子どもの泣きは、何らかのきっかけがあったはずである。(図1) その子は,いつ泣き始めただろう? 待合室ですでに泣いていたのか? チェアーに上がってから泣いたのか? それともタービンの音がなど,いろいろな場面で泣き始める子がいる。 泣いたとしても,チェアーに上がる前から泣くのと,歯を削り始めてから泣くのとは全然意味が違う。 泣き始めが少しでも後になると,診療が楽になる。 そして泣き始めを遅らせる・・・・その延長に“泣かずに済ませる診療”がある。 さて、泣きを遅らせるには、さまざまな工夫が必要だ。 診療の各ステージにおける泣きのきっかけと、その予防法について考えればよい。 そこで各ステージでの泣く原因を6段階に分けまとめてみた。(図2) ステージⅠ:待合室で泣く原因。(図3) 待合室の緊張感などは,壁の絵や遊び道具を工夫し,診療室の雰囲気作りを心掛ける。 また保護者の不用意な言動による不安については,待合室に注意書きをしておく。 例: 家庭での注意点: *大人同士の会話:”歯の治療はいやだ”・”麻酔注射が痛かった” *子どもに対して:”甘いお菓子ばかり食べていたら,歯を削ってもらいます”・”歯を磨かないと,歯医者さんで歯を抜いてもらいますよ”・”お菓子ばかり食べていたら注射されますよ” *来院時:ウソを言って連れてこない。 例”ショッピングセンターに行くと言って”ついたら歯医者だった” (図4) *プラスの言葉を使う: 来院前:「悪い虫さんをやっつけてもらおうね」・「歯をきれいにしてもらおうね」・「白い歯にしてもらおうね」 治療終了後:「上手にできたね!びっくりししちゃった! お父さんが帰ってきたら言ってあげるね。きっとほめてくれるよ!」(図5) その他、以下のことが考えられる。 *楽な服装で来院する。(汗をかくと考えられる場合には,着替えを用意する) *入室前には,トイレに行かせておく。 また泣きの伝染は,退室前にできるだけ泣きを抑え,笑顔で帰すことが必要となる。そのためには,言葉がけや握手が欠かせない。 続く 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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