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臨床情報

前歯離開歯列への修復 STEP1 仮充填・修復前準備

前歯離開歯列への修復 STEP1 仮充填・修復前準備
前歯離開歯列への修復 STEP1 仮充填・修復前準備
離開歯列に対するコンプレックスを長期間にわたり持ち続けている患者は意外に多い。
DRC.HAMAMATSU の2015年調査では、約7%(72人/1000人)の患者に前歯部歯列の歯間離開が存在する事がわかった。
矯正・補綴処置によって既に歯間離開を解消した患者も含めれば、実際の発生率はさらに大きくなると考える。
臼歯部の咬合状態に異常が無い場合には、歯列弓全体に対する歯冠幅径総和の不足が、歯間部の空隙発生の原因であると考えられる。
顎骨成長と永久歯萌出が完了した段階で、離開歯列に対する治療オプションを歯科医師に求めた場合、従来は矯正治療・ポーセレンラミネートベニア修復・補綴処置の説明を受けることになる。
しかし、様々な理由からその選択肢を受け入れることができない患者も多いことが推測できる。
多くは矯正治療の時間的・経済的・心理的な負担に抵抗を感じ、またはポーセレンラミネートベニア修復や補綴処置の健全歯質喪失に抵抗を感じるのであろう。
そうした患者に対しての最も抵抗が少ない治療オプションは、一切の健全歯質喪失を伴わないコンポジットレジン修復による離開部への直接修復処置であると考える。

STEP1 仮充填・修復前準備

仮充填による口腔内イメージの患者確認
仮充填による口腔内イメージの患者確認
修復を再現した診断用ワックスアップの唇側面観
修復を再現した診断用ワックスアップの唇側面観
ガイド作成を意識したワックスアップの口蓋側面
ガイド作成を意識したワックスアップの口蓋側面

上顎前歯正中部の歯間離開による審美障害に対してコンポジットレジンによる口腔内での仮充填で術後イメージを説明。
接着材を使用せずにコンポジットレジンを充填・形態付与して光照射により仮硬化。
歯冠幅径の改善を疑似再現された歯冠形態について、患者自身が感触を確認。
咬合状態の精密な確認を目的に作業用模型上でのワックスアップを行い、口蓋側面から切縁部にかけての形態を慎重に検討。
シリコンガイド作成を意識して、ワックスアップの細部再現性を十分に高めておく必要がある。

口蓋側面・切縁形態の精密な記録を確認
口蓋側面・切縁形態の精密な記録を確認
シリコンガイド正中部への切り込み
シリコンガイド正中部への切り込み
正中部への透明マトリックス挿入
正中部への透明マトリックス挿入

シリコンガイド作成にあたり、使用する印象材にはコンポジットレジンの歯牙への圧接に耐え得る変形耐性が求められる。
印象採得の範囲は患歯の両側2~3歯とし、シリコンガイドとしての位置安定性を十分に確保する。
模型上で作成したガイドは口腔内で試適し、歯列との適合性を確認。
接触点構築を必要とする複数歯修復症例では、シリコンガイド上でのコンポジットレジン充填時にそれぞれの歯牙が独立状態を保てるよう、事前にシリコンガイドに切り込みを入れ透明マトリックスを挿入した状態で使用することも可能である。
実際の隣接面接触形態の立体的な再現には3D透明マトリックスを使用して点状・緊密な接触点回復を目指すため、両側から充填されたコンポジットレジン同士のガイド上での直接接触を回避する必要がある。

STEP2 接着操作・積層充填へ続く

著者田代浩史

田代歯科医院 院長
国立大学法人 東京医科歯科大学
非常勤講師 (齲蝕制御学)

略歴
1999年(平成11年)
東京医科歯科大学歯学部 卒業
2003年(平成15年)
東京医科歯科大学大学院 修了
2003年~
田代歯科医院(浜松市)
2007年~
国立大学法人 東京医科歯科大学 非常勤講師 (齲蝕制御学)
2013年~
DIRECT RESTORATION ACADEMY OF COMPOSITE RESIN 主宰
2015年~
福岡歯科大学 非常勤講師
著書
2015年5月
宮崎真至 編著・田代浩史 他 「 わかる!できる! コンポジットレジン修復 」医歯薬出版株式会社
2015年6月
田代浩史 著「 コンポジットレジン修復の発想転換 」医歯薬出版株式会社
2015年7月
宮崎真至 編集・田代浩史 他 「 コンポジットレジン修復のベーシック&トレンド 」デンタルダイヤモンド社
2016年3月
田代浩史・田上順次 著「 NEXT ! コンポジットレジン修復 」医学評論社

・治療コンセプト

小児から成人まで年齢に合わせた予防歯科プログラムを設定し、8人の歯科衛生士を中心に健康的な口腔内環境を維持管理するシステムを構築しています。
また、基本的な治療方針として残存歯の可及的保存を優先し、前歯部にはコンポジットレジン修復を活用したMI治療、臼歯部にはインプラント治療を活用した自立型の補綴治療を中心に治療計画を立案し、患者説明しています。
特にコンポジットレジンによる接着修復の応用範囲拡大を医院のテーマとして設定し、既成概念に囚われない発想で低侵襲の審美修復を提供できる医院体制を準備しています。
コンポジットレジン修復の積極活用により、修復自体の長期経過だけではなく歯の長期保存を重視する修復も可能となると考えます。
現代の患者の治療方針に対する志向は、健全歯質温存にこそ最大価値を意識する傾向へと変化しており、精密で高価なセラミックス補綴物の装着による高審美性の追求よりも、健全歯牙へのコンポジットレジン接着修復による低侵襲な歯冠形態修正にこそ患者共感が得られる場合も多いと考えます。
患者の健康投資への選択肢として「 コンポジットレジン直接修復 」を積極的に示す準備が必要であると考え、健全歯牙温存と審美性改善とが両立した接着修復を中心とした治療体制の確立を目指しています。

田代浩史

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