時代の寵児が紡ぐアライナー矯正治療の実践書! THE ALIGNER ORTHO アライナー矯正治療の最適解 ALIGNER RADIO BOOK
岡野修一郎/南舘崇夫/小松昌平/赤間康彦・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 19,800円(本体18,000円+税10%)・228頁 評 者 築山鉄平 (福岡県・つきやま歯科医院) 10年前のこと、「スティーブ・ジョブズが来たと思いました(笑)」という南舘崇夫先生の言葉から彼と私との関係は始まった。私が歯科大学4年生向けに行った予防歯科の講義時の、彼の感想である。話をするうち、鋭い感性の持ち主だと彼の中に非凡な何かを感じ取ったのを今でも鮮明に覚えている。私は南舘先生が歯学部を卒業し、大学院2年生のときに当院の矯正担当医として採用した。まだ矯正専門医としての力量も能力もわからない未知数な人材であり、アライナー矯正治療という新しいフィールドを扱っていることも相まって、私以外の周りは半信半疑、というかほぼ疑いの目だった。しかし彼は、結果で私の判断が間違っていなかったことを証明してくれた。 岡野修一郎先生との出会いは音声SNS・Club Houseでであった。新型コロナウイルス感染症の猛威の真っただ中に隆盛を誇ったこの音声SNSは、クリアな肉声がダイレクトに耳に入ってくるため、感覚的に「会っている」気持ちになっていた。顔も見たことのない彼の話を聞きながら、これまたとんでもない矯正専門医がいるものだと稲妻で頭を撃たれたような衝撃を受けた。そんなおり、南舘先生から「岡野先生ってご存知ですか?若手ですごいアライナー矯正専門医がいるんですけど」と話があり、ひょんなきっかけで2人を仲人的につなげたことから、本書評の依頼が来たのだと思う。 本書は、「天才」(と私が思う)岡野先生が治療を行ったアライナー矯正症例を供覧し、南舘先生が問いかける質の高い質問に対してディスカッションを行い、症例の理解を深めていく、両氏主宰のWeb配信番組ALIGNER RADIO(https://alignerradio.studio.site/)を書籍化したものである。ラジオという名が示唆するように、視聴者はゆったりと流し聞きしながら情報を収集したり、コメントで番組に参加したりすることができる。いかにシンプルに、いかに短期間で、いかに少ない来院回数で、いかに質の高いフィニッシュにつなげるかという岡野先生の治療コンセプトが、鬼才南舘先生によってつまびらかにされていく様子は、非常に知的好奇心を刺激される。かつ非常に臨床的であることが参加者にとって大変な魅力であるといえる。そのすべてが、本書には詰め込まれている。「アライナー矯正ネイティブ世代」には、既成概念に縛られず、アライナー矯正治療に関して非常に論理的かつ合理的で、今までの歯科矯正学の発想からは非連続的な発想を有する臨床家が多い。本書の4著者はまさしくその非連続性の中から生まれた歯科矯正界の時代の寵児といえよう。 ALIGNER RADIOは現在500名ほどの定期リスナーがいると聞く。そのような知の宝庫をより多くの先生がたに惜しげもなく共有し、良質な治療として患者利益につなげるさまは善なりである。多くの心ある臨床家なら、手元に1冊はもっておきたい必読書である。歯周治療の初学者から、認定・専門医を目指す先生におおいに役立つ成書 改訂版 スーパーベーシック ペリオドントロジー
木村英隆・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 14,300円(本体13,000円+税10%)・200頁 評 者 船越栄次 (福岡県・船越歯科医院) 『スーパーベーシックペリオドントロジー』の初版が2010年に出版されて今回の改訂版に至るまでの期間には、歯周病学の分野では新しい手技や画期的な機器が誕生するなど、その多大なる進歩には目を見張るものがある。しかし、歯周病学の基本となる部分は、いつの時代でも一貫して共通しており、また歯周治療は歯科治療の土台であり続けるため、歯科医師は歯周病の原因、診査、診断および治療法までをしっかりと学んでおく必要がある。 本改訂版では、初版以上に初学者にもわかりやすく、また上記の時代背景を踏まえたことにより、新しいチャプターが増やされている。たとえば、グロススケーリングのための超音波スケーラーの使い方について非常にわかりやすく記述されており、今まで便利だからという理由だけでいい加減に使っておられた先生方や歯科衛生士さん方にとっては、目から鱗といっても過言ではない内容と言える。 また、中等度あるいは重度まで進行した歯周病を治療するうえで歯周外科治療が不可欠となるが、外科処置に自信がもてず一歩踏み出せずにいる先生方もいることであろう。そんな歯周外科治療をこれから習得しようという先生方に対して、その基本であり予知性の高い歯肉剝離掻爬術や、再生療法、遊離歯肉移植術をはじめとした各種術式について、それらを成功させるための手順や器具選択などの細やかなノウハウが、実際の臨床例をとおして詳細に記されている。 さらに、歯冠長延長術についても、図解と臨床例により適応症や原則が記述されているため、審美歯科に興味がある先生方にとってもたいへん勉強になると思われる。すなわち、歯周外科治療の概念だけでなく、その臨床ステップを、木村先生の考察を含めてわかりやすく学ぶことができる。 そして、米国歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病連盟(EFP)のワークショップが2017年にシカゴにて開催され、そのコンセンサスのなかの1つが、歯周病の診断のための新分類である。その新分類とは、1つ目は、健康な歯周組織、または歯肉炎、それ以外の症例の定義である。また2つ目は、従来の侵襲性歯周炎と慢性歯周炎をまとめて歯周炎としたうえで、重症度と複雑度をステージⅠからステージⅣで表記して、進行速度をグレードAからグレードCとするという診断のフレームワークが導入されたことである。本書には、この新分類についても記載されており、とくに歯周病の新分類をきちんと理解しておく必要がある歯周病認定医や歯周病専門医を目指す先生方にとって参考となるだろう。 最後に、本改訂版は歯周治療の初学者はもちろんのこと、すでに歯周治療を自分なりに施術されている先生方、また認定医や専門医を目指す先生方におおいに役に立つ成書であることを確信している。なぜ今ソケプリか? 抜歯窩温存と再建のためのテクニックガイド本! 必ず上達シリーズ 必ず上達 ソケットプリザベーション インプラント初心者でもできる骨造成
森本太一朗・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 11,000円(本体10,000円+税10%)・152頁 評 者 岡田素平太 (東京都・オカダ歯科クリニック) はじめに、「なぜ今、ソケットプリザベーションなのか?」を、この本の中で解答を見つけることができるので、インプラント治療に携わるすべての先生方に読んでいただきたい書籍である。 本書の特徴は、著者が前書きで述べたように、抜歯窩を骨欠損の形態をもとに難易度別に分類を行い、それぞれの症例の性質に基づきテクニックと注意点を紹介している点である。今までの歯科臨床のHow to本にはなかった、料理のレシピ本のようなスタイルで、歯科材料と器具の使い分けから詳細な術式の手順、さらに注意事項などをまとめ、わかりやすく解説している。本書の副題である、「インプラント初心者でもできる骨造成」のとおり、ソケットプリザベーションを日常臨床に取り入れやすいように、外科が苦手な先生やまだインプラント治療を始めたばかりの若手の先生方にも理解しやすいよう、基本的な個々のステップを詳細に、麻酔術式から抜歯後のソケットプリザベーションの一連の流れと術後の管理までをCHAPTER5で示しているので、読めば必ずインプットして臨床にアウトプットできる一冊である。 さらに、長期的に予知性の高い結果を出すために著者は、CHAPTER6にて、残存骨形態による難易度別分類を使用し、充填する骨補填材料を異種骨と他家骨、そして封鎖材料として吸収性と非吸収性メンブレンの使い分けを、詳細に記載している。今までの書籍にはない、オープンバリアメンブレンテクニックのバリエーションを提示して、新しいソケットプリザベーションの骨造成の可能性を明確に示していることがわかる。 著者の抜歯と同時に骨造成をするソケットプリザベーションでは、「切開しない」「必要以上に大きく剥離をしない」「ボーンタックやスクリューを使わない」という3つの特徴を有している。大変興味深いのは、残存骨形態による難易度別分類にてマテリアルセレクションも決めていて、術式のタイムテーブルも決めていることである。一例を挙げると、近心骨と遠心骨欠損で残存骨が薄く非常に条件が悪い抜歯窩においては、オープンバリアメンブレンテクニックではなく、閉鎖するか遅延型のソケットプリザベーションを考慮のうえ実施し、非吸収性ではなく吸収性メンブレンを使用して、6か月ではなく1年後に確実に骨造成と硬・軟組織の治癒を待ってからインプラント埋入を実施している。さらに、ソケットプリザベーションの適応除外症例などを明確に提示して、本術式の限界を示し、また解剖学的なリスクがある症例において、注意点を考慮したうえでの術式を、本書から学び、修得することができる。 最後に、評者は著者が「なぜ今、ソケットプリザベーションなのか?」への答えの一つとして、「患者にも術者にもやさしいテクニック」であるため、と解答してあることに非常に親近感を抱くことができた。“歯科治療+医院経営“、歯科医院にかかわるすべてのデジタルを網羅! QUINTQUEST 日常臨床を効率化! 歯科医師のためのデジタル超活用Book
荻野真介/円林秀治/葉山揚介・著 田中秀樹・アドバイザー クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,930円(本体6,300円+税10%)・170頁 評 者 徳永哲彦 (福岡県・徳永歯科クリニック) 何を隠そう、私は生粋のアナログ人間である。何ならPCさえ触りたくないが、その私がこともあろうにデジタル活用の書籍を読むことになろうとは夢にも思わなかった。おそらく書籍の内容は「IOSや3Dプリンターなどを駆使すれば、アナログではできなかったこと、時間がかかったことが即座にできるようになるから、少し高価でも早く取り入れないと時代の波に乗り遅れますよ」といった類の推奨本なのだろうと考えていたのだが、予想と大きく違ったことにある意味安堵した。 本書のプロローグに、「現代社会は今やデジタル機器なくしては生活できない」とある。確かに私がどのようにデジタルから逃げ回ろうとしても、山にこもらない限り逃れられないだろう。では歯科医療のどこがデジタル化しているのかといえば、まずは歯科医院入り口前の監視カメラから。そして入り口をくぐればデジタル診察券やマイナンバーカードリーダー、電子カルテに患者説明用ソフト。治療に入る前でさえもこんなにたくさんあるが、いざ治療に入ると、当たり前のように使っているエックス線もデジタルであり、口腔内カメラもデジタル。これはもう逃げられないと再認識させられた。 さて肝心の臨床においては、従前のアナログ治療ではアルジネート印象や石膏模型、プリント写真などで技工作業を行っていたが、デジタル化することにより、“データをマッチングさせて複合的に使う”“管理が一元化される”“情報の共有が即時に行える”など、すべてが飛躍的に効率化され、歯科衛生士や歯科技工士の“腕”に頼らずに、IOSやCAD/CAMを用いて審美的な補綴装置ができあがる。 おそろしいほどの進化であるが、本書では「これらのデジタル機器を導入すれば凄いことができますよ」ということではなく、デジタル、アナログそれぞれの利点、欠点はもちろんのこと、デジタルとアナログを融合させて精度を高める方法や、3名の著者がそれぞれ異なったメーカーのデジタル機器を使用しており、それらを導入した理由、比較検討なども含めて解説しているページがあり、これから導入しようと考えている先生方にとって親切な内容となっている。 そして多岐にわたる臨床症例では、“これぞデジタル”の症例でありながら、患者との信頼関係を構築したなかでより良い治療を行うという基本が守られ、歯科医師の“腕”と“心”が重要であることを伝えるデジタルデンティストリーの手本が満載。さらに治療終了後までも、アプリを使ったリコールなど、ここでもデジタル機器を使ってメインテナンスを徹底することを推奨している。 今や歯科医院は入り口から出口まで、いや、入る前から出た後もデジタル化されているようだ。遅まきながら、アナログ人間の私も明日からデジタル化に取り組もうと決心した1冊となった。