呼吸器感染症予防のマスクにより口呼吸が増加したとされる。 マスクの呼吸抵抗により、息苦しいことが口呼吸につながるのだろう。 また、パソコンやスマートフォンを見と前傾姿勢になり胸郭が狭くなる。 すると肋間筋の動きが制限されると同時に、腹部が圧迫され横隔膜の動きが悪くなる。 そして呼吸が浅く早くなり、換気量が減少し疲れやすくなる。 そのため、さらに姿勢が崩れ、呼吸が浅くなるという悪循環に陥る。 同じことが歯科診療でもいえる。 無理な姿勢を取り続けると、胸郭が硬くなり血流量が低下しがちだ。 このような状態が続くと、将来どのような健康上の問題が起きるのだろう? 今回から、この点について考える。 さて爬虫類は、肋間筋により胸郭を動かし呼吸をする“胸式呼吸”を作り出した。 次に哺乳類になると横隔膜を利用し“腹式呼吸”が可能となった。 こうして我々は、肋間筋と横隔膜を使って二つの方法で呼吸を行っている。 通常安静時では、胸式呼吸と腹式呼吸の混ざった“胸腹式呼吸”をしている。 横隔膜の面積は約270cm2とされ、安静時では腹式呼吸により約1.5cm下がる。 このため約400mLの空気が入ることになる。 安静時では1回当たり、500mL の空気が出入りし(1回換気量)、これは通常のペットボトル1本に相当する。 単純計算では、1回換気量の約80%が腹式呼吸によりもたらされている。 いかに腹式呼吸は、換気効率が良いかよくわかる。 さて1回換気量の中、肺胞まで到達するのは350mL (肺胞換気量)。 すなわち実際にガス交換に関わるのは70%程度である。 残りの150mLは、気管枝などに留まり、再び呼気として排出されるので呼吸には関係しない(死腔)。 もっとも死腔は、ガス交換に関与しないが、吸気を暖め、加湿し、塵埃を除去する役割もある。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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