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働き方改革 in デンタル Vol.2

働き方改革 in デンタル Vol.2
働き方改革 in デンタル Vol.2

歯科技工所 株式会社LAZARUS(ラザロ)
代表取締役 村田彰弘氏インタビュー 後編

前編では独立されるまでの経緯と独立当初のお話をうかがいました。
後編ではさらに、LAZARUSさんでの働き方に関する取り組みに迫ります。

●女性が働きやすい環境づくり
●デジタルの導入で働き方改革を推進

−−ラザロは女性の技工士の方が、たくさん働かれていますね。

はい、これまで技工所の労働環境はあまり良くなかったことから、女性の働き手が少ないのが実情でした。しかし当社は事務員を含めると、女性のスタッフが半分以上を占めています。女性技工士は手先が器用で、作る製品の質も高く、机の上なども男性に比べて整理整頓されていることが多いので、歯科技工士の仕事に向いていると常々感じています。近年、歯科技工士の学校の入学者が減り続けています。ということは、技工士として働く人はますます今後減っていくことが確実で、採用に関して「技工士の売り手市場」が続くはずです。そのとき女性技工士に「選ばれるラボ」でなければ、優秀なスタッフは集められません。福利厚生に力を入れるのも、それが大きな理由です。とくに女性は、結婚や出産といったライフスタイルの変化で働き方も変わりますし、報酬の多寡だけでなく、きちんとした福利厚生を求める傾向が強くあります。しっかり休みながら健康的に働き続けることができ、安定した収入が得られ、良い仕事ができる環境を整えることがとても大切です。

−−仕事の効率化のために、LAZARUSさんでは業界の中でもかなり早く、デジタル対応に力を入れてきたそうですね。

はい、歯科技工所のなかでもいち早くデジタル機器を導入したことは、LAZARUSの大きな強みになっています。私が一人で開業した8年前は、仕事のほとんどがプレシャスメタルの鋳造による、メタルボンドかハイブリットクラウンの製造でした。しかし8年後の今、当社のインプラント加工はほとんど100%デジタルで作業しています。スタッフは歯科用のCAD/CAMソフトでインプラントを設計し、各種のスキャナーや3Dプリンタ、歯科技工所で導入しているところは数少ないミリングマシンを用いてスピーディに完成品を作ります。また北海道から沖縄まで広がるクライアントである歯科医さんと、綿密に意志の疎通を図るために、LINEやFacebookメッセンジャー、チャットワークといったコミュニケーションツールも活用しており、口腔内や歯の写真画像もリアルタイムでやりとりしています。しかしいくらデジタル技術が発達しても、歯科技工士はあくまで「職人」です。デジタルで造形しても、最後の調整は必ず職人技の手仕事が必要になります。一人前になるには10年ぐらいかかることは昔と変わりません。LAZARUSのスタッフのユニフォームには、「燃え盛る職人魂」という意味の英語が書かれていますが、それは「職人の技術」こそが私たちの最大の財産であるということを意味しています。

−−これから先に、LAZARUSが目指す目標があれば教えていただけますでしょうか。

ひとつは日本の腕の良い若い歯科技工士が、短期であったとしても、海外で仕事をする経験が出来る環境を作っていきたいと思っています。僕はアメリカをはじめ、出張で世界中いろんな歯科技工所を見てきましたけれど、日本の技工士は世界でトップクラスの高い技術を持っていると思っています。海外の歯科医や歯科技工所の間でも、日本人技工士の技術の高さはよく知られており、働ける場はたくさんあります。うちで働く若いスタッフの中にも「海外で挑戦したい」と考えている人が複数おり、僕自身が若い頃に、アメリカでビザを取得する際に、どのような手続きをしたらよいかわからず苦労したので、そういうガッツのある若い人をバックアップできる仕組みを作りたいと考えているところです。そして海外で培った経験と技術を、日本に帰って来てから存分に奮ってもらいたいと思っております。
日本の中でもここ大阪は、トップレベルの歯科技工士が集まる場所です。それは技工士の研修施設である「大阪セラミックトレーニングセンター」があることが理由で、私がオフィスをここ本町にしたのも、トレーニングセンターの修了生を採用したいと考えたからです。日本の技工士は、本当に高い技術を持っています。だからこそ、その腕が正当に社会から評価され、今よりもっと歯科技工士みんなが良い暮らしができるようになるべきだ、と考えています。
僕は、技工士という職業は、すごく誇りを持ってやれる、良い仕事だと思っているんです。商売によっては、人の弱みにつけこんだり、人を騙してお金を儲けるような側面がありますが、歯科技工士の仕事はそうではありません。本当に良いものを作れば、患者さんや歯科医師に心から喜んでもらえて、みんながハッピーになれる仕事なんです。うちだけでなく業界全体で労働環境の改善に取り組めば、すごく魅力ある仕事にできるはずです。しかし現状では、歯科技工士の仕事の本当の面白さ、やりがいを知る前に辞めてしまう若い人は少なくありません。そういう人を一人でも減らすことに、LAZARUSが貢献できれば嬉しいですね。

−−LAZARUSの取り組みは、歯科技工士業界全体にも、大きなインパクトをもたらすと思います。本日は貴重なお話、ありがとうございました。

前半はこちらから
働き方改革 in デンタル Vol.1

株式会社LAZARUS
URL : https://www.lab-lazarus.com/
代表取締役/歯科技工士など
村田 彰弘 AKIHIRO MURATA

■略歴
・2002年3月
兵庫歯科学院専門学校卒業
・2002年
保険技工所にてデンチャー担当
・2003 - 2005年
伊藤歯科医院(大阪・新大阪)
・2005 - 2006年
Au Ceram(USA・サンタモニカ)
・2006 -2010年3月
カツベ歯科クリニック(大阪・本町)
・2010年5月6日
LAZARUS開業

■所属学会・講習会受講歴
大阪SJCD会員
顎咬合学会会員
顎咬合学会認定技工士
スタディグループN・H・K会員
Amorphous 会員
咬合・補綴治療計画セミナー 本多正明先生

著者大越 裕

神戸市在住。
2社の出版社を経て、2011年フリーに。
ビジネス・サイエンスを中心に様々なテーマの取材記事を各種メディアに執筆。
理系ライターズ「チーム・パスカル」所属。
http://teampascal.jimdo.com
大越 裕

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