診療室に,今にも泣きだしそうな3歳の子どもが入ってきた。 しかも保護者に抱きついている。 チェアーに上がるように指示をしても離れない。 これはよく見かける光景だ。(図1) 子どもの手を引っ張ると,ますます抱きつく。 背中から力ずくで引き離そうとしたら,ますます強く抱きつかれる。 これ以上、無理をすれば本格的に泣き出してしまう。 しかたなく、保護者と一緒にチェアーに上がったが、口の中が良く見えず診療にならない。 おそらく同じことで困っている読者は多いはずだ。 さて、泣かさないでチェアーに上げるため、どのようにすればよいだろう? 少し考えていただきたい。 筆者も長年、この問題について考えてきた。 そこで気がついたことは、力で上げるのではなく、子ども自ら上がるように誘導することであった。 この方法に気がつくまで、ジャスト3歳の子どもは90%まで泣かれていた。 しかし、“あること”を行うと、泣く子は20%以下になった。 それは実に簡単なことであった。 まず チェアーを倒し、保護者が歯ブラシを持ち術者の椅子に座る。 そして、「今日は,お母さんに歯を磨いてもらおう!」と伝え誘導する。(図2) そして保護者に磨いてもらう。(図3) その後、術者やDHが「きれいになっているか見せて」と言いながら交代する。(図4) たったこれだけで、こども自らチェアー上で口を開けてくれる。 このように“いつのまにか ○○している”という状態になるように、先回りをすることが“泣きの予防”なのである。 是非、お試しいただきたい。 前の歯科医院では、チェアーにも上がらなかった子どもが、ここでは簡単にあがって大きな口を開いている。 たったこれだけで、保護者には上手な歯科医院と思ってもらえるのだ。 続く 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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