前回、こどもが歯ブラシに合わせ呼吸調整をし、処置を受けやすい状態に誘導する方法について紹介した。 ところで術者が、歯を磨くことに気を取られ、いつまでも歯ブラシを抜かないとどうなるだろう? 子どもは、唾液がたまって苦しくなるはずだ。 実際、保護者から「歯を磨いているのに、子どもが嫌がりじっとしてくれない」という訴えがある。 これは、こどもの呼吸を考えず磨き続けている可能性がある。 従って、上手に呼吸調整できるまで、歯ブラシを早めに抜くのがコツである。 例えば、最初は少し早めに3数えるが、徐々にゆっくり数える。 また、次第に数える数を増やす。 こうすることで、より長い呼吸調整ができるだろう。 この段階で子どもに余裕があれば、次はバキュームだ。 急にバキュームの音がすると驚いて泣き始める。 それに対して、あらかじめバキュームでコップの水を吸う場面を見せる方法がある。 しかし恐がりの子は、それも嫌がる。 そこで、子どもが歯磨きのリズムに慣れてきたら、術者は故意にゆっくり歯磨きを行い唾液をためる。 こうして唾液を嚥下でない状態を作り出す。 少し苦しい状況を作り、歯を磨きながら「ツバを取ろう!」と言い、バキュームで吸引する。 その瞬間、「ああ~楽になった!」と言いながら磨き続ける。 こうしてバキュームは、唾液を吸引し楽にしてくれる味方だと思わせる。 また、しばらくバキュームを口の中に入れたまま磨き続ける。 これによりバキュームの音に対する閾値をあげるように誘導しておく。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!
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