故ステファン・コビィーは、著書“7つの習慣”で時間管理について、興味深いことを述べている。 人間の行動を二つの視点から考えると、“緊急度”と“重要度”という“ものさし”がある。 これを組み合わせると、次の4つの領域に分けることができる。(図1) まず重要度も緊急度も高い、これが第一領域。 第二領域は、重要度は高いが緊急度は低い、第三領域は、重要度は低いが緊急度は高い。第四領域は、重要度も緊急度も低い部分だ。(図2) これを仕事や生活に当てはめると、第一領域は締め切りのある仕事。これは重要度も緊急度も高い。 第二領域は、人間関係や生涯学習。重要度は高いが緊急度は低い。 第三領域は、仕事中の電話。重要かもしれないと思い受話器をとると、資産運用の勧誘など・・、これら緊急度は高いが重要度は低い。 第四領域は、ダラダラと無為に過ごす時間である。(図3) 次に、診療に当てはめてみよう・・。 第一領域は、急患の除痛や患者の治療であり、重要度も緊急度も高い。 第二領域は、小児を泣かさないための工夫や定期健診など。重要ではあるが緊急度は低い。健康管理などもこの範疇に入る。 第三領域は、治療中の電話や、会議のための会議などがある。 第四領域は、無断キャンセルなどがあり時間をもてあました状態だ。(図4) さて、質問だ。 読者諸氏にとって、最も大切なのはどの領域だろう? 少し考えていただきたい。 多くの方は、第一領域だと言われる。 多数の患者の治療を行うことは、歯科医療従事者として充実感を感じる。 しかし本の著者は、最も大切なのは第二領域だ述べている。 例えば、痛みを訴える小児が急患で来たとする。 痛みがあるから、嫌がっても処置しなければならない。 これは緊急度も重要度も高いので第一領域の治療である。 ところが診療中に泣いて暴れしたとする。 そのまま帰宅させると、次はもっと泣き処置がたいへんになる。 これが続くと、いつの間にか来院しなくなる。 短期間で考えると、かえって楽になったと考えがちだ。 しかし、その小児が大人になった時に、来てくれるだろうか? 嫌な思いをした歯科医院に、また行きたいと思うだろうか? ひょっとしたら、未来の患者さんを失うことにもなりかねない。 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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