TOP>NEWS>2024年4月のピックアップ書籍

NEWS

2024年4月のピックアップ書籍

2024年4月のピックアップ書籍
2024年4月のピックアップ書籍

最高峰のテクニックとエビデンス,理論がバランス よくちりばめられた1冊 乳頭再建 ─Papilla reconstruction─

鈴木真名/山口文誉/髙橋雅仁・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 15,400円(本体14,000円+税10%)・164頁 評 者 岩野義弘 (東京都・岩野歯科クリニック) 「乳頭再建」─金色に輝く、これまで見たことのない圧倒的なインパクトを放つタイトル。霊峰富士の山頂を目指すかのごとく、成功に至るまでの困難でかつ神秘的な道程をも想起させる、特徴的な表紙イラスト。著者は、ペリオドンタルマイクロサージェリーの第一人者である鈴木真名先生と、当分野の達人で筆者の尊敬する友人でもある山口文誉先生、そして山口先生の片腕である髙橋雅仁先生。それだけで、表紙をめくる前から本書が最高峰の臨床テクニックとエビデンス、理論がバランスよくちりばめられた、すばらしい書籍だろうと期待せずにはいられない。 さて、実際に本書を熟読すると、期待以上のすばらしさに嬉しくなる。なぜなら、一般に書籍を購入する際、いちばん欲しいのは臨床に役立つ情報であるが、本書にはその情報が満載だからである。本書には乳頭再建の具体的なテクニックとそれを応用する理論的背景が適切に掲載されており、そしてそれらがわかりやすいシェーマで示されている。そのため、読み進めるほどに、このオペを早く実践したいとワクワクした気分にさせられる。こういう書籍が本当に良い臨床本なんだとつくづく感じる。 本書は大きく4章に分かれており、前半の2章が天然歯の乳頭再建、後半の2章がその応用編としてインプラント、ならびにポンティックの乳頭再建という構成となっている。 第1章では、天然歯の乳頭再建に必要なあらゆる基礎知識がエビデンスベースで詳述されている。術式の歴史的背景を知ることは重要であると常々考えているが、さすが山口先生は抜かりなくそこにもていねいに触れるとともに、わかりやすい考察を加えていて読者に有益な情報が提供されている。本章だけで本書を購入する価値は十分あると思えるほど充実した内容である。 そして圧巻の第2章では、鈴木真名先生の考案されたIPACテクニックによる乳頭再建術が、美しい臨床写真とわかりやすいシェーマで詳しく紹介されている。オペ前に本章を読みながらイメージトレーニングすれば、誰しもが難しい乳頭再建を成功に導けるのではないかと思わせる。 第3章では、臨床上もっとも困難であるインプラントの乳頭再建について、インプラント−天然歯間と、インプラント−インプラント間に分けて、論理立てた説明と詳しい臨床例が示されている。とくに術前のリスク評価とそれに基づく厳密な治療計画の重要性が詳述されており、実際のテクニックのみでなくそのための準備の重要性を再認識させられる。 第4章ではさらにポンティックの乳頭再建にまで触れられており、あらゆる場面において術式を選択できるよう配慮された構成となっている。 本書は、臨床上もっとも困難な術式の1つである乳頭再建に特化した初めての書籍であり、臨床にかかわるすべての読者に有益な情報に溢れている。ぜひ多くの方にお手に取ってご覧いただきたく、自信をもってお勧めする。

その臨床応用のハードルを下げ,治療の精度を上げる最良のチェアサイドマニュアル 『1リテーナーオールセラミック接着ブリッジ臨床ガイド』

大谷一紀・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 13,200円(本体12,000円+税10%)・160頁 評 者 田代浩史 (静岡県・田代歯科医院) 主に前歯部の小規模欠損に対する治療方法に関しては現在、“適切な審美、機能回復”と“MI”の両立にフォーカスが当てられ、患者と歯科医師の両者が「健全歯質の切削介入を可能な限り回避したい」という考え方で一致していると感じています。 そのような欠損補綴に対する治療方針転換の流れのなかで、接着および補綴臨床の第一人者である著者によって“日本の確かな接着技術”と“間接法修復の再現性の高さ”とを最大限活用して行われたのが、“1リテーナーオールセラミック接着ブリッジ”の臨床です。 しかし現状では、この治療方法は多くの歯科医師が自信と責任をもって自費治療で実践できるオプションとして広く普及してはおらず、一定の条件を満たす症例においてMIを実践するための“チャレンジ”として捉えられていると感じます。 本書で、これまでの一般的な治療方法として紹介されているきわめて精度の高い“従来型3ユニットブリッジ”の臨床について、「健全歯質の大規模な削除に、術者として心が痛む」と、補綴臨床のエキスパートである著者が表現することには大きな意味があります。既成概念にとらわれず、また失敗を恐れずに臨床実践を繰り返した結果から得た新たな臨床コンセプト“1リテーナーオールセラミック接着ブリッジ”への著者の責任感と覚悟を感じました。 これまでの接着ブリッジの臨床経過に関する数々の論文のなかでは、一定の臨床プロトコルの紹介と術後経過のデータが提示されてきました。しかし、そこには臨床術式や時代とともに変化する使用材料、どのようなチェックポイントを確認しながら臨床実践したら良好な臨床結果が得られるのかなど、個々の症例の特性に応じた対応が紹介されることはありませんでした。 本書では、さまざまな臨床場面で規格性をもつ美しい臨床症例が集積され、著者のさまざまな臨床判断を経て術後経過がフォローされており、その貴重な知見を書籍から得られる価値は計り知れません。本書のなかで著者は、脱離しても再装着可能な接着ブリッジの臨床的な“失敗”に関する考え方を患者に事前説明し、脱離後の再装着も含めた治療方針に関する患者理解が必要なこと、そして術者の意識も同様に発想転換しておくことが重要だとも述べています。 本書は、著者が10年近くの年月をかけて蓄積した症例を通して、その症例選択の基準や詳細な臨床術式、さらにはメインテナンスとリカバリー方法までが網羅され、“1リテーナーオールセラミック接着ブリッジ”未経験の歯科医師にとって、その臨床応用のハードルを下げ、治療の精度を上げる最良のチェアサイドマニュアルとなっています。まさにわれわれ臨床医が、この新たな治療法を長期的に活用可能な自費治療オプションとして責任をもって取り組む場面において傍に置いて治療に臨むべき、最良の書であると考えます。

歯肉移植を基礎から学び、実習動画とともに確実に習得できる 必ず上達 歯肉移植 FGG(遊離歯肉移植術)&CTG(結合組織移植術)入門

小田 茂/岩田隆紀・監著 土岡弘明/竹内康雄/水谷幸嗣・編著 秋月達也/岡田宗大/齋藤夏実/芝 多佳彦/武田浩平/土谷洋輔/福場駿介/星 嵩・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,480円(本体6,800円+税10%)・80頁 評 者 長谷川嘉昭 (東京都・長谷川歯科医院) 昭和において歯肉歯槽粘膜手術(Mucogingival surgery:MGS)は、歯科医師の小遣い稼ぎと揶揄された時代があったが、今では歯周形成手術(Periodontal plastic surgery:PPS)と総称を変え、機能・審美的観点から市民権を得るに至った。ゆえに、術式に注目する前に、監著の小田氏が巻頭で今一度その背景と基本テクニックを精査することに注意喚起する本書は、他の書籍と一線を画す。 Part2のオレンジを使った移植片採取の実習トレーニングには、私も目から鱗が落ちる斬新なアイデアがいくつも見受けられた。付属のQRコードによる実習動画配信はまさに現代を象徴する手法で、これが手技を理解するうえで非常にわかりやすい。これから歯肉移植を始めるビギナーから経験者にとって、基本に戻るうえで指標となるに違いない。 Part3からは、臨床編として各症例に合わせた術式の選択とその施術例になるが、竹内・水谷氏のステップごとに詳細に記述された内容はたいへん理解しやすく、小田氏の「術式選択ポイント」の勘所は、経験を積んだ読者には嬉しいポイントである。ここで供覧される症例は、これから歯肉移植を始める先生方にとって、治療結果をイメージするうえで参考となるので熟読してほしい。 Part4では、卒後10年前後の先生方の症例が8つ紹介されている。等身大の症例に勇気づけられる読者は多くいるはずである。その中で、芝氏の口腔前庭拡張術は、切開線を含めてそのアイデアがすばらしい。ポンティック部に結合組織を滑り込ませるひらめきは、私には衝撃であった。岡田氏の歯肉弁歯冠側移動術でのsplit-full-splitのコンビネーションフラップ弁の作成は、口で言うほど簡単な切開ではない。歯周形成外科の基本であり、本来歯肉移植術を施術する前にマスターしておかなければならない。その点を十分に踏まえたうえでの氏の施術は、歯間乳頭も丁寧に取り扱っていて好感がもてる。土谷氏のModified coronally advanced flapとトンネリングテクニックは、まさに圧巻である。移植片を4分割して単純・懸垂縫合するのは、かなりテクニックセンシティブであるが見事にやり遂げ、トンネリングでは、移植片を確実にコントロールしている。星氏のOnlay-interpositional graftは、欠損部ポンティックの軟組織の増大に悩む今の私には、非常に参考になった。福場氏の歯肉弁側方移動術は、その術式選択や手技もすばらしい。通常であればほぼ裂開しうる弁を上手にコントロールし、またその結果を謙虚に受け止める姿勢に共感する。 本書は、入門書ではなく、数多くの臨床家のための必読の書である。臨床における智慧がちりばめられ、必ず役立つことをお約束する。 最後に、術式とその結果に注視されがちな歯肉移植であるが、長期的な評価から被覆歯根面の歯根吸収などの副作用に関しての追記を第二弾に期待したい。

口腔内スキャナー選びのヒントが詰まった1冊 今が導入検討の最良の時 別冊ザ・クインテッセンス クラウド化する口腔内スキャナー完全ガイド2024/2025

馬場一美・監著 岩内洋太郎/北道敏行/草間幸夫/小林祐二/下田孝義/髙井基普/髙場雅之/前畑 香・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,940円(本体5,400円+税10%)・112頁 評 者 荒井昌海 (東京都・エムズ歯科クリニック) 本書は2020年に出版された第1弾「進化する口腔内スキャナー完全ガイド2020/2021」、2022年の第2弾「DXが加速する口腔内スキャナー完全ガイド2022/2023」に続く第3弾として編集された。 第1弾は入門編の位置付けとしてまとまっており、第2弾は臨床における活用を掘り下げ、今回の第3弾は口腔内スキャナーの拡張性について展開した内容になっている。書籍の題名も、第1弾は「進化する〜」、第2弾は「DXが加速する〜」に対して、今回の第3弾は「クラウド化する〜」と銘打っていることからもその趣旨がよく伝わってくる。国内で販売される口腔内スキャナーもこの10年で洗練され、現在流通している口腔内スキャナーは数社に絞られてきた。また、そのトレンドも題名のとおり、クラウド化へと向かっている。本書はそのクラウド化するトレンドについて、それぞれの口腔内スキャナーのスペックを一覧にまとめながら示している。 巻頭の特集では、昭和大学歯学部歯科補綴学講座の馬場一美教授を中心に、「『クラウドサービス』はどこまで進んだのか?」というテーマで、DX (デジタルトランスフォーメーション)も絡めた説明と考察がわかりやすく述べられている。各社のデジタルワークフローが完結に述べられ、またAIを使った画像診断の例にも触れながら、最終的に歯科のデジタルが進むであろう方向について考察されていて大変興味深い。 その後のパートでは、日本に主に流通している7社の口腔内スキャナーに関して、それぞれのメーカーから紹介されている。また、第1弾、第2弾と同様に、各メーカーの口腔内スキャナーを用いた臨床例や、活用のためのコツについて、全国のエキスパートの歯科医師によって簡潔にわかりやすくまとめられている。それにより、より具体的に各社の特徴がつかめるようになっている。自身が使っている口腔内スキャナーはもちろん、使っていない他社の口腔内スキャナーについても、そのアップデートが確認できるのは読者にとってうれしいことである。 本書はこれから来たるAIの時代につながるために必要な、その前段階のクラウド化について、そこを生き抜くためのたくさんのヒントが詰まっている。口腔内スキャナーについてまだよくわからない人、DXやクラウド化していく流れを確認したい人におすすめの1冊となっている。 2024年は口腔内スキャナーが大躍進する年になることは間違いない。小型化され、ワイヤレスとなり、クラウドにつながっていくことは今後の方向性で間違いないであろう。すでに「プロダクトライフサイクル」においては、黎明期を抜け、成長期から成熟期に達する手前まで来たと感じる。価格も下限は見えてきた。2024〜2025年のこの2年間は、多くの歯科医師が口腔内スキャナーを検討することになるであろう。この本を、ぜひ口腔内スキャナー選びの羅針盤として活用していただきたい。

21作目となる抄録集のテーマはインプラント治療に不可欠な“骨造成” 別冊QDI これまでの骨造成、これからの骨造成

松島正和・監修 松井徳雄/中村茂人/甘利佳之/飯田吉郎/ 岡田素平太/菊地康司/村川達也・編 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,600円(本体6,000円+税10%)・148頁 評 者 牧草一人 (京都府・牧草歯科医院) OJ(Osseointegration study club of Japan)はスタディグループあるいはインプラントシステムの垣根を越えて集った学術団体である。その目的は、スタディグループ間の交流、情報交換のみならず、互いの研鑽による技術の向上、インプラント臨床に真摯に取り組む次世代の臨床医の育成、そして日本におけるインプラント治療の発展に貢献することである。本書は、OJが毎年2月に開催するミッドウィンターミーティングと夏に開催する年次ミーティングの事後抄録集として発刊されている。 ミッドウィンターミーティングは若手の先生を中心としたコンペティション形式での発表であり、その中でも高い評価を受けた先生の発表内容が「会員発表」として本書に掲載されている。また、年次大会ではミッドウィンターミーティングでの発表後に正会員となられた先生によるレベルの高いコンテストが行われ、本書ではそこで発表された先生の内容を「正会員コンテスト」として掲載している。年次大会では単に歯科医師だけのセッションを行うのではなく「コ・デンタルセッション」と題して歯科技工士や歯科衛生士、歯科助手の発表もあり、こちらも本書に事後抄録が掲載されている。 2日間にわたり開催される年次大会では著名な先生による特別講演や招待講演も行われる。特別講演では「骨造成・顎骨再生治療の変遷と今後の展望」というタイトルで東京医科歯科大学の丸川恵理子教授による講演が行われ、その講演内容の詳細が掲載されている。招待講演では「組織増大をともなうインプラント治療の進化を長期経過症例とともに振り返る」というタイトルで元南カリフォルニア大学歯学部大学院歯周病学講座教授・講座長兼ディレクターであるOded Bahat先生による講演が行われ、松下容子先生の招待講演レポートおよび松島正和OJ会長と日髙豊彦副会長を交えた特別鼎談「骨造成とエイジング」が収録されている。 OJは、1986年に米国初のオッセオインテグレーテッドインプラントに関する学術団体として設立されたOSCSCを設立母体としており、Bahat先生はそのOSCSCファウンダーのひとりでもある。前述した「会員発表」や「正会員コンテスト」で優秀な発表をされた先生はこのOSCSCにて発表の機会を与えられ、日本の将来を担う若い世代の先生が世界へ羽ばたく扉が開いていることは大変素晴らしいことである。 最後になったが、本書ではOJ年次大会で行われたシンポジウム(日髙先生、山田陽子先生、根本康子先生、石川知弘先生、堀内克啓先生などの日本を代表するオピニオンリーダーが演者)の内容も詳細に記載されており、まさに「インプラント治療の今」が凝縮された価値の高い書籍である。実際に会に参加された先生の復習に、残念ながら参加できなかった先生の学習に、ぜひ本書を活用していただきたい。

tags

関連記事