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ボツリヌストキシン製剤による
咬合力抑制療法

2018/4/16 臨床ライブラリ

最近、反響の大きいボツリヌストキシン製剤
による噛む力のコントロールについて

ボツリヌストキシン製剤はボツリヌス菌から注出した成分により運動神経を部分的に麻痺させます。 それによって筋肉の過度の運動を制限して歯根破折や歯冠破折のリスクを下げることができます。 当院で治療が終了してメンテナンスに通われている患者さんの抜歯する理由の第1位は歯根破折です。 それに抵抗するのにボツリヌストキシン製剤の注入療法は非常に有効です。 今は咬合力の歯牙への悪影響を抑えるのにマウスピースによる保護が第一選択かもしれませんが、皆さんも実感するようにマウスピースの継続率はそれほど高くありません。 マウスピースは患者さん主導なのに対し、ボツリヌストキシン注入療法は術者主導と言ってよいでしょう。 また、補綴物の脱離を繰り返している人にも効果的です。 筋肉の過緊張によって引き起こされている顎関節症や肩こり、偏頭痛にも効果を発揮します。 顎関節症をボツリヌストキシン製剤だけで治すことはできませんが、症状の軽減は大いに期待が持てます。 ボツリヌストキシン製剤を注入しても感覚神経には影響しませんので、しびれたりすることはありません。 注入した水分による筋肉の圧迫感を感じる方はいますが、それは薬の成分によって引き起こされているわけではないので、数分から数時間で違和感は消失します。 ボツリヌス菌というと怖いイメージがありますが、昔からよく使用されている美容目的以外にも眼瞼痙攣、脳梗塞後の手足の拘縮、腋臭や花粉症の治療にも用いられてきました。 歯ぎしりや食いしばりの強い方は顎の筋肉を寝ている間に無意識のうちにトレーニングしている状態なので鍛えられて筋肉がかなり発達しています。 頬に手を当てて噛みしめてみてください。 顎を閉める代表的な筋肉である頬のところにある咬筋がぼこっと膨れるのを触診できたら顎の力が強すぎる可能性が高いです。 そうして力が過度にかかり歯や顎に障害を起こしてしまいます。 酷い場合には歯が割れて抜かなくてはならないこともあります。 嘔吐反射などでマウスピースを入れられない方やよく忘れる方はボツリヌストキシン製剤の治療によって噛む力を正常範囲にコントロールする治療の方が向いています。 当然、薬ですから他の薬と同じように下痢などの副作用は出る可能性がありますが、当院での200回以上の施術で今まで問題になるような副作用が出たことはありません。 薬の量が多すぎたり、元々の噛み合わせがよくない場合などに少し噛みにくいという副作用が出たことがあります。 しかし良くも悪くも約半年で元に戻っていくので、そのような症状が出たとしても必ず改善します。 ボツリヌストキシン製剤の注射はまず閉口筋の代表である咬筋から始めます。 ほとんどの患者さんは咬筋への注入だけで事足りるのですが、咬合力が異常に強い方や偏頭痛がある方は側頭筋への注入も行います。 ボツリヌストキシン製剤を注射で少量注入する場合、感覚的には浸潤麻酔より痛くインフルエンザの予防接種よりは痛くない程度です。 人によってはほとんど痛みを感じない場合もあります。 チェアタイムがほとんどの場合10分以内に終わり、施術も特別なテクニックがいるわけでもなく、術者に負担が少ないのもこの治療法の良い点になります。 ボツリヌストキシン製剤を注入した結果として顎の筋肉が細くなるので多くの女性にとってうれしい小顔になるという効果もあります。 ボツリヌストキシン製剤による治療の特徴は約半年で効果が消えるのですが、筋肉が廃用性萎縮をを起こすので、施術を重ねていくと少しずつ治療間隔が伸びていく実感があります。 施術をした直後から食事の時に感覚的な効果を感じる方もいます。 2週間後から外見的な変化を感じだし、2~3か月後がピークになります。 そこから徐々に効果が弱くなって戻っていきます。 まだまだ歯科領域においては新しい治療法ですが、患者さんのQOLを上げる上でも治療のオプションとして持っておかれることをお勧めいたします。 関連記事 口呼吸の改善法と鼻呼吸による体の変化 歯ぎしりが起こる原因とその対応法(主な症状と治療について) 歯ぎしり用マウスピースの効果