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オーラルフレイルをどう伝えるか? その14: ゾウのナーザル(鼻)フレイル

オーラルフレイルをどう伝えるか? その14: ゾウのナーザル(鼻)フレイル
オーラルフレイルをどう伝えるか? その14: ゾウのナーザル(鼻)フレイル
これは某動物園の、ゾウの食事風景。
上に吊ったエサを、鼻を伸ばして捕っている。(図1)

どうして、このような与え方をしているのだろう?
そこで、某動物園の担当者に尋ねた。
「ゾウは、もともと長い鼻で高い木の枝や葉を食べます。(図2)

しかしこれまで多くの動物園では、エサを地面に置いて与えていました。
すると、鼻を上に上げる機会がありません。
これが長期間続くと、ゾウは鼻を上に上げられなくなるのです。」

ゾウの鼻には骨がなく、約10万もの線維からなる巨大な筋肉の塊である。(図3)

まさに、これは鼻の筋トレを行っているのだ!
筋力が低下すれば、太い枝を持ち上げることはできない。
また鼻を器用に動かし、水が飲めないしリンゴだって持つことができないだろう。
そもそもゾウの鼻は、手の代わりなのだ。

さて、この話、はヒトにも通じる。
舌もまた筋肉の塊であり、加齢とともに筋力が低下する。
若い時にナイスバディでも、徐々に腹が出てくるのと同じである。(図4)

ここで、ヒトの舌を例に考えてみよう。
まず,舌が口蓋に当たっていると、鼻呼吸をしている。
これが舌の正しい位置だ。
次に、舌を徐々に口蓋から話すと、口が開き始める。(図5)

これは舌筋が衰えてきた状態だ。
しかも口呼吸となる。
“お口ポカン”は、口唇閉鎖力が弱いだけでなく、舌筋の問題でもあることがわかる。
いまさら述べるまでもないが、口呼吸は“百害あって一利なし”である。
まさに舌筋の低下は、“オーラルフレイル”を招く。
ゾウの世界でも、筋トレによって“ナーザル(鼻)フレイル”を予防しているのだ

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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