辰(竜)のツノとゾウの牙 「今年は辰年」。 辰(龍・竜)は、十二支で唯一架空の動物である。 しかしどうして十二支に仲間入りしたのだろう? 古来中国で「竜」は、「登竜門」・「画竜点晴」・「竜頭蛇尾」など故事に由来する言葉が多い。(図1) また皇帝の生まれ代わりとされており、これらのことと関係するのだろう。 さらにヨーロッパでも多くの絵画や彫刻がある。世界中で見られることは、龍は実在していたとも考えられる。 さて、これはゾウの頭蓋と下顎骨。(図2) 頭蓋骨を左に90度回転させると、“ゾウの牙”が“龍のツノ”に見えてくる。(図3・4) 竜は、ゾウの化石という説がある。 2万年前まで日本でもナウマンゾウ等が住み、今でも瀬戸内海では歯が網にかかる。 ところで200年前の江戸時代、滋賀県南部で“謎の化石”が見つかった。 発見者は藩主に献上し、儒学者が調べたところ“竜の骨”と判定された。 中国に伝えられる五色の竜骨で神物なので祠を建て、発見者には米十俵と「竜」の姓が与えられた。(図5) (注:後にゾウの化石であることが確認された) 当時、ゾウの存在を知らなかった人々は、さぞ驚いたことだったろう。 さて余談であるが、“想像”という言葉の由来が、韓非子に書かれている。 (注:『韓非子』中国春秋戦国時代の法韓非の著書で当時の思想・社会の集大成) 「人は生きた象を見ることはほとんどない。そこで死んだ象の骨を見て、その絵図を考えだし、それによって生きている姿を想像した。だから、人々が心で想像したかたちは、すべて象というのである」 想像は、“人間が象について想いめぐらす”のが本来の意味なのだ。 参考: 松岡長一郎.近江の竜骨.サンライズ印刷出版,1997. 田畑 純. 十二歯考.医歯薬出版,2020. 金谷治訳.韓非子.岩波文庫,1994.
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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