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2020年7月のピックアップ書籍

2020/6/30 歯科NEWS

デジタル・モノリシック・インプラントレストレーション

モノリシックジルコニア、デジタルデザインプロトコル。歯科医師、歯科技工士はこれらの用語を聞いてどのように感じるだろうか。①親しみやすい、およその物性、取り扱いは把握している。②日常的にすでに使用しているが、何か?と聞かれば少々戸惑う。③あまり乗り気ではない、興味も薄い。メタルの鋳造や、長石系の焼成、二ケイ酸リチウムのプレス製法など、一流の感覚と匠の手法にこだわり続ける歯科医師と歯科技工士はともかく、意識しなくとも製作の現場ではデジタルは歯科技工のなかに浸透しており、もはやそれなしに補綴装置の製作は難しくなっている。 一方で、歯科医師はどうだろう。結局製作は歯科技工士なので、今までどおりの診療を続け、納品物が変わっただけで通用するのだろうか。本書には曲げ強さやビッカーズ硬さなどの物性、蛍光性を含めた色調、新しいスクリューアバットメントのデザインなどの有益な情報が満載されており、臨床ではその接着も完璧にマスターしなければいけない。 いつの世も新技術は、やたらと設備投資のかかる先進・最先端の治療と錯覚させられ、知的好奇心旺盛な諸先輩たちのおかげで業界は発展する。著者のTommyこと山下恒彦先生のデジタルの歴史は間違いなくパイオニアの1人であることを証明しており、山下先生らが培った技術とともに、残念ながら結局行き詰まった技術も多くあり、苦労の歴史の上に今に至る発展が垣間見える。 新しい技術は新しい副作用とともに誕生する。その弱点を知る努力を怠ると、永遠に騙され続ける人生となる。それならいっそ頑なに古くて確実なものを守り続けるのも1つの選択肢である。産業に飼われる演者は弱点を警鐘しないこともある。あるいは気づかない強い精神をもつこともある。しかし、デジタルをいい訳に失敗することなどできない。本書ではデジタルといえど、アナログを介在させるポイントを解説するセンスのよさが際立つ。評者が提供した症例では山下先生らが培った手法に、ある素材を介入させて緩衝作用を狙っている。そこにはまた副作用も多くあるだろう。そこを回避するためにさまざまな工夫も提示している。 デジタルや、モノリシックという黒船に溢れるこの歯科界で、業界の都合に振り回さないように、航路に迷う沈没船に乗らないように、羅針盤となる必読の書である。 評者:米澤大地 (兵庫県・米澤歯科醫院) 山下恒彦・著 秋山和則/笹部雅大/一_通宣・執筆協力 佐藤洋司/白鳥清人/瀧野裕行/夏堀礼二/増田英人/南 昌宏/三好敬三/安岡大志/米澤大地・症例提供 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:7,000円(税別)

ビジュアルマイクロサージェリー

1990年代から歯科臨床でマイクロスコープが使用されるようになってきた。歯内療法を行う先生が中心となってマイクロエンドが盛んに行われ、現在までにマイクロエンド、マイクロエンドサージェリー、マイクロペリオサージェリー等に関しては多くの本が出版された。世界的にも学会が立ち上がり、著者の柴原先生も、日本顕微鏡歯科学会の活動に口腔外科医の立場から積極的に参加している。 日本ではまだ口腔外科を専門としている先生がマイクロスコープを使用して治療するというスタイルが十分に確立されておらず、他の国においてもそうである。本書に書かれているように、多くの口腔外科医は血管吻合のためにマイクロスコープを使用することはあるが、柴原先生のようにすべての症例に使用している先生は世界でも稀である。柴原先生がマイクロスコープ治療を行いたいと思った動機は、患者のために時間短縮、低侵襲化したかったためであると本書のなかで記述しているが、まさしく患者サイドに立った考えであり同意する。 本書では、マイクロスコープを使用して、口腔外科処置を行う際のオペ室での状況、配置、器具準備、オペの手順、これらをマイクロスコープの録画像を使用して流れのよい解説で、非常にわかりやすく組み立てている。また、著者の行っている処置の理由、その判断基準も示している。通常診療でも必ず行われる浸潤麻酔についても、著者の患者の安全に対する思いやりが感じられた。水平埋伏智歯の抜歯手順も、マイクロスコープを使用する際のポジショニング、必要で有効な使用器具、分割抜歯手順、縫合についても詳細に解説されている。インプラントの手順や判断基準、骨造成、サイナスアプローチ、最後は光学印象にまで話は及んでいる。 最初と途中と最後の写真を掲載して解説する本は多々あるが、マイクロスコープで録画した画像から手順よく、読者にわかりやすい、まさしく本書の題名どおりの『ビジュアルマイクロサージェリー』である。本書は、すでにマイクロスコープを使用している先生や、これから口腔外科手術、インプラント手術を学ぼうとする先生にも非常に適切な本といえる。 評者:辻本恭久 (日本大学松戸歯学部歯内療法学講座・付属病院マイクロスコープ特診外来臨床教授) 柴原清隆・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:8,800円(税別)

新時代の歯周外科─切開と縫合の基本から拡大視野下の手術手技─

拡大視野よる歯科治療は今や若手の歯科医師にとって身近なものとなりつつある。歯内治療、補綴修復、審美歯科治療、そして歯周外科、インプラント外科においてその美しい成果と予知性の向上は目を見張るものがある。本書は新しい時代を背負う日本のリーダーの1人である佐藤琢也氏により書かれた新しい歯周外科の手引書である。著者は若い頃から海外に目を向けてUCLAにてHenry Takei,Sascha Jovanovicに師事し、帰国後仲間らとともに知識や技術の向上に努めたエネルギッシュで爽やかな歯科医師である。マイクロを使った歯周外科は従来とはまったく違った領域であり、同時に従来の術式の延長でもあるところが難しくもあり、奥深いところである。本書ではそのことを踏まえ、マイクロを日常臨床に取り入れる障害を乗り越えるためのヒントが与えられており、これから歯科を担う歯科医師にとって最適な手引書となっている。 本書の特徴は①見やすいこと、②わかりやすいこと、そして③美しいことの3点である。症例数が多く、いずれもきれいな術式と見やすい臨床写真で構成されており、文字を外してみても伝わってくるものが多々ある。ページをめくって眺めてみただけでさまざまな情報が伝わってくる書籍である。そして重要な鍵となる切開ラインやフラップの拡がり具合などがイラスト、シェーマ、症例写真をみて一目瞭然にわかるように解説されている。縫合ではマイクロサージェリーでとくに役に立つgeometric sutureなどが明快なイラストで示され、わかりやすい。また、手術の勘所となる距離感や質感、雰囲気とかさじ加減なども文章を読んでいてそれとなく伝わってくることころが不思議である。それぞれの分野でマイクロの威力が遺憾なく発揮されているが、そのなかに著者の独自のアイデアが含まれていて面白い。例を挙げると歯肉増大術におけるtetris techniqueなどは移植片の形を工夫して垂直、水平方向双方向への拡大ができ、"なるほど"と思わせてくれるすぐれたアイデアである。著者は、「マイクロサージェリーにある高度な技術には壮麗な美しさがあり、その臨床術式は見るものを魅了するが、ディフェンスがザルであれば、このような技術は単なるパフォーマンスになりかねない」と警告するが、新時代の拡大視野での歯周外科はまさにそのようなものかもしれない。 評者:水上哲也 (福岡県・水上歯科クリニック) 佐藤琢也・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:14,000円(税別)