歯科医院の経営をしていて、何が経費になって何がならないのか、経費削減を行うにはどうすればいいのかといった点が気になる歯科医師や歯科医院オーナーの方は多いのではないでしょうか。
本記事では、歯科医院で経費削減に取り組む際のポイントから税務調査を受ける際の注意点などについて解説します。
歯科医院の経費とは
経費とは、事業を行うために使用する費用のことです。
歯科医院の場合、医院を経営するために必要な、以下のような費用が当てはまります。
・患者さんの治療に使用した薬や材料代
・歯科技工士に支払う歯科技工料
・歯科医院の内装やチェアユニットなどの減価償却費
・賃料やテナント料
・水道光熱費
・従業員に支払う給料
・電話代
・交際費 など
経費として扱えるものを計上することで節税できます。
一方で、プライベートでの交際費などを経費として計上すると脱税になるため、注意が必要です。
歯科医院の経費削減のポイント
続いて、歯科医院が経費削減に取り組む際のポイントとして、以下の点について解説します。
・キャッシュを無駄遣いしない
・在庫を抑える
・リース契約しすぎない
・ランニングコストを見直す
・スタッフに経費の意識を持ってもらう
キャッシュを無駄遣いしない
経営者の中には、利益が出た分、節税のために医院に必要な備品の買い替えを検討している人もいるかもしれません。
確かに、備品を購入し経費として計上することで支払う税額は減ります。
しかし、備品の購入代金が発生しているため、結果的に手元に残るお金が備品を買っていない時よりも少なくなる可能性があります。
少しの節税のために、たくさんのキャッシュをつかって資金が減っていては意味がありません。
そのため、キャッシュが必要な場面をよく考え、無駄遣いしないように注意しましょう。
在庫を抑える
歯科医院の中には、歯ブラシや手袋、マスクなどの備品管理がずさんになっているケースも少なくありません。
在庫の数が把握できていないと、ダブり注文や過剰な注文をしてしまい、結果的にコストが余計にかかってしまう恐れがあります。
また、在庫が多すぎて何ヶ月も使われず、廃棄となる可能性もあるでしょう。
適正な在庫を把握し、在庫を抱えすぎないようにすることも経費削減のポイントです。
リース契約しすぎない
費用負担を抑えるために、必要な設備等をリース契約している歯科医院もあるかもしれません。
確かに一括購入するよりも、1回の費用負担は少なくなるためお得感がありますよね。
しかし、リース契約は金利がついた状態で支払っているため、結果的には負担額が大きくなります。
そのためリース契約を結ぶ際は、本当にその設備が必要なのか、リース以外の選択肢はないのか検討し、本当に必要なものだけリースするようにしましょう。
ランニングコストを見直す
ランニングコストとは、経営するための維持費のことです。
歯科医院であれば、人件費や水道光熱費、通信費、消耗品費や事務用品費、賃料などがランニングコストにあたります。
ランニングコストの見直しを行い、少しでも減らすことができれば、経費削減につながります。
一般的に歯科医院のランニングコストの中で高い割合を占めるのが人件費です。
しかし、人材は歯科医院にとって欠かせないものであるため、人件費の過剰削減は望ましくありません。
売上の20~25%を人件費の目安とするといいでしょう。
一方で、水道光熱費、消耗品費、事務用品費などは、積極的に削減していきたいコストです。
ただし、電気代を削減するために、エアコンを使用しないなど、スタッフの労働環境や患者さんにも影響を与えるような削減の仕方はしないようにしてください。
スタッフに経費の意識を持ってもらう
経費削減は、歯科医院のオーナー1人でできるものではありません。
スタッフにも経費に対する意識を持ってもらい、一丸となって取り組みましょう。
例えば、スタッフに各設備の経費がどのくらいなのか、具体的にどのような目標数字があるのかなどを知ってもらうことで、「丁寧に扱わないといけない」「無駄遣いしてはいけない」といった意識を持ってもらえるでしょう。
また、経費削減はオーナーが率先して取り組むこともポイントです。
スタッフには経費削減をうたっているにもかかわらず、オーナーが消耗品費や交際費などで経費をどんどん使用していれば、スタッフも経費削減に取り組もうとは思わなくなります。
歯科医院の税務調査における経費の注意点
最後に、歯科医院が税務調査を受ける際に注意したい、経費に関するポイントについて解説します。
ここで取り上げるのは以下の4項目です。
・人件費
・交際費
・福利厚生費
・期末在庫の計上
人件費
人件費で注意しなければいけなのが、配偶者や親族に対する給料です。
税務調査では、配偶者や親族が業務に従事していないにもかかわらず給料をもらっていないか、業務内容に対して支払っている給料が多くないかといった点がチェックされます。
業務に従事していない配偶者や親族に支払っている給料は、経費として認められません。
また、給料が多すぎる場合も、一般的な給料分以上の部分は経費になりません。
税務調査の際には、実際に業務に従事していることを証明するために、出勤簿や給与明細など、勤務実態の証明となる書類を残しておきましょう。
交際費
交際費に関しては、「誰と」「何のために」使われたお金なのか、という点を確認されます。
歯科医院の経営に関係のない相手や目的だと、当然経費には計上できません。
税務調査に備えて、日頃から歯科医院名義の領収書には誰に対しての支出であるのか、何を目的とした支出なのか、記録しておくことをおすすめします。
福利厚生費
福利厚生費は範囲が広いため、税務調査でも確認されやすい部分だといえます。
福利厚生費が適切に使用されていることを証明するためには、就業規則を整備しておくことが重要です。
就業規則に具体的な福利厚生を明記しておけば、福利厚生費に問題ないことが証明できます。
期末在庫の計上
患者の治療に使用した材料は経費として計上されますが、在庫として残ったものは経費になりません。
在庫分に関しては「棚卸資産」として扱い、経費から除外する必要があります。
この棚卸資産を計上し忘れてしまうケースがあるため、注意が必要です。
例えば、技工所に預けている備品在庫は特に計上を忘れてしまいがちです。
計上漏れは追加納付税額につながる恐れがあるため、注意してください。
まとめ
今回は、歯科医院が経費削減に取り組む際のポイントから、税務調査を受ける際の注意点について解説しました。
経費削減に取り組む場合、何が経費になるのか把握し、そのうえでキャッシュの無駄遣いや在庫過多などを改善していくことがポイントです。
ぜひ今回の内容を参考に経費削減に取り組んでみてください。