Dental Life Design

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がん専門病院で働く
歯科技工士になるまで
第1回:私、歯科技工士になる!

2021/6/29 デンタル〇〇デザイン

皆さまはじめまして。東京・築地にある国立がん研究センター中央病院で歯科技工士として勤務している小室美穂と申します。

今回、このような貴重な機会をいただきましたので「がん専門病院における歯科技工士の役割や重要性について」をテーマにお話しさせていただく予定です。全6回にわたり、現在に至るまでの私のあれやこれやなど、私事も織り交ぜつつご紹介したいと思っています。最後までお付き合いいただければ幸いです。

まず、皆さまにご質問です。歯科技工士の仕事ってご存じでしょうか。もちろん歯科関係者ならば「愚問ですよ」と思われるかも知れませんが、案外そうでもないのでは?と感じています。

一般の方には歯科医師や歯科衛生士と間違われることが多々あるからです。義歯や補綴物は歯科医師が製作していると思われている方も大勢いらっしゃいます。かくいう私も歯科界に入るまで、歯科技工士の仕事を正確に理解できていませんでした。

2007年、私は地元・京都で歯科助手として一般歯科医院で働いていました。石膏模型を歯科技工所に送ると、数日後に歯科技工物が納品されていました。歯科では当たり前の流れなのかもしれませんが、無知だった私は歯を失った場所に人工歯ができ上がることに感動したことを今でも覚えています。

当時、歯科助手の仕事はたいへんやり甲斐があり、歯科技工士になろうとは思いませんでしたし、まさか現在のように働くようになるとは想像もできませんでした。しかし、歯科助手という立場で患者さんの困りごとをうかがう機会が予想以上に多く、補綴物での困りごとや、特に義歯で困っている方が多いことに驚きました。

今思えば無知だからこそかもしれません。「だったら私が作ります!」と歯科技工士になるべく、大阪大学歯学部附属歯科技工士学校に入学しました。卒業後は義歯専門の歯科技工士になると意気込み、学生生活を送っていました。

そんな私に、歯科技工士人生におけるターニングポイントが訪れます。衝撃的ともいえる「顎顔面補綴との出会い」です。

顎顔面補綴の特別講義を受けたのです。がん患者さんの症例写真や患者背景、顎義歯、エピテーゼそのすべてが初めて知る事実でした。義歯でお困りの方以上に困っている方がいました。補綴物がただの「物」ではなく、「生きる」につながる力になるということ。そして、そういった装置を製作している歯科技工士がいるということ――。

この時、私は顎顔面補綴装置を作る歯科技工士になると心に誓いました。さいわい、大学附属の歯科技工士学校でしたので、学ぶには最高の環境でした。私は顎顔面補綴学の先生、附属病院の歯科技工室の先生に存分に教えを乞い、そこで知る事実や現実のすべてを吸収すべく、ますますのめり込んでいったのです。

次回は顎顔面補綴についてご説明させていただきます。