チェアーに“上がる前から泣いている子”と“上がってから泣き出す子”の診療は、どちらが楽だろう? 当然ながら、上がってからの方が楽だ。 子どもの泣きには、何らかのきっかけがあったはずだ。 それを遅らせることが、楽な診療につながる。 さて、保護者に抱きつく子どもをチェアーに上がらせるためには、自ら上がるような仕掛けを考える。 まず保護者が歯ブラシを持ち術者の椅子に座る。 そして、「今日は、お母さんに歯を磨いてもらおう!」と伝える。(図1) https://d.dental-plaza.com/archives/21528 たったこれだけで、こどもはチェアーにあがり口を開けてくれる。 このように“いつの間にか○○している”という状態に誘導することが大切だ。 ところで今、読者はこどもであったとする。 チェアーに上がる直前、「どちらで磨いてもらおうか」と言いながら、色の違う歯ブラシを差し出されたらどうするのだろう?(図2) 無意識に気に入った歯ブラシを選ぶだろう。 こうすることで、ますます“歯を磨いてもらうモード”になっている。 さて、これは不安そうに待っている子どもにも応用できる。 待合室で「中に入ったら、こうして歯を磨いてもらおうね」と言いながら、 あらかじめ撮った写真を見せられたらどうだろう。(図3) きっと不安が和らぐに違いない。 https://d.dental-plaza.com/archives/21402 発達障害の子ども達は、言葉で伝えても理解できないことが多い。 そこで、この例の様に絵カードや写真を見せ、これから何を行うかを伝え、見通しを持たせるのである。 これは、障害の有無に関わらず、不安を持つ子ども達にもたいへん有効だ。 見通しを持たせる方法は、診療の様々な場面で応用できる。 あらかじめホームページに組み込んでいる歯科医院もある。(図4・5) これを見せることで、子どもが安心して受診することができるのだ。 参考:https://mama-no-shikashitsu.com/koishishika/kodomo-e-card/ (大阪府池田市こいし歯科)
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!
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