STEP3 形態修正・研磨操作・維持管理
唇側面の豊隆と陥凹のバランスを修正し、辺縁隆線や切縁部の解剖学的特徴を再現。 コンポジットレジン研磨用のダイヤモンドポイントやダイヤモンド粒子を含んだシリコンポイントを使用して形態修正・荒研磨し、この段階でコンポジットレジン充填部位の均一な表面性状を段階的に獲得。 さらに最終段階の艶出し研磨には、仕上げ研磨用シリコンポイント・艶出し研磨用ペースト・専用バフを駆使し、エナメル質表層との移行的な光沢を獲得する。 隣接面部は充填時に3D透明マトリックスの表面性状を生かした充填操作を行っており、両側からの充填部接触面はすでに滑沢で未重合層残留も最小限であると考えられる。 しかしながら、歯肉側辺縁部におけるコンポジットレジンと残存歯質との移行性の確保は極めて重要であり、隣接面研磨用プラスチックストリップの中粒研磨用から微粒・超微粒研磨用へと順次仕上げ研磨を行う。
- 隣接面接触点下の研磨操作
- 研磨操作の完了
維持管理としては、定期来院時の再研磨操作やフロス使用についての患者指導を行う。 また咬合接触状態の定期的確認により、接着界面への過剰な咬合負担を回避する必要がある。 薄層化して歯質との移行性を高めたコンポジットレジン辺縁部は、破折・剥離の可能性を十分に患者説明した上で、再研磨・補修修復による長期的な審美性維持を約束する事も可能である。 修復3年後の定期検診時・再研磨時の口腔内写真より、喫煙による着色や経時的な薄層部剥離は、シリコンポイントによる再研磨にて審美性の改善が可能である。 術直後とほぼ同様の表面性状に回復するために必要な再研磨時間は10分程度であり、臨床的な患者満足と予後管理における術者の負担軽減とを両立可能な修復方法であると考える。
- 修復後3年経過
- 再研磨終了後
前歯部離開歯列における審美的な空隙封鎖が、すべてコンポジットレジン修復によって可能であるとは考えない。 しかし、離開距離を計測して2mm以下の場合には、3Dマトリックスを応用した歯頸部から接触点までのカントゥアの修正により、審美的歯冠形態への修正が十分に可能である。 2mm以上の離開距離が存在する場合には、下部鼓形空隙が大きく残存しブラックトライアングル形成の可能性が高くなるため難易度は上昇する。 しかし日常臨床で度々遭遇する離開歯列患者にとって重要なのは、健全歯質への切削介入を排除した低侵襲な審美改善策の提案である場合が多い。 患者個々が持つ「審美的要求レベル」と「切削介入への抵抗感」との両者に配慮し、術者と患者との維持管理への共通理解を前提として成立する修復方法である。
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