Dental Life Design

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歯科に求められている
高齢者医療を考えるVOL.4
多職種連携で歯科に
求められていることと
当院の取り組みについて

2020/8/11 デンタル〇〇デザイン

多職種連携の中で歯科に求められていることは、口腔内細菌のコントロール、摂食嚥下機能の維持・改善による食支援と誤嚥性肺炎の予防、そして栄養状態を把握することです。これまで、補綴治療などの歯科治療のアウトカムは「噛めること」でしたが、超高齢者社会においては、「噛めること」はもちろんのこと、「嚥下できている形態(食塊形成)に咀嚼できていること」、そして「嚥下できていること」、さらに最終的に「良好な栄養状態に変化していること」と変わってきています。しかし、その中には認知症が進行し、義歯を入れることがストレスとなる方や、義歯を装着しているにもかかわらず咀嚼機能の低下により食事量が減少する方がおられます。このような場合は、可能な限り義歯の調整をしたのであれば、義歯の装着にこだわらず使用の中止や卒業を決定するのも歯科医師の仕事と考えます。何より栄養を摂取することがいちばんの目標なのです。
その際には口腔機能と食形態のマッチングを行い、口腔機能にあった適切な食形態への提案が必要となります。実際、施設スタッフや家族の中には、義歯があれば何でも食べられて元気になると考えられている方がおられます。このような方々には「足が2本あっても筋肉がなければ歩けないように、歯だけあっても筋肉がなければ噛めない」ということを説明したうえで、まずは栄養摂取による全身状態と廃用部の改善に取り組むことが大切です。 私たちの食支援における多職種連携の取り組みとしては、特別養護老人ホームにおける経口維持加算の会議があります。これは、入所者の方が認知機能や摂食、嚥下機能の低下により、たとえ食事の経口摂取が困難となった場合でも、口から食べる楽しみを得られるように、多職種共同での支援の充実と促進を図ることを目的としています。月1回、私たちと施設のケアマネジャー・看護師・管理栄養士・介護スタッフが集い、経口摂取に問題のある方の情報を共有し、実際に食事観察(ミールラウンド)を行います。また姿勢や食具の調整、嘱託医への内服薬の調整の依頼、口腔機能と食事のマッチングを行いながら適切な食事形態で経口摂取ができるようにアドバイスを行っています。当初は多くの方がムセながら食事をしておられましたが、4年目になる現在では、まだまだ試行錯誤ではあるものの、スタッフの方々の努力でムセの"大合唱"はずいぶん改善されたと実感しています。 また、施設の入居者の方やスタッフ、市民への啓蒙活動も大切な業務であると思っています。施設入居者向けには、歯科衛生士が中心となり楽しく参加できるようなレクリエーションを開催し、口腔機能を含めた全身の機能低下予防を行っています。入居者の方の日頃の口腔ケアのキーパーソンは施設スタッフであり、その教育はもっとも重要と考えています。勉強会をとおして交流を図りながら、ケアの方法、咬合支持の重要性、粘膜疾患や食支援にいたるまで理解をしてもらえるよう心がけています。入居者の方のためというのがメインですが、その結果スタッフ自身の口腔機能への意識が変わり、さらにスタッフの家族や友人などまわりの方々までも意識が変化することを目標として、スタッフ一同取り組んでいます。 地域活動としては、「なみきつながりネット」という地域ケアネットワークで活動を行っています。地域高齢者にむけて地域の医療・介護のそれぞれの専門家が集い、健康教室などで交流を図りながら、健康長寿の実現を目指しています。その中で私たちは、口腔ケアの方法や口腔機能の重要性について市民の方に知識をもっていただくような取り組みをしています。この会は他の専門職の方との合同で行うため、異なる観点からの健康長寿へのアプローチができ、新たな視野を広げてくれる非常に有意義な時間となっています。 多職種連携を行うためには、それ相応の時間が必要となります。しかし人間的・社会的な広がりを経験することができ、また私たちが必要とされている存在であると再確認できます。ぜひとも多職種連携の世界に踏み出していただければと思います。 次回は、これからの時代により必要と思われる歯科-歯科連携の重要性と取り組みについてお話しさせていただこうと思います。