これから歯科医療従事者として歩むすべての人に贈る必読の一冊 別冊ザ・クインテッセンス YEARBOOK 2026 これ1冊ですべて学べる! インプラント周囲疾患対応ビジュアルガイド 最新エビデンスに基づく基礎知識,検査・診断,予防,治療,メインテナンス
沼部幸博/岩野義弘/山口文誉・監著 芝 多佳彦/小柳達郎/蓮池 聡/清水里香/鈴木秀典/大月基弘/片山明彦/斎田寛之/ 山下素史/谷口陽一/石川知弘・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,800円(本体8,000円+税10%)・210頁 評 者 福場駿介 (東京科学大学大学院医歯学総合研究科口腔再生再建学分野) 本書の著者の1人である芝多佳彦先生(東京科学大学)が、以前講演のなかで話していた一言がいまも私の心に強く残っている。「インプラント周囲炎は、人類がつくり出した疾患であり、これを解決するのはわれわれ歯科医師の責務である」。 本書は、多彩な執筆陣が“インプラント周囲疾患への対応”を真正面から扱った別冊である。Part1「インプラント周囲疾患を知ろう」、Part2「予防法と治療法を知ろう」、Part3「メインテナンスを知ろう」の三部構成により、基礎から臨床判断,そして日常管理までを一気通貫で整理されている。 製品やシステムの進歩、基礎医学的理解の深化、CBCTやデジタル技術の普及により、インプラント治療は特定の専門医の領域から一般歯科臨床へと急速に広がった。結果として、インプラント周囲疾患は“専門家だけの問題”ではなく、一般歯科医師と歯科衛生士が日常的に向き合う課題となりつつある。 一方で、本疾患が歯科医師、歯科衛生士にとって難敵である理由も明確だ。歯周炎と共通点をもちながら、天然歯とインプラントという人工物の解剖学的差異に加え、外科的・補綴的要因が複雑に絡み合っている。加えて、エビデンスに裏付けられた治療プロトコルがいまだに確立されていない。本書は、そうした不確実性を隠すのではなく、現時点で到達している知見を整理し、状況把握から分析・診断、そして適切な対応までのプロセスとして提示している点が非常に明快で実践的である。 Part1では、インプラント周囲疾患の定義・分類の変遷から病因論、リスク因子、骨吸収・軟組織変化の捉え方、そしてメインテナンス時に“早期に見つける”ための検査と診断の要点まで、豊富な臨床写真と図表で“見て理解できる”ように構成され、インプラント初学者にも道筋が立つ。 Part2では、非外科・外科の選択、各種デブライドメント方法、再建療法におけるサブマージ/ノンサブマージなど、コンセンサスが揺れる論点もていねいに整理され、症例が多角的に提示される。 さらに特筆すべきはPart3で、術後管理をQ&A形式で具体化し、各歯科医院での器具選択や検査頻度、時間配分まで可視化されている。インプラントを行わない臨床医、歯科衛生士にとっても、他院埋入のインプラント管理が避けられない現状で、実践的なヒントに満ちている。 私の所属する大学病院のインプラント外来には、連日インプラント周囲疾患を抱えた新患が訪れる。超高齢社会の日本では、インプラント治療後のライフステージも長く、かつ多様である。安全なインプラント治療提供に加え、発症予防と発症後の適切な対応を、チームで学び続けることが、いま強く求められている。 本書はその出発点として、あらゆる歯科医療従事者の書架に置かれるべき指南書であろう。臨床の迷いを減らし、明日の臨床判断を支える“道標”として本書を勧めたい。
新人もベテランも、自信と指導力が同時にアップ! 新人から指導者まで役立つ インスツルメンテーションマスターブック
萬田久美子・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,500円(本体5,000円+税10%)・116頁 評 者 相宮秀俊 (愛知県・吹上みなみ歯科) 本書を手に取り、まず感じたのは「ていねいに臨床へ寄り添っている」という安心感である。著者の萬田久美子氏は、明るいパーソナリティーに加えて、深い知識に基づくわかりやすい表現が魅力で、以前から多くの歯科衛生士に支持されてきた。その萬田氏が,歯科衛生士がもっとも悩むテーマであるインスツルメンテーションについての本を出版したことはたいへん意義深い。 本書は、プロービング、探知、超音波スケーラー、シャープニング、SRPを軸に構成され、それぞれの章が互いに連続して理解できるようになっている。たとえば、プロービングの章では、「なぜ歯周ポケットが深くなりやすい部位が存在するのか」という解剖学的背景を押さえたうえで、持ち方やフォーム、練習方法までていねいに描かれている。プローブを通じて歯周治療の基本に立ち返る重要性を評者に再認識させた。 また、本書の大きな魅力は「美しいフォーム」である。手の位置、指の緊張、器具の角度が写真で示され、ページから今にも動き出しそうな躍動感がある。静止画ならではの「動きを想像できる写真」にて理解を深めた後、付随する動画(デンタルライフデザインチャンネル)との組み合わせにより、動画が感覚的理解を補助し、本文が考察を深める。 歯種ごとのポジショニングや解剖学的特徴に関する説明は、チェアサイドで施術前に何度でも確認したい。これは新人歯科衛生士に限らず、経験豊富な指導者にとっても体系化の指標となるだろう。臨床の習熟は、「手順の意味を理解すること」であり、本書はその理解を確かなものにしてくれる。 シャープニングの章は、単なる角度の解説に留まらず、ストーンの扱い、マイクロスコープによる確認方法、さらに経験の浅い歯科衛生士への教育法まで触れられている。そのため、新人からベテラン、指導者まで本書を繰り返し読み込み、歯科衛生士の技術は器具の刃へのこだわりから始まることを、本書を通じてあらためて実感し、技術を磨いてほしいと感じた。 各セクション末にFAQが配置され、「患者さんに痛いと言われたらどうするか?」といった率直な疑問に答える構成は、臨床の心配や迷いをその場で解決してくれるヒントが満載である。 歯科医療は、患者の大切な口腔を直接触る技術職である。努力は必ずしも即結果に結びつかない。しかし、一つだけ確かなことがある。インスツルメンテーションの練習を続けなければ、結果は永遠に変わらないということだ。練習を続ける手が未来を変え、臨床の質の向上に寄与する。本書からは、著者自身の絶え間ない努力と学び続ける姿勢がにじみ出ている。歯周基本治療は、歯科医療の根幹である。歯科衛生士のみならず、一読者である評者自身も、明日からの臨床を一歩前へ進めたい。その背中を押してくれる一冊だと確信している。
「美容入りの健康着地」で歯科医院“力”がUP! スタッフの主体性を 引き出すホワイトニング&デンタルエステ 導入・実践マニュアル
柏野紗耶加・監著 坂口雄一/田岡 雄/田中憲一/ 冨井真左信 /冨井明子/原田武洋/ 谷 菜摘/犬塚里美・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 4,950円(本体4,500円+税10%)・120頁 評 者 瀧野裕行 (京都府・タキノ歯科医院) 本書は、ホワイトニングやデンタルエステをテーマにしながらも、単なる技術論や集患論にとどまらないところが大きな魅力である。著者・柏野紗耶加さんの初の監著であり、歯科医療経営における「人」と「組織」に真正面から向き合った『待望の一冊』という表現にとどまらない完成度を備えている。 冒頭で示される「美容入りの健康着地」という言葉は、本書全体の考え方を端的に表している。ホワイトニングやエステを“ゴール”にするのではなく患者さんの健康へつなげ、同時にスタッフの成長とチームの成熟へつなげる“きっかけ”として位置づけ直している点が本書の大きな特徴である。短期的な成果に目が向きやすい歯科医院経営の議論に対して、「医院として何を大切にすべきか」という明確な指針を示している。さらにこの視点は、手法論にとどまらず柏野さん自身の姿勢やマインドセットに根差したものであり、全章を通して一貫している。 とくに第1章のチームビルディングとマネジメントについては、抽象論に終始せず現場で実装可能な「仕組み作り」「行動変容」にまで踏み込んでいる点が印象的である。評者自身もペリオ・インプラントを専門としながら、柏野さんの研修を通じて約3年間チームビルディングを実践してきたが、本書の内容は“理論”というより、実際の現場で起こる変化のプロセスそのものとして強く共感できる。 たとえば当院では、9つのチームとリーダーを設けるチーフ制度を導入したことで、組織の意思決定は分散化され、院長の役割は「管理」から「支援」へと変化を遂げた。さらに柏野さんを中心に、院長不在の場でスタッフ自らが「残業ゼロチーム」や「院長サポートチーム」といったトップダウンでは生まれ得ない組織を立ち上げた事例は象徴的である。ここには「任せることで人が育つ」という組織づくりの本質が表されている。 本書は、マインドセットという土台から入り、ホワイトニング、エステ、マーケティングといった各テーマへ段階的に展開される構成であり300院以上の支援経験に裏打ちされたツールや事例が豊富に盛り込まれている。坂口雄一先生をはじめ、それぞれの地域や診療形態の違うタイプの医院での成功事例が掲載されていることも興味深い。「自院ならどう活かせるか」をイメージしながら読み進めることができる。そのため、新規開業医からベテラン歯科医、院長のみならず歯科衛生士にとっても学びが多い内容である。 総じて本書は、美容メニューの導入マニュアルというものではなく、ホワイトニングやデンタルエステを「組織成長のためのツール」として捉え直し人材育成と組織の成熟に光を当てた点に真価がある。 臨床分野を問わず、歯科医師が自院の在り方を再考するうえで多くの示唆を与えてくれる一冊であり、柏野さんの実践と思想に深い敬意と感謝を表したい。















