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2025年3月のピックアップ書籍

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2025年3月のピックアップ書籍

エンドに関わるすべてのGPに読んでもらいたい1冊 すんなり治ればエンドも楽しい! ハマる前に知っておくべき “歯内療法の落とし穴12”

和達礼子・著、作画 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,800円(本体8,000円+税10%)・120頁 評 者 斎田寛之 (埼玉県・斉田歯科医院) 日々の臨床で、根管治療を行わない日はない。「根管治療は歯科医師の良心」とも言われるように、悩みながら、試行錯誤しながら、目の前の根管と向き合っている。しかし、うまくいく日もあれば、そうでない日もある。“症状がなければ、それで良し”ーー本当に、それでよいのだろうか? エンドに関わるすべてのGPは、多かれ少なかれこうした悩みを抱えている。そんな先生方、和達先生が言う“心優しい先生”にこそ、ぜひ読んでいただきたい1冊が本書である。『ザ・クインテッセンス』の読者なら、すでに連載で楽しんだであろうが、本書はあの人気連載を書籍化したものである。発刊から約1か月が経過し、売れ行きも非常に好調と聞く。その理由はなんだろうか? エンド専門医による根管治療の書籍は数多くあるが、本書はそれらとは一線を画している。“漫画(和達先生御本人が描かれていて、しかも驚くほどうまい!)仕立てでおもしろいから?”もあるだろうが、最大の魅力はそこではない。まずは、目次を見てほしい。 1.硬い歯 2.長い歯 3.歯冠がない歯 4.支台歯形成されている歯 5.隣在歯と近接している歯 6.遠心に傾斜している大臼歯 7.頬舌的に傾斜している歯 8.胴長な歯 9.下顎第一大臼歯の遠心舌側根 10.厚い骨、緻密な骨 11.薄い骨 12.伸びしろがない歯 これらの項目を見るだけでも興味をそそられるが、本書のポイントは、“どう治すか”というテクニック論ではなく、私たちが気づかぬうちに陥りやすい“隠れ難症例”に焦点を当てている点にある。“なぜ、その症例が難しいのか?”“どのように診断し、見立てるべきか?”をしっかりと解説してくれる点が、従来の書籍とは大きく異なる。本書の副題「ハマる前に知っておくべき“歯内療法の落とし穴12”」が、それを象徴している。 本書を読むと、だれもが過去にハマった症例を思い出しながら、「わかる〜!」と何度もうなずくことだろう。また、診断や見立てに重点をおいているため、マイクロスコープやNiTiロータリーファイルをもっていないベテランの先生でも、得るものは多い。さらに、漫画仕立てでイラストが豊富に盛り込まれており、ギャグセンスも抜群。楽しくスラスラと読み進められるため、活字が苦手な若手の先生でも抵抗なく読めるはずだ。そして各章の間には、根管形態や注意点をまとめた解剖学のコラムもあり、難症例と事前にわかった場合の患者説明や同意書のポイントも整理されている。 大学で長年教鞭をとり、だれにでも優しく、わかりやすい教育をされてきた和達先生ならではの1冊。できるだけ多くの先生の手に渡り、エンドのストレス軽減につながることを願ってやまない。

知っているようで知らない、食事のコト。栄養のコト。 文献ベースで歯科臨床の疑問に答える チェアサイドQ&A  食と栄養編

西岡心大・監著 黒木幸子/酒井理恵・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,180円(本体3,800円+税10%)・128貢 評 者 大野友久 (陵北病院・歯科診療部) 「刊行にあたって」にあるように、近年、歯科と栄養の関係性は急速に深まってきている。高齢社会の進展がその要因に他ならないのだが、そのように医学的・社会的に大きな課題となりうるものは、時として今まで関係性が薄かった領域同士を近づけることがある。歯科医療従事者にとって新たな職種との関係性の深まりは、新たな世界が広がることにつながるため良いことである。ありがたいことに評者もここ数年で、本書籍の監修である西岡心大先生をはじめとした優秀で尊敬できる管理栄養士とかかわらせてもらう機会が非常に増え、さまざま学ばせていただいている。その御縁から今回、『文献ベースで歯科臨床の疑問に答える チェアサイドQ&A 食と栄養編」について書評の機会をいただいた。 本書籍は「そういえばこれってどうなんだっけ?」という日常に潜む食と栄養と口腔関連のちょっとした50の疑問に対して、簡潔に明確に(わかっていないことはわかっていないと明確に)答えてくれる書籍である。小児から高齢者まで、また健常者からがん患者の栄養管理など、幅広いテーマの内容が用意されている。読んで覚えておくと、不意に患者さんから素朴な質問を受けたときに「えーっと、……あれ? どうだったっけ??」のようにならなくて済むだろう。歯科医学的な内容から少し外れた素朴な疑問は、意外と手ごわく、答えに窮することがままある。歯科医療従事者にとって、これまで栄養の領域はあまり馴染みがなく、難しい印象があったかもしれない。しかし、本書籍は非常に読みやすくおもしろい内容が満載で、書き方にも配慮がうかがえる。評者は家から勤務先病院の往復電車内で楽しく読ませていただいた(……片道2時間かかるのだが)。 また、回復期リハビリテーションでの栄養管理、嚥下障害、サルコペニア等の領域で次々と重要な英語論文を上梓されている西岡先生が監修しているため、回答の根拠となる文献もついており、その文献の要約も記載されている。文献を読むことにあまり慣れていない歯科衛生士や歯科医師にとってもたいへん読みやすいであろう。さらに、日本語の文章では結論を最後にもってきがちであるが、本書籍の結論・回答は冒頭に短文で記載されており、その後に詳しく解説するという形式となっているため理解しやすい。巻末には疑問に関連するレシピ集が載せてあり、評者も年末年始にいくつか作らせていただいたが、どれも簡単でとても美味しかったので皆様もぜひ作ってみてはいかがだろうか? 本書籍は月刊『歯科衛生士』で連載されていたものだが、本書の存在を歯科衛生士だけに周知するのではもったいないと評者は思っている。歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士はもちろん、その他の医療従事者、そして一般の方にも手に取って読んでみてほしい書籍である。

自家歯牙移植の知識と 技術をアップデートするために最適な書! 別冊ザ・クインテッセンス YEARBOOK 2025 8ステップで学ぶ! 自家歯牙移植Q&A

月星光博/泉 英之・監著 相宮秀俊/飯田吉郎/斎田寛之/佐藤俊一郎/ 月星太介/月星陽介/平井友成/福場駿介/ 吉田健二/Dick Barendregt/ Eggink Edwin/Manfred Leunisse・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・130頁 評 者 石川知弘 (静岡県・石川歯科) 欠損補綴において、残存歯に負担をかけない治療法として、インプラント治療は大きな優位性をもつが、長期的には顎骨の変化にともない発生する問題はコントロールが困難で、近年広く認知されるようになっている。自家歯牙移植は、適切に施術され成功すれば、インプラントよりもはるかに高い価値があると考えられる。本別冊は、今注目が高まっている自家歯牙移植学を正しく伝えたいという著者たちの思いによって発刊された。 総論では世界基準の移植術における検査・診断、テクニック、術後の管理について解説され、特別寄稿では移植の分野で世界をリードしているグループによる「歯根膜の力」というタイトルの症例報告により、歯根膜という組織のポテンシャルの高さに驚かされるとともに、われわれはもっとこの組織を信じて効果的に応用すべきだと思わされる。 各論はQ&A方式で移植のステップを検査・診断、治療計画、外科術式、根管処置、移植歯の自然移動と矯正移動、歯冠修復、術後管理、意図的再植と外科的挺出の項目に分けて10名の日本を代表する臨床家によって症例を通して解説されている。 「ステップ01」は初心者でも可及的に失敗を避け、移植術を臨床に取り入れられるように適応症、難症例の判断、他の治療法との選択や併用に関する情報が示されている。「ステップ02」は治療計画の立案における必須事項がもっとも的確、簡潔に解説されており、欠損治療に移植を考慮する時、術者はこの項の内容を知っておかなければならない。 「ステップ03」では実際のテクニックについて解説されている。ドナー歯の術前矯正の是非、抜歯のテクニック、ドナー歯の保存方法、受容床の条件による対応の仕方、骨移植の是非、固定の方法とスケジュールなど移植手術に不可欠な情報が網羅され、実践的で有用な情報である。 「ステップ04」では移植後の根管治療の時期と複雑な根管を持つ第三大臼歯の根管治療に対するアドバイスが簡潔に示されている。「ステップ05」では術後の自然挺出の期間とスピード、術後の矯正のタイミングと注意事項、「ステップ06」では歯冠修復とその選択について検討されている。「ステップ07」では移植術の治癒についての解説と成功率、生存率が示されるとともに、アンキローシスのメカニズムと対応が示されている。患者への説明、術後のフォローアップに欠かせない情報である。「ステップ08」では経験豊かな著者らが「歯根膜の力」を応用した、驚くべき治療結果が示されている。 以上のように、まさに治療ステップごとに大切な情報が簡潔に示され、移植について効率的に学ぶことができる。疑問に思うことがあればどこから読んでも必要な情報が手に入る。これから移植に挑戦しようとする者にとっては成功体験を積み上げるために、多くの症例をこなしている経験者であっても知識と技術をアップデートするために最適な書である。

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