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2021年11月のピックアップ書籍

2021年11月のピックアップ書籍
2021年11月のピックアップ書籍

明日からの歯内療法にさらなるやりがいを感じさせてくれる別冊!
別冊ザ・クインテッセンス『日本歯内療法学会がすべての歯科医師に贈る最新トレンド─明日の臨床に役立つ知識と技術を徹底解説』

書名がすべてを表しているが、エンドの基礎から臨床まで、とにかく中身の濃い別冊である。著者は共著者も含めると総勢138名。その熱量が伝わってくるかのようである。 本別冊は、2020年6月に誌上開催となった日本歯内療法学会(JEA)第41回学術大会の抄録集を加筆・修正し、さらにエンドに関する最新トレンドを記録したものである。非常に簡潔に、かつ重要な部分をしっかり押さえてまとめられている。限られた誌面でエッセンスをまとめられた執筆陣のご苦労を察するとともに、この全体の編集に携わった監修陣の力量に感銘を受けた。 コンテンツは大きく7部で構成されている。Part1「おさえておきたい! 歯内療法のイノベーション」、Part2「知っておきたい! 根管解剖と基礎」、Part3「応用したい! さまざまな材料からみた臨床テクニック(ファイル編/洗浄編/バイオアクティブ材料編/テクニック編)」、Part4「克服したい! 難症例への対応」、Part5「おさえておきたい! エンド周辺分野の知識」、Part6「知っておきたい! 症例報告論文の書き方と専門医取得への道」、Part7「使いこなしたい! JEA賛助会員メーカーイチ押しの最新マテリアル」とじつに幅広く、「エンドのすべてが網羅されている」といっても過言ではない。 特筆すべきは、ほとんどの論文が見開き2ページもしくは4ページに凝縮されている点である。これは、忙しい読者でも読みやすいようにされた配慮・工夫と思われるが、実際にパラパラと読んでいて飽きることがない。また、JEA編らしく、親切にも論文の書き方や注意点まで紹介されている。臨床医にとってこれらの情報に触れる機会は意外に少ないといえる。 歯科の分野は日進月歩である。とくに歯内療法の分野では日々さまざまなマテリアルが研究・開発され、晴れて製品化されたものがわれわれ臨床医のもとに届けられる。本別冊では、臨床医が普段あまり目にする機会のない基礎実験的な研究内容などが掲載されているのも特徴の1つである。研究者たちのたゆまぬ努力の足跡を垣間見ることができる点も、本別冊が有する大きな価値といえる。 JEAは、「歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献する」ことを目標として掲げているが、本別冊にも同様の姿勢を感じる。現在の歯内療法の知識を身につけ、正しくそして楽しく臨床に活かしていただきたいと思う。 JEAの一会員である筆者も、本別冊を読み、「このやりがいのある歯内療法を患者に正しく提供できるように、スキルアップしていきたい!」と強く思った。まさに、歯内療法の"今"を知ることができる『日本歯内療法学会がすべての歯科医師に贈る最新トレンド』をチェアサイドに1冊置き、知識のアップデートと技術の習得に、ぜひご活用いただきたい。 評者:天川由美子 (東京都・天川デンタルオフィス外苑前) 一般社団法人 日本歯内療法学会・編 木ノ本喜史/柴 秀樹/西野博喜/前田英史・監修 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,040円(本体6,400円+税10%)・190頁

60の臨床例を提示し、あらゆる矯正歯科治療のパターンを網羅!
『矯正歯科治療の基本と類似症例が必ず見つかる!ラーニングステージ別臨床例60 GPによる包括的歯科治療のために』

本書の特長は、症例数(なんとテーマが違う60症例)の豊富さであり、実際に日常臨床で遭遇すると思われる事例がほとんど網羅されているといっても過言ではない。 さらには、Chapter4冒頭の"類似症例がすぐに見つかる!症例早見表"により、目の前の症例を解決するためにどのページを見ればよいかが示され,臨床で困った時にすぐ答えが見つかる構成になっている。 また、副題に「GPによる包括的歯科治療のために」とあるように、矯正のみならず欠損補綴や歯周病治療を必要とする症例も紹介され、評者のようなGP(一般開業医)にとって、臨床に直結する待望の書籍となっている。各症例ともに、治療のための理論的な背景や具体的な手順も詳細に書かれているので、臨床経験の浅い先生からベテランの先生まで、診療室にぜひ置いてほしい有益な一冊である。 次に、本書のもう1つの核である著者の治療哲学について触れたい。近年の歯科医療はデジタルの登場などにより、パラダイムシフトを迎えているといっても過言ではないだろう。その流れは、歯科医療そのもの、とくに検査と診断、さらには治療体系をも変えつつある。その背景をふまえると、著者が提唱する歯科矯正学を含めた包括的歯科診療の行える"総合診断医"は、社会的にも求められていることがわかる。 一例を挙げると、中・高齢期に起こる歯列欠損の連鎖や機能障害、呼吸や誤嚥などの社会問題において、成長期における口腔内の問題が関係しており、以前では矯正または歯周病専門医に振り分けていた診断、治療を、総合的に判断して計画しなければならなくなっている。 具体的には、高齢期における補綴治療計画でも、単に欠損部位を回復するのではなく、治療後のQOL向上が必須となる。そのためには、患者の幼少期の問題を考慮する必要があり、治療方針はそれにより大きく左右される。このことからも明確なように、小児期から成人期にかけての矯正治療およびその診断は包括的歯科治療に必須であり、GPといえども避けて通ることはできない。 本書内にも記載されているように、日本の場合はGPが開業医の90%以上を占めており、各専門医が連携して1人の患者の治療を行うinterdisciplinary therapyが行える土壌が十分にあるとは言い難く、必然的にunidisciplinary therapy(1名の歯科医師がすべての治療を行う"総合診断医")を目指すことも方向性としては必要である。どのような治療環境を構築するにしても、本書に書かれている知識は必ず有効になるはずである。 最後に、本書では「臨床とは術者と患者の共同作業ではあるが、"患者本位"で"患者満足度"という点を治療選択肢のなかで優先順位の高いところにおいている」との記述がある。この文章のなかに著者の日常臨床が透けて見えるようで、より親近感をもつことができた。 評者:杉元敬弘 (京都府・スギモト歯科医院) 石井彰夫・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:22,000円(本体20,000円+税10%)・448頁

IOS導入後に顕在化する問題点を事前に把握し、より活用できるようになる1冊!
『口腔内スキャナーはじめて講座』

はじめに、このすばらしい書籍の上梓にあたり、心よりお祝い申し上げたい。著者の中村昇司先生と評者は大学時代の同級生であり、卒後もさまざまな学会や講演会などでご一緒する機会を得ている30年来の友人である。著者は大学でも保存修復の講座に在籍し研鑽を積まれ、接着などに関しては基礎的な知識も豊富であり、開業以来長きにわたりIOSに取り組んできた日本でもレジェンド的存在である。 本書を拝読し、第一に感じたことは"痒いところに手が届く"書籍であるということである。これから間違いなく補綴臨床の軸となるであろうIOSの詳細な情報を余すところなく解説している点はさすがである。評者も15年ほど前に院内完結型のIOSを導入したが、すぐに使わなくなった苦い経験がある。それはまさしく、Chapter1と2に書かれている知識不足にほかならない。すなわち、IOSの使用開始後に顕在化してくる問題を知らないままに安易に購入を決めたからである。その時点でこのような書籍があれば、苦い経験をすることもなかったのではないかと苦笑しながら拝読した。 次にこの書籍のすばらしいところは、IOS導入に関するソフト面・ハード面を詳細に解説している点である。多くの書籍では支台歯形成や印象採得の方法、IOS、CAD/CAMシステムの特徴や注意点などが解説されているが、本書では設置場所のことから、アシスタントワーク、ラボとの連携などまでも詳細かつ正直に解説している。IOSやCAD/CAMを院内で効率的に活用するに、このハードとソフト両面の充実が重要であると本書からあらためて学ばせていただいた。これからIOS導入を考えている歯科医師にとって、非常に有益な情報が満載なので、ぜひ参考にされることをお勧めしたい。また、多くのすばらしい臨床例が提示され、細かな臨床のヒントが随所に解説されている点は、IOSを臨床の軸として開業され研鑽されてきた著者の努力を垣間見ることができる。また、Chapter7では、接着に関しての研究、エビデンスなど読者にとって必要で知りたかった内容が詳細に書かれている。CAD/CAMシステムにより製作された修復物の応用には、接着システムの概念を理解し臨床に活かさなければ、どんなに審美的ですばらしい修復物であっても脱離や破折につながり患者の信用を失くしかねない。このChapter7を読めば、今まで迷っていた接着に関する疑問や問題点が解決することは間違いない。 最後のChapter8は、まとめと今後の展望が書かれているが、著者のすばらしい人間性と臨床家としての熱い思いを感じることができ、評者自身もIOS再導入を考える機会となったことは言うまでもない。これからIOSを導入しようと考えている歯科医師だけでなく、すでに導入されている歯科医師、スタッフ、歯科技工士の方がたにも、ぜひご一読いただきたいイチオシの書籍である。 評者:林 美穂 (福岡県・歯科・林美穂医院) 中村昇司・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:9,900円(本体9,000円+税10%)・176頁

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