インプラント周囲炎で困っている歯科医師必見の書! エキスパートが初めて明かす技のバイブル! インプラント周囲炎はEr:YAG Laserでこう治す! その知識、エビデンス、基本手技から臨床例
山本敦彦・監著 両⻆俊哉/久保田健彦/浦野 智/猪子光晴/藤田 亨/富塚佳史/中西真大/小野晴彦・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,900円(本体9,000円+税10%)・108頁 評 者 船越栄次 (福岡県・船越歯科医院) 本書は、9名の歯科医師によって書き下ろされており、監著者である山本敦彦先生は、2013年、2014年のIJPRD(The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry)誌に、インプラント周囲炎に対するEr:YAGレーザー治療についての論文を執筆された。このIJPRDに掲載された論文が、評者の医院にEr:YAGレーザーを導入するきっかけとなっている。 また、山本先生は第100回、第101回米国歯周病学会(AAP)、さらに第11回、第12回PRDシンポジウム(International Symposium on Periodontics & Restorative Dentistry)で招待講演されるなど、Er:YAGレーザーの第一人者として世界でご活躍されている。 本書では、インプラント治療で使用されているEr:YAGレーザーの特徴について詳しく記載されている。たとえば、他の歯科用レーザーよりも高い水への吸収率とハイドロキシアパタイト内の水分を急激に気化させることで生じる硬組織蒸散の効果によって、インプラント体に付着している歯石を除去できる理由がわかりやすく説明されている。 さらに、Er:YAGレーザー以外にもNd:YAGレーザー、半導体レーザー、CO2レーザーについても非常に簡潔に紹介されているので、忙しい開業医の先生にとっては、レーザー全体の知識を勉強するのにも役立つ内容となっている。 その他にも、インプラント周囲炎への再生治療法として、“Water Micro Explosion法”を用いた7つのプロトコールについて説明している。このように明確かつ実践的な治療法が解説されているので、インプラント周囲炎の治療に悩んでいる先生にとっては、明日からの臨床に直結する内容になっている。 本書は歯科用レーザー以外にも、歯周外科の基本知識、インプラント周囲炎の治療を成功に導く外科術式、減張切開のイラストを交えた解説、インプラント周囲炎の発症や再発予防のための上部構造、さらにはインプラント周囲炎治療の実践的な外科的アプローチについて、多くの症例をとおして解説されている。 現在では、口腔インプラント治療は咬合機能回復治療として必須のオプションになっている。一方、その普及にともない、臨床の場ではインプラント治療の短期的および長期的な失敗がしばしば見られる。とくに生物学的合併症であるインプラント周囲炎は、インプラント治療の増加にともない急増していることが報告され、社会問題になりかねない。 Er:YAGレーザーは、2022年11月時点で、厚生労働省から「インプラント体に対する歯石除去」で認可されている唯一のレーザーである。そのため、使用法やエビデンスが図とともに、そして症例を含め解説されている本書が臨床に役立つことは間違いない。インプラント周囲炎の治療を行うための参考書として、ぜひとも一読してほしい。インビザラインを勉強したい、すべての歯科医師に推薦したいガイド本 GPのためのアライナー シミュレーションガイド これだけは覚えよう! 歯科矯正の基礎知識
荒井昌海・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 11,000円(本体10,000円+税10%)・144頁 評 者 深澤真一 (東京都・銀座矯正歯科) 荒井昌海先生に初めてお会いしたのは、10年以上前であったと記憶している。ニューヨーク大学のインプラントプログラムに参加したことから、何度か話をする機会をもった。その時、彼が言った言葉が強烈で、今も覚えている。「私は、深澤先生が行っているコルチコトミー矯正や舌側矯正には、まったく興味がありません」。 この言葉だけを抜き出せば、なんて失礼な人だと思ってしまうのだが、続きがある。彼は、歯科医院の経営を深く勉強し、歯科医院での財務、関係法規、スタッフ教育、リクルートなどをマニュアル化していた。当然、矯正歯科治療もマニュアル化し、彼の医院のすべてのスタッフが、安全・確実な治療を実践している。その彼が本書を上梓したということは、本書を読んで勉強すればマウスピース(インビザライン)矯正歯科治療で大きなトラブルは起きないだろうと想像できる。 第1章「クリンチェックの特徴」では、クリンチェックソフトの基本的な使い方、特記事項の書き方、クリンチェック作製のコツ、処方書の作製方法が自院の例を交えて解説され、インビザラインをこれから始める先生にもわかりやすく書かれている。 第2章「インビザラインのアライナーの特徴」では、アライナーの形、シートの特性、アタッチメント、プレシジョンカット、プレッシャーエリアなど、インビザラインがもつあらゆる機能とその特性が細かく書かれている。それだけでなく、口腔内スキャンの注意点や、追加アライナーの処方書の書き方までも、自院の例を交えて書かれている。 第3章「GPのための最低限の歯科矯正の知識」では、スマートフォンアプリケーションのInvisalign Photo Uploaderによるバッカルコリドーの確認法の手順までもが書かれている。 第4章「移動量と移動限界」では、マウスピースによる歯の動き方の種類、アライナー1枚の移動量、歯牙移動量の予測実現性など、治療計画を立案するうえで必要な情報が論文と経験を基にまとめられている。 第5章「症例ごとの治療計画」では、アライナーの不適応症例や、特有のトラブルとその回避法、そしてⅠ級叢生症例からⅡ級、Ⅲ級と典型的な症例の治療計画のポイントが余すところなく解説されている。 本書全体にわたりQRコードがあり、スマートフォンで読み取ると視覚的に歯の動きが確認でき、とても便利である。さらに数多くの文献は、読者の理解度を上げてくれる。 最後に序文に戻る。ここに、荒井先生が本書を上梓するうえでの葛藤や苦悩が読み取れる。「私は自分で行うべき症例と専門医に依頼すべき症例の境界線・国境を確立した」と断言した。本書を読むことにより、この言葉の意味がわかる。“GPのための”とタイトルにあるが、インビザラインを勉強したいすべての歯科医師に推薦したい、すばらしい内容のガイド本だと思っている。“保険でもここまでできる” 日常臨床ですぐ活かせる審美修復実践ガイド! 保険の審美修復を極める CR&CAD/CAM冠・インレーに対応 きれいで長持ちを実現するポイント集
須崎 明・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,680円(本体8,800円+税10%)・144頁 評 者 冨士谷盛興 (愛知学院大学歯学部保存修復学講座) 本書は、エンド、ペリオに続く「保険の〜極める」シリーズの第3弾として出版されたものである。「極める」ケースが5つほど症例とともにオムニバス方式で書かれているので(前歯CR、臼歯CR、前歯CAD/CAM冠、臼歯CAD/CAM冠、およびCAD/CAMインレー)、目的のところを目次、あるいは便利な索引を利用して探し出せばよい。 それぞれのケースは同一構成で書かれており、豊富な写真とイラストによる解説を眺めているだけでも楽しい。まず「☞そこが知りたい! 1」として、「治療ステップと時間・コストを知ろう」についての解説から始まる。必要な機器・材料の選択基準とそれらの有効活用法、および医院経営に重要な時間とコストが、写真と図解により手に取るようにわかる。 次いで「☞そこが知りたい!2」では、「きれいで長持ちさせるためのポイント」がまとめられている。最低でも5項目、多いケースでは14項目もの押さえておくべきポイントが書かれており、使用する器材の性能を、臨床において最大限引き出すための注意点、テクニック、かんどころなどが惜しげもなく紹介されている。 そして、本書の最大のウリである「落とし穴症例に学ぶ」のパートでは、日々の臨床で陥りやすい落とし穴を各ケースにつき1〜2症例ずつ提示して、その対処法を解説している。経験豊富な歯科医師ならば一度は落ちたであろう「あるある」の失敗例から学ぶコーナーである。問題点やその対策、ならびに対処後にどこが改善されたかなどを「見える化」して、再治療を成功に導くためのリカバリーテクニック、キーポイントなどを詳説している。それぞれのケースについて、押さえておくべき「きれいで長持ちさせるためのポイント」に基づいて対処しているので、各ポイントの復習となり、理解度がさらに深まり、一読しただけで知識が身につくように工夫されている。 「きれいを長持ち」─すなわち審美性の回復とその維持のためには、これら修復治療の術後管理の実践が不可欠であり、この点についても本書は最後のChapterでしっかりと解説を加えている。メインテナンスのポイントとして、セルフケアにつながる患者指導とプロフェッショナルケア、ならびに定期的なリコール実施のための最新情報と方策を紹介している。まさに細かいところまで筆者の配慮が行き届いた本である。 本書は、“保険の範囲”で、歯や口腔の健康と口もとの美や美しい笑顔を獲得し、それがひいては継続的な定期来院につながるという筆者のポリシーが濃縮された一冊である。「保険の範囲の審美」をひとつのキーワードに、長らく患者とその家族に寄り添い、そしてスタッフを含めた自院も成長していくという筆者の思いがあふれている。たしかに、必携の実践ガイドである。インプラントパーシャルデンチャー(IRPD)の必読書 最新IRPD インプラントパーシャルデンチャーの実践
大久保力廣・編著 鈴木恭典/佐藤洋平/新保秀仁/白井麻衣・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 11,000円(本体10,000円+税10%)・172頁 評 者 谷田部 優 (東京都・千駄木あおば歯科) このたび、鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座の大久保力廣教授が編著者となり、同教室の教官によってまとめられた『最新IRPD インプラントパーシャルデンチャーの実践』が上梓された。同種の書籍は、すでにいくつか発刊されているが、本書は大学発の初めてのIRPDに関する書籍で、理論とデータに基づかれた説得力のある臨床書籍である。本書は、IRPDを「やってみたい!」、「すでにやっている」、「やるつもりはない」といった欠損補綴を行うあらゆる層の臨床家に、是非とも読んでいただきたい書籍である。 これからIRPDをやってみたい!と思うきっかけは、義歯の動きをコントロールできずに義歯の離脱や破折を繰り返す患者で、ここにインプラントがあったらと思う症例に遭遇したときであろう。本書では、IRPDの「メリットとデメリット」「適応症例と不適応症例」「埋入位置や本数」「治療のフロー」が、初学者にもわかりやすく、丁寧に解説されている。とくに「治療のフロー」では、シミュレーションからオペ、IRPD設計までの一連の流れが、多くの写真で示されているため、治療の流れをイメージしやすい。 すでにIRPDを手がけている臨床家にとっては、さまざまなアタッチメントの利点や欠点のまとめや、近年技術発展のめざましい口腔内スキャナを用いた光学印象やガイドサージェリー、CAD/CAMや積層造形などデジタルの活用が参考になる。筆者が興味を持ったのは、大久保教室が得意とする部分床義歯の構造設計の概念が本書籍を通して、随所に見られることである。とくに、アタッチメント周囲での義歯の破折に悩まされた経験がある臨床家は少なくないだろう。大久保教室の構造設計は、臨床のヒントが満載である。また、継続管理中の義歯のトラブルへの対応も詳しく書かれている。 IRPDをやるつもりはないと思っている臨床家にもお勧めしたい理由がいくつかある。インプラントの信頼性が高くなっている現在、欠損補綴の第一選択は、インプラント固定性補綴であるともいわれている。ただ、超高齢社会で、今後インプラントの追加埋入ができない患者が増えてくるのはまちがいない。また、すれ違い咬合など、難症例とよばれる欠損型になりそうな患者もさらに増えてくるだろう。欠損が拡大した場合に、すでにあるインプラントをいかに利用して、義歯に取り込んでいくかを知っておくことは、臨床の幅をまちがいなく広げる! 本書は、固定性から可撤性に移行するポイントについてもわかりやすく解説している。 部分床義歯の安定と機能を大きく改善できるIRPDは、部分床義歯の患者満足度を上げるための救世主であるといっても過言ではない。本書には、さまざまなケースにIRPDを応用した症例も多数提示されている。是非、本書を活用して、患者満足度の高いIRPDを製作していただきたい。