実際の遠隔連携診療に向けて口腔内カメラの運用が整い、臨床研究としての倫理委員会の承認も得られ、いよいよ実際にD to P with D(Dentist to Patient with Dentist)という形式での歯科口腔外科診療が開始されました。 まずはすでに口腔がんにおける定期経過観察を行っている患者さんに対して行うこととしました。大学に診察に来られた際に遠隔連携診療の説明を行い、次回の診察について気仙沼市立病院にて同時に診察を行うことに同意を得られた方を対象としました。 初めての遠隔連携診察時には、現地の口腔外科医の先生が患者さんを診察室に迎え入れ、そこにセットされているPCのモニターを患者さんにも見えるようにして診察が行われました。大学側では、これまで入院・手術で担当した先生や外来での経過観察をしている先生が遠隔診療に参加し、お互いにカメラ・モニターを介したやり取りは慣れないこともありやや違和感を感じつつも、患者さん、付き添いの家族、現地の主治医、大学の担当医という4者以上が診察に加わった取り組みが開始されました(図1)。 図1 遠隔連携診療の診察風景(大学側)。 最初は通常の医療面接として、現地の主治医が近況を聴取しつつ、患者さんの顔貌などを通常のカメラで撮影した映像を共有しました。大学側ではその様子をうかがいつつ、Webを介して補足説明や質問を加えるものでした。 時折、ドクター同士の会話もあり、通常の手紙でのやり取りよりも細かい情報共有ができることが良くわかりました。ある程度のやり取りをした後には口腔内カメラに映像を切り替え、口腔内の病変部や手術によって切除された周囲の口腔粘膜や歯肉映像を画面共有して口腔内診察へ移ります。口腔内カメラは詳細な映像を撮れる反面、口腔内の広範囲を同時には撮影できないので、現在映している部位がどこなのかという確認をお互いにしながら進める必要がありました(図2)。 図2 遠隔連携診療で共有される口腔内カメラの映像。 というのも、口腔がんであれば、以前の病変部から近い部位に再発することが多いので、この遠隔連携診療であっても対面と同等以上の診察を行わなければなりません。そのようにして、口腔がんの経過観察を目的に初めて歯科での遠隔連携診療が行われました。診察後には両施設で診察に加わった担当者によるブリーフィングが行われましたが、患者さん側からも違和感のない診療であったという感想が報告され、十分な手応えを感じました。
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著者山内健介
東北大学大学院歯学研究科 顎顔面口腔再建外科学分野 教授
経歴
- 2001年3月 東北大学歯学部卒業
- 2001年4月 九州歯科大学口腔外科学第二講座研究生
- 2001年11月 香川県立中央病院歯科口腔外科嘱託医
- 2003年4月 九州歯科大学口腔外科学第二講座助手
- 2011年4月 オランダ・マーストリヒト大学頭蓋顎顔面口腔外科講座留学
- 2012年9月 東北大学大学院歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野助教
- 2013年4月 東北大学大学院歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野講師
東北大学病院 歯科インプラントセンター副センター長 (兼任) - 2017年3月 東北大学大学院歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野准教授
- 2022年10月 東北大学大学院歯学研究科 顎顔面口腔再建外科学分野教授
- 現在に至る
歯学博士
日本口腔外科学会専門医・指導医
日本口腔インプラント学会専門医・指導医
日本顎顔面インプラント学会指導医
日本顎変形症学会認定医・指導医
日本がん治療認定医機構認定医(歯科口腔外科)