はじめに
近年、う蝕治療においてその選択肢として前歯部だけでなく臼歯部においても直接法コンポジットレジン充填が注目を浴びている。 その理由としては、ボンディング材の進歩により象牙質接着の信頼性が高まったこと、コンポジットレジン自体の高強度化や操作性が向上したこと、治療周辺材料が豊富になり様々な症例に対応出来るようになってきたこと、エビデンスに基づいた充填術式が確立されて来たこと等により術者側がもつ従来からのコンポジットレジン充填に対するネガティブな要素が払拭されてきているからではないかと考える。 患者側にも金属を用いた従来型のう蝕治療に対して、審美性からだけではなく、生体侵襲の度合いや金属アレルギーという生物学的側面からも不満が起こってくる時代となって来た。 この現象はインターネット普及に伴いグローバルスタンダードとしてMIコンセプトの基に接着修復が行われることの優位性が認められて来たことに他ならないと考える。 直接法コンポジットレジン充填は、う蝕に対する治療が一度の通院で自然な歯冠色で完結し、なおかつ脱離は極めて少なく、可及的に健全残存歯質を温存出来るという患者に対して非常にメリットが多い治療方法ではある。 しかしその反面、治療中のステップにおいてテクニックセンシティブな面もあり術後の結果は術者のスキルによって大きく左右される。 本稿では自らの臨床例を用いて直接法コンポジットレジン充填の私が考え実践している勘所を特にう蝕除去、窩洞形成、接着・充填、形態修整・研磨の4つのステップに重点をおいてご紹介したい。
➀う蝕除去
徹底した感染歯質の除去が目的ではあるが、なるべく小さな侵襲をイメージする (遊離エナメルになろうと健全歯質の保存に努める) う蝕検知液の使用 (濃染する箇所は染まらなくなるまで積極的に削除する) 最初はう蝕のエリアに応じた大きさの器具を選択 (ステンレススチールのラウンドバー→スプーンエキスカベーター) 取り残しやすい象牙・エナメル境の感染歯質を除去 (インストゥルメントの大きさ・形態の選択) 回転切削器具のハンドリング (レストをしっかりととり、低速にて慎重に行い不用意な削除や摩擦熱での歯髄へのダメージを考慮する)
■う蝕除去 臼歯部のケース
■う蝕除去 前歯部のケース