の持参が多い。 しかし、保育所は基本的に給食である。 しかも、同じ年齢の子ども達が、机を囲んで同じ献立で食べている。 常に、保育士は子ども達の食べる様子を見ている。 また低年齢児には、その介助も行っている。 すると、食べ方に個人差があることに気がつく。 普通に食べている子の隣に、口の中に食物をためて飲み込まない子がいる。 他の子は、食事が終わり遊んでいるのに口に含んだまま・・。 2-3回噛んだだけで、動きが止まってしまう。 飲み込めないから、次の一口が入らない。 だから、いつまでも口に含んだままか、吐き出してしまう。 保育士は、"どうして口の中に溜めたまま飲み込まないのだろう?"と考える。 遊んでいて遅いわけでもないし・・、のんびりしているわけでもない・・。 一方、食べ物を口に入れると、すぐに飲み込んでしまう子もいる。 両者に共通することは「口の動きが少ない」ということである。 実際の例をあげてみる。 ・硬い食べ物(肉・野菜)をうまく噛めず、口の中でモゴモゴさせている。(1歳4か月) ・硬い食物を噛まずに吐き出す。(3歳6か月) ・硬い食物を食べられず、そのまま飲み込んでいる。(2歳1か月) ・噛むというより、吸うようにして食べる。(1歳5か月) ・"おじや"や"おかゆ"にしないと食べられない。(2歳1か月) ・何でも噛まずに飲み込んでいる。(2歳3か月) ・いつまでも口に含む ①ごはん・パンなどを上顎につけてチューチューと吸うようにしている。 (1歳3か月)(2歳6か月) ②たくさん口につめ,噛まずに口が動かなくなる。 (1歳10か月)(3歳3か月) こういった問題は、特に1~2歳児に多い。 そんな背景もあり、20年ほど前から保育所から相談を受け見に行くことが増えた。 続く 注1:参考 かまない子 かめない子 家庭栄養研究会 1986年
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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