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オーラルフレイルをどう伝えるか? その10:競走馬の咬合調整

オーラルフレイルをどう伝えるか? その10:競走馬の咬合調整
オーラルフレイルをどう伝えるか? その10:競走馬の咬合調整
まず、ウマの頭蓋骨にもついて触れてみる。
一般的に草食動物は、咬筋が側頭筋より発達している。
これは、下顎角の咬筋の停止部をみれば一目瞭然だ。

また下顎頭と関節窩は、平坦なことから自由な動きが可能で、側方運動に適した形態をしている。


一方肉食動物は、側頭窩が広く筋突起が大きいことから、側頭筋が発達していることがわかる。

下顎頭と関節窩は、前後的に狭く側方に長い。
そして関節窩は、下顎頭を囲むように連結し、開閉運動に適した形態となっている。
また大きな犬歯を持つことから、側方運動はほとんど不可能である。


さてウマ好きの方ならご存知だろうが、3歳馬は競走馬にとって生涯一度のチャンスだ。
3歳馬といえば、皐月賞・ダービー・菊花賞などの大レ-スが目白押しである。
レースでは、たった2・3分の間にもてるパワーを出しきる。
最高の状態で晴れ舞台に立たせるためには、ちょっとした体調の変化も見逃せない。
ちょうどこの頃、乳歯から永久歯へ歯が萌え代わり始める。
“歯がわりのために体調を崩して勝てなかった”というケースは山ほどある。
そこで調教師は、ウマの食欲が落ちると、まず口の中を診る。
痛ければ、当然エサを食べることができない。
そこで、競走馬は、定期的に歯のチェックをする。

すでに述べたが、ウマは硬い草を食べるため1年に約2~3mm咬耗する。
側方運動により、上顎臼歯部の頬側や下顎臼歯部の舌側に鋭縁ができやすい。

粘膜を傷つけると、食欲に影響する。
そこで獣医に依頼し、大きなヤスリで咬合調整する。

ちなみにウマは、栄養の吸収効率を高めるため腸管が長い。
そのため疝痛(腹痛)を起こしやすい。
なかには命にかかわるものもあるという・・。
しかし某獣医師によると、咬合調整により疝痛が30%程度減少するとのことである。
競走馬にとっても“歯が命”なのである。

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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