現在、乳歯列の過蓋咬合が増加しているといわれるが、過去の資料が見当たらない。 かつては小児の齲蝕が多く、口腔内写真を撮影する余裕がなかったのだ。 タイムマシーンでもあれば、昔の写真を撮りに行きたいものである。 そこで2018年の秋に、モンゴルの4歳児約200名の口腔内写真を撮影し、日本人と比較することにした。 日本人は、矯正・小児ひまわり歯科へ定期的に来院している4歳児である。 モンゴル人と比較したのは、尻が青い蒙古斑があり、日本人と同じルーツを持つためだ。(注1)(図1) まず口腔内写真より、上下の乳前歯の被蓋を次の4つのタイプに分けた。(図2) タイプ0:切端咬合。 タイプ1:下の前歯が1/2以上見える。 タイプ2:下の前歯が1/2も見えない。 タイプ3:下の前歯がまったく見えない。 そして筆者と宮崎市 矯正・小児ひまわり歯科 柿崎陽介先生と2名で判定し比較した。 その結果、タイプ0は、日本では10%(5/50名)、モンゴルでは22%(11/50名)であった。(図3) タイプ1は、14%(7/50名)に対し56%(28/50名)であり、タイプ2は、それぞれ36%(18/50名)に対し、12%(6/50名)であった。(図4・5・6) さらにタイプ3は、28%(14/50名)に対し、わずか4%(2/50名)であった。 その他、不正咬合や癒合歯、乳歯の脱落のある小児は除外した。(図7) モンゴルではタイプ1が圧倒的に多く、日本ではタイプ2が多い。 前歯部の被蓋関係のみで正常とするのは早計である。 しかし仮にタイプ0・1が正常とするならば、日本では24%、モンゴルでは78%となる。(図8) 40年前の日本では、乳歯のカリエスフリーは少なかったが、筆者はモンゴルの小児を見るにつけ懐かしい気がしてならない。 とろで余談であるが、漢民族には蒙古斑がないという説がある。 (現在は、混血が増え一概にはいえない) 一方、ヨーロッパのハンガリー人の一部には蒙古斑があるという。 実際にハンガリー人時に聞いたが、このことを誇りにしている者もいた。(図9) その理由として、大モンゴル帝国はチンギスハーンの時代、この地域まで支配していた。 その末裔なので蒙古斑があるのだろう。 またハンガリー(Hungary)の“Hun”はフン族の“フン”から来ているといともされる。 地理と歴史を紐解くと新たな発見がある。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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