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2024年10月のピックアップ書籍

2024年10月のピックアップ書籍
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不定愁訴で終わらせないために! 舌痛症、味覚異常などの対応ガイド チェアサイド・介護で役立つ 口腔難治性疾患アトラス 舌痛症・口腔乾燥症・味覚異常・口臭症の診断と対処

中川洋一・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 13,200円(本体12,000円+税10%)・224頁 評 者 片倉 朗 (東京歯科大学口腔病態外科学講座) 中川洋一先生は、鶴見大学歯学部で口腔粘膜疾患、なかでも口腔乾燥症や舌痛症など難治性の疾患の病態解明や治療をライフワークにされてきたかたである。もちろん、その成果を臨床で実践して、数え切れないほどの患者の治療にあたられてきた。2006年には、豊富な臨床経験の集大成として『チェアサイド・介護で役立つ 口腔粘膜疾患アトラス 〜どこで見わけて、どう対応?〜』をクインテッセンス出版から上梓された。日常で診ることの多い口腔粘膜疾患の病態写真と基本的対応などが簡潔に解説されていることから好評を博し、2018年には『新版』として更新・拡充されたものが刊行されている。 そして、今年8月に上梓されたのが本書、『チェアサイド・介護で役立つ 口腔難治性疾患アトラス 舌痛症・口腔乾燥症・味覚異常・口臭症の診断と対処』である。 書籍のサブタイトルにもあるように、中川先生が40年以上にわたりとくに専門とされてきた舌痛症・口腔乾燥症・味覚異常・口臭症に焦点を絞った内容である。日常臨床でともすれば敬遠されがちなこの4疾患を取り上げ、治療のポイント・診察の手順と観察項目・病態と病因について、カラフルで見やすい多くの図表を交えて解説しているため、忙しい開業医の先生がたにも読みやすく、理解しやすいと思われる。 たとえば、SECTION2の「口腔乾燥症」では、病態の説明からはじまり、診察の手順と診察項目、想定され得る原因を解説し、それから原因別の対処法をまとめている。いずれの疾患でも、最初に「KEY POINT」として「夜中に乾きで目が覚めるときは、口蓋部分を覆う形のマウスピース(保湿装置)を用いる」など端的な方針を示してから解説があるので、記憶に残りやすい。一方で、「NOTE」として治療のエビデンスとなる基礎的内容が記載されており、疾患について見識を深めたいかたが精読するのにも適している。 また、SECTION1の「バーニングマウスシンドローム(BMS)と舌痛症」では、症状が起こる仕組みや、薬剤が奏効する仕組みを理解しやすいよう、脳内の神経の動きを示した図が多数掲載されている。術者・患者ともに疾患をイメージする助けとなるだろう。 くわえて特筆すべきは、いずれの疾患の対処法にも、心理的なアプローチが含められている点だ。患者の心理に寄り添った対応をする際に、ヒントとなる情報が随所に散りばめられている。 私は日本歯科薬物療法学会、日本口腔内科学会などで中川先生と活動を長くともにし、先生の研究や臨床実績を今日の自身の診療にも反映させていただいている。本書は、そんな中川先生の長年の研究と臨床の集大成を、一般歯科臨床において実践できるようまとめられている。舌痛症・口腔乾燥症・味覚異常・口臭症──それらの診療に苦手意識をもっているかたは、本書が取り組むきっかけになると思う。

令和のインプラント補綴教本の決定版 今さら聞けない・でも知りたい 基本から学び直すインプラント補綴 ─設計・製作・装着・経過観察がまるわかり─

和田誠大・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 11,000円(本体10,000円+税10%)・172頁 評 者 丸尾勝一郎 (東京都・恵比寿マルオ歯科) インプラント治療というと、骨造成や軟組織造成などの外科処置が注目されがちであるが、この治療法は欠損補綴治療の選択肢の一つに過ぎない。インプラント埋入後の補綴修復治療では、緻密で繊細な計画と処置が求められ、これがインプラントの長期予後を左右するといっても過言ではない。その重要性に鑑み、和田誠大先生(大阪大学准教授)が執筆した本書は、補綴治療に関する幅広い知識を網羅しており、「令和のインプラント補綴教本の決定版」と称して差し支えないだろう。 本書は、初学者がつまずきやすいアバットメントと上部構造の基本から解説が始まり、豊富な図表と症例写真を用いて、非常にわかりやすく説明されている(Lesson1:アバットメントと上部構造)。スクリュー固定とセメント固定のそれぞれのメリットとデメリットについても、著者の豊富な臨床経験をもとに、詳細な解説が加えられている(Lesson2:スクリュー固定式上部構造、3:セメント固定式上部構造)。このような基礎知識の提供に加えて、インプラントオーバーデンチャーやインプラントポジションの選定に関する章では、著者が専門とする深い知識が展開されており、初学者にとって理解しやすい内容となっている(Lesson4:可撤性上部構造[IOD・IARPD])。 さらに、インプラント上部構造の印象採得に関する章では、従来のシリコーン印象だけではなく、デジタル印象についても触れられている(Lesson5:インプラント上部構造製作のための印象採得)。ここでは、日本で普及しつつある口腔内スキャナーを用いた最新の技術についての有用な情報が提供されており、デジタル技術を活用している歯科医師にとってはとくに参考になるだろう。 続くLesson6〜9(6:プロビジョナルレストレーションの製作、7:プロビジョナルレストレーションの装着と経過観察、8:最終上部構造の製作、9:最終上部構造の装着とその評価、経過観察)では、治療のプロセスにおいて重要なプロビジョナルレストレーションや最終上部構造の製作と経過観察に関して、詳細に説明がなされている。これらの章では、とくに若手歯科医師が直面しがちな疑問や不安に対して、明確な指針が提供されている。さらに、最新の材料や技術の進化に対応するための情報も豊富に取り上げられており、熟練者にとっても「学び直し」の良い機会となるだろう。 また、治療終了後の合併症に関する章では、多様な視点からの事象と解決策が提示されており、予期せぬトラブルに対処するための実用的なガイドとして機能する(Lesson10:経過観察時に最終上部構造に生じる問題事象とその対応)。  本書は、インプラント治療を行う者にとって必携の書として非常に有用であり、初学者から熟練者まで幅広い読者に対応する内容となっている。インプラント治療の理論と実践の懸け橋となる一冊である。

臨床に直結したCAD/CAM冠、ジルコニアの接着の書籍  CAD/CAM冠、ジルコニアがとれないための処方箋

二階堂 徹・編著 猪越正直/高橋礼奈/峯 篤史/加藤正治/本田順一/窪地 慶/小峰 太・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・88頁 評 者 貞光謙一郎 (奈良県・貞光歯科医院) 私たち臨床家は日々診療のなかで修復物の接着を行っている。また、その接着が修復物の予知性や永続性を決定することも理解している。そのため、接着材料の選択にあたっては、修復物と支台歯の要件を把握し、科学的根拠を明確にして臨床応用しなければならないと考えている。本書は、日常臨床で多く使用するコンポジットレジンブロックおよび現在、主に使用されているジルコニアの接着に対応する書籍で、世界の接着歯学をリードする、学術を極めた先生方が執筆されている。 巻頭の代表的なレジンセメントの一覧では、特徴や歯質・コーティング面や修復物への処理が簡単に比較できる。続くCHAPTER1〜4の基礎編は、臨床家の日頃の悩みが払拭される内容である。 CHAPTER1では、修復物の内面の処理、サンドブラスト処理についてである。臨床での処理圧について述べられ、修復物に対する前処理の手法がわかりすく記載されている。 CHAPTER2では、露出した象牙質面におけるコーティングの手法や効果、材料について述べられている。象牙質-歯髄複合体という考えのもと、形成の際に露出した象牙質面の処理に注意を払うが、象牙質面の処理のポイントについてわかりやすく記載されていることがうれしい。 CHAPTER3では、レジンセメントの選択基準が文献ベースで述べられている。臨床ではレジンセメントは硬化後の除去が難しいことから、当院では少しでも操作時間が長いレジンセメントを使用したいと考え、数種のセメントの硬化までの時間を算出した。その結果、作業時間が格段に長かったパナビアV5を採用している。臨床的な視点から、プライマー併用型でデュアルキュア型のレジンセメントのパナビアV5を選択していたが、本書の内容から学術的な視点による選択を加味することで、より一層の自信をもって接着に臨めると感じた。 CHAPTER4では、臨床的接着阻害因子とその対策が記載され、仮着材による汚染が深刻と述べられている。プロビジョナル除去後に顕微鏡を用いて歯面観察するが、臨床では唾液・呼気中の湿気などの阻害因子が多く、残存仮着材の除去の問題については悩ましいところだ。接着前の仮着材の除去にはより一層の注意を払わなければならないと感じた。 また、二ケイ酸リチウムガラスの接着、MMA系レジンセメントの使用上の注意点や、近年発売されたPEEK冠の接着について記載されている。 CHAPTER5〜7は臨床編として、臨床ステップでの手順がわかりやすく記載されている。 「接着」は、私たちが日々の臨床のなかで行う行為でありながら、科学的な根拠を理解しないまま臨床応用されているのではないだろうか。接着材の選択や接着技術など臨床での接着のさまざまな課題の克服に近づく本書を、多くの歯科医師に読んでいただきたいと願う。

アップトゥデートな情報満載! 歯科・口腔外科 関係者必携の最新版完成 別冊ザ・クインテッセンス 口腔外科YEARBOOK  一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’24

日本口腔外科学会・編 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,260円(本体6,600円+税10%)・216頁 評 者 片倉 朗 (東京歯科大学口腔病態外科学講座) 今年も『口腔外科ハンドマニュアル』が刊行された。口腔外科を専門とする私も毎年この本の刊行を楽しみにしていて、通年で揃えている。 本書の編集は主にその時期の(公社)日本口腔外科学会を牽引する常任理事と監事の先生方が担当されているので、日本のみならず国際的な口腔外科の潮流を見据えたテーマで内容が構成され、さらに執筆はその分野をリードする先生方によって行われている。そのため、その年に知っておくべき最新の情報が1冊に凝縮されているといってもよい。 注目は毎年多くのページが割り当てられている「口腔外科ビジュアルセミナー」であるが、今回も一部にスマホ動画が付いて内容が充実している。「Section1:ベーシックテクニック」では、口腔外科ビギナーや開業の先生方向けに、インプラント埋入を前提とした低侵襲抜歯、埋伏過剰歯など矯正歯科との連携が必要な症例、医療面接の基本、臨床研究のための統計解析法が解説されている。「Section2:アドバンステクニック」では、口腔外科認定医・専門医向けに口腔がんの再発を減らす手術法の工夫、顎変形症に関連する顎関節外科について、手術経験豊富な先生方が解説している。「Section3:口腔と全身の管理」では、抗血栓薬服用患者の術前・術後管理と薬剤の最新情報が詳細かつ見やすい表にまとめられている。また、日常臨床で苦慮することが多い非歯原性歯痛の診断から対応・治療まで、わかりやすく解説されている。 「特集」では、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)への、2023年版のポジションペーパーに基づく対応が、さまざまな視点でまとめられている。 「最新レビュー」では、口腔がんの光免疫療法、骨補填材のリン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体、立体視ディスプレイによる手術トレーニングなど、まさに市場に出回ったばかりの口腔外科に新風を吹き込む薬剤・材料・機材であり、大変興味深く読むことができる。その他、セファログラムのデジタル化による画像診断の最新技術、歯性感染症の波及経路となる頬下顎隙の新たな観点からの臨床解剖、整形外科医からの骨粗鬆症治療についての解説なども網羅され、読んでいて引き込まれる内容満載に仕上げられている。 なかでも、口腔外科学会第12代理事長を務められた古郷幹彦先生が口腔外科の歴史と将来について書かれた巻頭言を読み、大学で口腔外科学の教育を担当している者として感銘を受けた。5ページ中に、これまでの日本における歯科医師による口腔外科の変遷を顧みて、今後のあり方が力強くまとめられている。とくに口腔外科を専門にしていこうとする若い先生方には、ぜひ読んでほしい。 どのページを開いても執筆された内容とともにクインテッセンス出版が得意とするわかりやすい図表ときれいな写真が現れて、自然と内容が入ってくる。一般歯科臨床に携わる先生にも口腔外科を専門にする先生にも、絶対に役に立つ1冊である。

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