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コラム

地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第3回:当院の訪問歯科診療への取り組み

地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第3回:当院の訪問歯科診療への取り組み
地域とともに歩む高齢者・障がい者への歯科治療 第3回:当院の訪問歯科診療への取り組み
喜多デンタルクリニック(以下、当院)が訪問歯科診療を行うようになって2年の月日が経ちました。

当院は開業して10年になりますが、開業当初は訪問歯科診療を行うことは考えていませんでした。私が目指していた歯科医療は患者さんに高品質の治療を提供することと、長きにわたって口腔内の健康を獲得、そして維持するための良質な予防を提供することでした。

10年の月日を過ごすなか、当院で治療をされた患者さんが高齢化により通院が困難になるというケースが増えてきたことで、訪問歯科診療について考えることになりました。当院の高野栄之先生が第1回でふれていたように、昨今の日本の事情を鑑みると高齢者が多く、その中でも通院が困難になる患者さんは増えていくことが予想されます。また、人生の最期まで自立できる方はおよそ10%ともいわれていますし、残りの90%の方は何らかの要介護の状態になると考えられます。

そのような事情を考えると、地域の歯科医療を支える私たち歯科医療従事者ができることをあらためて考えなければなりません。私たちは個々の患者さんのライフステージに応じた歯科医療を実践する必要があり、一般的な外来診療では口腔内に生じた問題を解決し、口腔機能の獲得を目指します。それにより食や会話を楽しむといった生活の質を保つことができ、生きる喜びを享受できます。

一方で年齢とともに口腔機能が低下し、やがてはその機能を失うことが考えられます。そのようなステージにおいて患者さんに寄り添い、人生に寄り添うことが現代の歯科医療従事者に求められています。人生の最期までできるだけ口腔機能の維持を求め、ご飯を美味しく食べられるように私たちができることに取り組む必要があります。そういった経緯もあり当院では、訪問歯科診療に力を入れるようになりました。

現在の取り組みとして、介護施設などで歯科検診を積極的に行うようにしています(図1)。利用者様の中にはかかりつけの歯科医院がない方も実際にはたくさんおられます。そのような方に早くから携わることでオーラルフレイルからの低下や回復を目指すことも可能だと考えています。また、咀嚼機能の回復や痛みを取るといった治療だけでなく、歯科衛生士による定期的な口腔衛生管理を行うことで、誤嚥性肺炎の予防だけでなくさまざまな全身疾患への影響を抑えることも大切だと考えています。現在、居宅に住まわれている方や施設に入居されている方など、さまざまな環境で過ごされている患者さんの訪問歯科診療をさせていただいています。口腔内の問題にかかわるだけではなく、個々の方と寄り添い信頼関係を築くことで、私たちが訪れること自体を喜んでいただけるように心がけていきたいと思います。


図1 当院の歯科衛生士による利用者様への口腔ケア。

当院はまだまだ訪問歯科診療に携わって短い時間ではありますが、その重要性はたいへん大きいと思います。今後もお困りの方に対応できるよう、知識や技術の研鑽を積み貢献していきたいと考えています。


著者
喜多大作
喜多デンタルクリニック院長

略歴
2002年 徳島大学歯学部卒業
2002年~2005年 医療法人鳳友会 中村歯科勤務
2005年~2012年 医療法人宝樹会 福西歯科クリニック分院
デンタルクリニックデコールに副院長として勤務
2009年~2012年 スタディグループ5-Djapan講師
2012年~2014年 医療法人一縁会 よこいデンタルクリニック勤務
2014年 喜多デンタルクリニック開業(徳島県)


著者高野 栄之

喜多デンタルクリニック、徳島赤十字ひのみね医療療育センター歯科

略歴
  • 2002年 徳島大学歯学部卒業
  • 同年 徳島大学歯学部第一口腔外科入局
  • 2010年 口腔内科学分野
  • 2015年 口腔科学教育部博士課程修了
  • 2016年 徳島大学病院口腔管理センター副センター長
  • 2024年 喜多デンタルクリニック、徳島赤十字ひのみね医療療育センター歯科
高野 栄之

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