2023年11月より厚生労働省のモデル事業に参画しつつ、厚生労働省の担当者も実際の遠隔連携診療の状況について見学にこられたこともあり、診療している歯科医師との質疑応答のなかで、遠隔地である気仙沼市の状況や遠隔連携診療の有効性をより深く理解していただきました。

また、以前より日本口腔外科学会から日本歯科医学会へ提出していた医療技術評価提案書の中に含めていた遠隔連携診療に関する項目に、前向きな反応をいただいているという報告を学会事務局より受けました。

その後、日本歯科医学会からは具体的な内容について問い合わせなどがあり、それらの質問や修正依頼に対してていねいに対応しているうちに、2024年1月に開催された中央社会保険医療協議会（中医協）総会で審議され、「通信情報機器を用いた歯科オンライン連携診療」という項目の提案について、妥当性が示されているとの評価が下されたという報告を受けました。すなわち、次期診療報酬改定には新規項目として、「歯科遠隔連携診療料」が加わるということがわかったのです。

実際にこの取り組みが評価を受け始めてからわずか2、3年という期間で保険収載にまで至ったことには、きっかけとなった当大学のてんかん科や脳神経外科の先生方、気仙沼市立病院の関係者、日本口腔外科学会の担当者、そして厚生労働省の担当者の方々のご協力があったからです。あらためて感謝の気持ちを抱くとともに、この取り組みに関して多くの方々が必要性を理解していただいたことは、今後の将来性や発展に対する期待の表れだと思い、身の引き締まる思いがしました（図1）。


図1　2024年3月に開催された「三陸口腔外科遠隔連携研究会 in 気仙沼」での講演（東北大学病院　武田裕利先生）。

今回の診療報酬改定にともない、一気にこの遠隔連携診療が普及するわけではありませんが、その診療体系を紹介しつつ、新たな連携医療機関を増やす活動を開始しました。この診療においてはじめに問題になるのが、実際にどのように行うのか？ということです。そのような質問については厚生労働省から発表されている「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」を参考にしていただくように回答しています。

私はこの指針の策定にもかかわりましたが、歯科遠隔診療はそれほど特殊な機器を用意する必要はなく、医療機関ごとに設定しているインターネット環境とセキュリティソフトの更新を行っていれば十分に導入が可能です。われわれも以前のZoomによる診療から、より遠隔診療に特化したクラウド診療支援システムCLINICS（メドレー社）に移行させ、複数の医療機関とも連携できる体制を構築しはじめています（図2）。

図2　現在の遠隔連携診療の風景。モニターを増設し、Ｘ線画像や過去の診療データを閲覧しながら診療を行っている。

今後は、宮城県内のみならず東北地域まで拡大し、この歯科遠隔連携診療を展開させ、歯科口腔外科疾患の診療で地域間差違が生じないような医療サービスを提供できるように努めたいと考えています。

本連載を終えるにあたり、日頃より遠隔連携診療に従事されている気仙沼市立病院の里見徳久先生、当科の武田裕利先生、そして各病院の担当者にあらためて感謝申し上げます（了）。