現在、全国の歯科医療従事者が、被災地で支援活動を行っている。 高齢者の口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防のため極めて重要である。 しかし、それは、誤嚥予防に大きくつながるのではない。 オーラルフレイルによる嚥下機能の低下が、誤嚥そして肺炎につながる。 従って、その予防には口を動かすことが重要だ。 ここで読者諸氏。口笛を吹いていただきたい。 昔と比べ、音を出しにくいはずだ。 年齢と共に口唇や舌の筋力が低下してきたためである。 これもオーラルフレイルの兆候の一つといえる。 さて、福岡市の内科医 今井一彰先生が考案された“あいうべ体操”は、フレイル予防に優れた方法である。(図1) 実際、“あいうべ”を10回行うと、舌の位置が上にあがり口蓋に当たりやすい。 また、最初から口蓋に当たっている場合は、その面積が増える。 体操前のCT画像では、舌と口蓋との間に空隙があるが、体操後はなくなっている。(図2) また30回行った前後を比較すると、当初は舌が弛み咽頭にはみ出していた。 しかし、舌が上がることで、気道が広がり呼吸が楽になることが読み取れる。(図3) さらに、サーモグラフィーにより皮膚表面の温度を測定した結果。 1分間体操を行うと、1時間後においても、顔面や頸部の温度上昇が認められ、顔面表情筋や頸部筋が活性していることがわかる。(図4) さて長期間の避難生活により、体を動かす機会が減ると呼吸力が低下する。 これは誤嚥とも関係する。 食物が気管に入ると、防御作用として咳反射が出る。 実際、誤嚥がある者は、ない者に比べ呼気流量が40%少ない。(図5) 呼吸力を高めることは、誤嚥予防につながるのだ。 そのために最も手軽な方法は、“歌を歌う”ことである。 そこで、“あいうべ”を歌詞にしてカラオケを歌っていただいた。 是非お聞き願いたい。(図6) “千の風に乗って” http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/shibata1.mp4 “喜びの歌” http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/shibata2.mp4 “ズンドコ節” http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/shibata3.mp4 歌:佐伯市 柴田真佑氏 歌うことで、オーラルフレイルと呼吸力を高めることができるのだ。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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