Dental Life Design

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歯科に求められている
高齢者医療を考える
VOL.5 訪問歯科における
歯科-歯科連携の重要性と
当院の取り組み

2020/9/3 デンタル〇〇デザイン

日本の高齢者人口は、今後20年かけてさらに増加していきます。とりわけ75歳以上の後期高齢者の人口の増加が著しく、300万人が増加すると予測されています。高齢になるにつれて、身体的には認知機能の低下、全身疾患や多剤服用、口腔においては、う蝕・歯周疾患などの歯科疾患、咬合崩壊による補綴治療難症例、口腔機能の低下、口腔がんを含めた粘膜疾患のなどの罹患・重症化のリスクが高くなります。

そして、これらの多種多様な病状が複雑に組み合わさることにより、引き起こされる摂食嚥下障害・栄養障害への対応が高齢者歯科医療に求められます。さらに考えておくべき点として、生産年齢人口の減少にともなう医療・介護を支える側の相対的もしくは絶対的な減少があるということです。大学病院のようなマルチディシプリナリーアプローチが可能な環境と異なり、在宅医療においては、職種間の垣根を超えたトランスディシプリナリーアプローチが必要となる場面が多くあるため、歯科医師といえども他職種の幅広い知識・スキルが求められることとなります。大変さばかりが目立つと思われるかもしれませんが、考え方をかえると歯科医師過剰の時代といわれているなかで、高齢者医療における歯科のプレゼンスをアピールする絶好の機会となるかもしれません。



「歯科は自分のスキルの中に患者を閉じ込めている」とある高齢者歯科の先生がいわれていました。まさにそのとおりで、医科では当然のように専門分野外の症例はその専門医に任せる、もしくは連携するシステムができあがっていますが、歯科においてはまだまだシステムができあがっていないのが実情です。前述したような幅広い高齢者医療の範囲を個人ですべて対応することは非常に難しいといえますので、今までの歯科の概念の殻を破り、歯科で力を団結して対応する歯科-歯科連携が高齢者医療において、今後重要となってくるのではないかと思います。

当院の歯科-歯科連携における取り組みとしては、補綴専門医である九州大学病院の鮎川保則准教授や口腔外科専門医である森山雅文助教が非常勤医師として勤務していますので、補綴難症例や有病者の外科処置・粘膜疾患症例について気軽に相談ができ、他のスタッフとも共有しながら指導していただける環境を整えています。また、福岡の同世代の先生方とは「福岡高齢者医療研究会 S.O.N.Y.-MED」というスタディグループを立ち上げています。メンバーは、大学病院、病院歯科、一般歯科、開業医勤務の訪問歯科とさまざまな立場で、補綴、口腔外科、歯科麻酔、高齢者歯科、訪問歯科などの専門分野をもち、セミナー開催・症例の供覧・オンラインでの症例相談などで歯科-歯科連携を行い、高齢者医療における歯科医師のベースアップ・レベルアップを図っています。



今後は、オンライン診療やSNSといったコミュニケーションツールが加速度的に発達していくことが確実ですので、より歯科-歯科や医科-歯科連携がしやすくなり、タイムラグなく迅速に最適な医療が提供できる時代が近くやってくると思っています。



さて、これまでの話で高齢者歯科は難しい、面倒だと思われた先生もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、長い間先生方の医院に通っていただいた患者さんの気持ちにたった場合を考えてみてください。実際、訪問にうかがった時に、多くの高齢者の方から前医のすばらしさについての話を繰り返し、繰り返しよくうかがいます。多くの方が、長い間診察してもらったかかりつけ医の先生に「最期まで診てもらいたい」と強く願っておられるのを実感します。その思いに応えるためにも、訪問診療を行っていない先生には、ぜひ訪問診療のはじめの一歩を踏み出していただきたいと思いますし、すでに訪問診療を行っている先生には、より良い医療を提供するためにも歯科-歯科連携を行い、多職種連携の中での歯科のプレゼンスをぜひアピールしていただきたいと思います。

次回(最終回)は、総括として訪問歯科の現在の問題点と今後の展望についてお話しさせていただこうと思います。