筆者は新入局の頃、治療困難な小児が来院する前夜に、その対応法についてイメージトレーニングをしていた。 そして、実際の診療場面に望むと、不思議なことに予想したほど泣かなかった。 きっと前夜に考えた、いずれかの対処法が通用したのだろう。 ここで気がついたことがある。 大泣きしている時に、こんな言葉がけをすれば“ピタリと泣きやむ魔法の言葉”はない。 泣いてからあわてるより、まず泣くか・泣かないかギリギリのレベルにいる小児を、どうしたら泣かせずにすむか?という方法を考える方が得策だ。 もし自分が小児であれば、どのようにされたら恐くないかを考え、思いついたことをそのまま実行すれば良い。 これを考えることは、そんなに難しいことではない。 例えば、チェアーを倒した途端、ライトを点灯させる。 もし、まぶしければ驚いて泣く可能性がある。 であれば、ライトは常に腹部に向けて点灯し、その後に口腔を照らす癖をつける。 たったこれだけで、泣かない可能性がある。 もちろん、それでも泣くかもしれない。 でも、このような工夫は1つ1点だとすると、10個あつまれば10点となる。 このようなポケットをたくさん作ることが、治療やアシスタントの技術を向上させるのだ。 さらに大泣きする小児も、早く泣かなくなり上手に治療ができるようになるだろう。 “予防”というと、まず“齲蝕予防”や“歯周病予防”を思い浮かべる。 しかし“泣きの予防”も立派な予防の一つといえる。 泣きの予防は、診療を楽にするばかりではない。 小児を上手に診る評判の歯科医院となるだろう。 しかも小児との信頼関係が増すと成人しても来院するに違いない。 「今日の子どもは明日の大人」なのである。 次回から、その具体的な方法について述べることにする。 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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