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地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第4回:歯科衛生士としての思い

地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第4回:歯科衛生士としての思い
地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第4回:歯科衛生士としての思い
私は喜多デンタルクリニックで歯科衛生士として勤務している谷 今日子と申します。今回は歯科衛生士の立場から地域における口腔管理の重要性について述べたいと思います。

私が歯科衛生士専門学校に通っていた時、祖父が急性白血病を患い、在宅医療を受けることになりました。私はまだ学生でしたが、せめて自分にできることをと思い、祖父の口腔ケアを行わせてもらいました。祖父と2人暮らしの祖母の看護だけでは、どうしても口腔ケアまでは行き届かず、しばらくすると食渣や乾燥した喀痰などが付着してしまうため、できるだけ祖父母の家を訪問するようにしました。口腔ケア中の祖父の穏やかな表情などを今でも覚えています。私のケアで祖父のQOL(生活の質)がどれだけ向上したかは正直わかりませんが、祖母は今でもその時のことを感謝してくれており、その経験は現在歯科衛生士となった私にとって大きな励みとなっています。

私が在宅口腔ケアを行う際、利用者さんの口腔内の状態だけでなく体調や生活状況にも目を向けるように心がけています。利用者さんは、日々の生活の中で感じた体調の変化や困りごとを、口腔ケア中に自然に話してくださることが多いです。そのため、単にケアを提供するだけでなく、利用者さんの全身状態や生活環境の変化を観察し、他の医療・介護職種へ情報を共有する橋渡しの役割も果たすことができます。この連携が、利用者さんの生活全体の質を向上させる一助となると考えています(図1)。


図1 ケア時には口腔内の状態だけでなく体調や生活状況にも目を向けるように心がけている。

超高齢社会を迎え、地域社会全体で口腔ケア・口腔管理の重要性を理解し、実践することが求められています。たとえば、定期的な歯科受診が困難な方には、訪問歯科や在宅での支援が不可欠です。さらに、家族や介護者も口腔ケアの知識をもつことが大切と考えられます。私の祖父の介護時には、私だけでなく家族全体で介護に取り組みました。その結果、家族全体で健康を守る意識が高まり、祖父のQOLを支えることができたと感じています。

在宅での口腔ケアや口腔管理の重要性は、今後ますます増していくと考えられます。歯科衛生士として、地域社会においてこの役割を果たすことの大切さを感じつつ、これからも精進していきたいと思います。


著者
喜多 大作
喜多デンタルクリニック院長

略歴
2002年 徳島大学歯学部卒業
2002年~2005年 医療法人鳳友会 中村歯科勤務
2005年~2012年 医療法人宝樹会 福西歯科クリニック分院
デンタルクリニックデコールに副院長として勤務
2009年~2012年 スタディグループ5-Djapan講師
2012年~2014年 医療法人一縁会 よこいデンタルクリニック勤務
2014年 喜多デンタルクリニック開業(徳島県)


著者高野 栄之

喜多デンタルクリニック、徳島赤十字ひのみね医療療育センター歯科

略歴
  • 2002年 徳島大学歯学部卒業
  • 同年 徳島大学歯学部第一口腔外科入局
  • 2010年 口腔内科学分野
  • 2015年 口腔科学教育部博士課程修了
  • 2016年 徳島大学病院口腔管理センター副センター長
  • 2024年 喜多デンタルクリニック、徳島赤十字ひのみね医療療育センター歯科
高野 栄之

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