TOP>コラム>しくじり先生の小児歯科 その9 いつの間にかの誘導術1

コラム

しくじり先生の小児歯科 その9 いつの間にかの誘導術1

しくじり先生の小児歯科 その9 いつの間にかの誘導術1
しくじり先生の小児歯科 その9 いつの間にかの誘導術1
診療室に,今にも泣きだしそうな3歳の子どもが入ってきた。
しかも保護者に抱きついている。
チェアーに上がるように指示をしても離れない。
これはよく見かける光景だ。(図1)


子どもの手を引っ張ると,ますます抱きつく。
背中から力ずくで引き離そうとしたら,ますます強く抱きつかれる。
これ以上、無理をすれば本格的に泣き出してしまう。
しかたなく、保護者と一緒にチェアーに上がったが、口の中が良く見えず診療にならない。
おそらく同じことで困っている読者は多いはずだ。

さて、泣かさないでチェアーに上げるため、どのようにすればよいだろう?
少し考えていただきたい。

筆者も長年、この問題について考えてきた。
そこで気がついたことは、力で上げるのではなく、子ども自ら上がるように誘導することであった。
この方法に気がつくまで、ジャスト3歳の子どもは90%まで泣かれていた。
しかし、“あること”を行うと、泣く子は20%以下になった。

それは実に簡単なことであった。
まず チェアーを倒し、保護者が歯ブラシを持ち術者の椅子に座る。
そして、「今日は,お母さんに歯を磨いてもらおう!」と伝え誘導する。(図2)

そして保護者に磨いてもらう。(図3)

その後、術者やDHが「きれいになっているか見せて」と言いながら交代する。(図4)

たったこれだけで、こども自らチェアー上で口を開けてくれる。
このように“いつのまにか ○○している”という状態になるように、先回りをすることが“泣きの予防”なのである。
是非、お試しいただきたい。

前の歯科医院では、チェアーにも上がらなかった子どもが、ここでは簡単にあがって大きな口を開いている。
たったこれだけで、保護者には上手な歯科医院と思ってもらえるのだ。

続く

参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. 
https://www.shien.co.jp/i/BK05583

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事