コロナ禍のおかげでペットの犬、猫の価格が高騰しました。日本でも、英国でも、インドでもコロナ禍の前に比べて、だいたい倍になったそうです。ステイホームでペットに癒やしを求めるのは、世界的な傾向です。日本の場合、人気種は数百万円でも売れるとか。 https://www.asahi.com/articles/ASP1Z42Z9P1XULFA02B.html https://www.bbc.com/news/uk-58518892 https://www.tribuneindia.com/news/ludhiana/amid-pandemic-dog-sales-boom-299298 高騰した犬、猫を誘拐する犯罪も増えているそうで、英国ではそれを取り締まる法律ができました。一方、飼育放棄も問題になっています。「思った以上に手間暇がかかったから」、「ロックダウンが解除されたことで世話ができなくなったから」と、安易に飼われたペットは安易に捨てられてまうという悲劇が起こっています。日本でも、行き場のなくなったペットで保護施設が一杯になっているとのこと。 そんなわけで、今、犬、猫を飼おうかなと思っていらっしゃる方に、保護犬、保護猫を迎えるという選択肢を提案したいです。実は、我が家の愛犬は、2年前に愛護団体から譲り受けた野犬の子でした。犬を飼おうと決めた時に、一つの命を救えるのならと思って、保護犬を探しました。今、2歳になった彼女に、実は私の方が救われていると思うほど、家に来てくれたことに感謝しています。 野犬というのは、もともと飼い犬が野山に捨てられて、群れを作って、人間の力を借りずに野生化した犬だそうです。身体能力の高い成犬を人間が捕まえるのはかなり難しく、繁殖のシーズン毎に同じような顔の子犬が生まれて、保健所が子犬を捕まえるというイタチごっこを繰り返しているとのこと。その子犬たちは愛護団体が引き取って、譲渡会や保護犬カフェで里親を探しています。譲渡の条件は結構厳しく、55歳未満であることや家族がいること、去勢・避妊手術をすることなど、その子犬やその子孫が再び路頭に迷わないように配慮されています。以前に犬を飼ったことがない人も愛護団体によっては譲渡条件から外れがちで、思いの外、ハードルが高いです。 <ある譲渡会にて> 私は生後約2ヶ月のこの子犬と譲渡会で出会い、まずは2週間のトライアルをしました。譲渡費用は3万円で、後々、雌なので避妊手術費も必要になります。引き渡しの時には、愛護団体の人が家庭訪問をして審査します。個人情報の漏洩は大丈夫かなと心配になるくらいの徹底ぶりです。マイクロチップはすでに愛護団体で埋め込まれ、寄生虫がいるかもしれないとのことで虫下しの薬もいただきました。 <家に迎えた日> 我が家に迎えた当初は、子犬のイメージを覆されました。うんともすんとも言わず、疑いの目を向けながらクレートの中にじっと隠れています。少しの音にも敏感で、自分の足で踏んだビニール袋の「カサカサ」という音にもビクッと反応し、神経が張り詰めているようでした。ケージから外に出すと家の中でも怖がって足がすくみ一歩も動きませんでした。 一方、トイレの躾けは全く必要なく、毎回、ケージ内で寝床から一番離れた場所にしてくれました。子犬らしく物を齧ったり、遊んでほしいとねだることもなく、人間側の生活パターンにほとんど支障がありません。全く吠えないので、ご近所迷惑にもならずに助かりました。ドッグフードの袋を開ける音を聞きつけた時だけ、クレートから目の色を変えて出てくるので、外に出したい時は専らこの方法を使いました。 野犬の母犬たちは、子犬が敵に見つからないようにクンクン鳴かず、巣穴をきれいに保つためにトイレは離れたところにせよと、そう厳しく躾けるのでしょうか。犬同士のコミュニケーション術もきちんと学んでいたようで、他の犬にどんなに吠えられても吠え返したりしないので安心です。子犬の社会性を養うための「犬の幼稚園」に入れる必要もなし。ただ、外に抱いて連れ出すとガタガタ震え、特にコンビニなどの開けた場所に出るとギャン鳴きして虐待をしていると思われても仕方ないくらいでした。 その愛護団体は、野犬の子たちが、飼い主が抱いても抵抗しないように、抱っこして餌をあげるそうで、私もそのようにしました。獣医さんに診てもらうにも飼い主が抱けなければならないからだそうです。おかげで抱かれる時だけはペット犬のように素直に体を預け、前足で人に上手につかまります。しかし、心は預けておらず、諦めのようなため息をつくことも。 まだ生後2、3ヶ月というのに「待て」「おすわり」「ふせ」「ジャンプ」など、餌欲しさにコマンドをすぐに理解し、なかなか賢いです。夜鳴きや分離不安もない、子犬なのに自立して一人前に生きている逞しさを感じました。そして、2週間のトライアル期間も終わりに近づき、この逞しさと健気さに惹かれて、飼い主になる決意をしました。この先十数年間、この子の幸せがこの手にかかっているという重責を感じながら。 【2】幸福感をもたらすパートナー」へ続く
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
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