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「はち歯科医院」規模拡大戦略の目指すところ

「はち歯科医院」規模拡大戦略の目指すところ
「はち歯科医院」規模拡大戦略の目指すところ
2012年に馬場先生を含めたスタッフ3人からスタートした「はち歯科医院」。2021年10月から、「地域に求められる歯科医院の未来」というテーマで、6回にわたりDental Life Designで連載されてから5年が経ちました。連載当時35人だったスタッフは110人まで増え、歩みを止めることなく様々なチャレンジを続けておられます。医院の拡大戦略の目的、多くのスタッフをまとめる秘訣、などの様々な問いに、医療法人星樹会 はち歯科医院 理事長の馬場 聡先生がお答えくださいました。




はち歯科医院拡大戦略の目的

-- 3人からスタートした「はち歯科医院」は現在110人までスタッフ数も増え、分院も展開されています。馬場先生はどのように規模を拡大していかれたのでしょうか 「開業当初は、忙しくて診療が回らないので増員して、の繰り返しでしたね。15人くらいまではすぐに増えました。経営していていちばん苦しいのは、患者さんが来ないとか経営難などではなくて、スタッフが辞めてしまうことでした。 医療法人星樹会 はち歯科医院 理事長 馬場 聡先生 --患者さんが少なくて困っている歯科医院もある中で、馬場先生が患者さんに困らなかった要因は何だと思いますか 「患者さんが少なくて…」とおっしゃる先生も実際いらっしゃいますが、私は本当に患者さんが少なくて困っている歯科医院は、極めて少ないのではないかと思っています。これは需要と供給の問題で、現在歯科医院はすでに減少していくゾーンに入っています。そんな現状なのに本当に患者さんが来てくれないのかは疑問に感じていて、よくよく聞いてみると「土曜日にはたくさん来てくれるんだけど、平日はあまり来てくれない」というのが実際の状況でした。私にも心当たりがありますが、これは仕方がないことで、どんなビジネスにおいても繁忙期と閑散期はあるものです。例えば飛行機でも、春休みや夏休み、土日の方がお客さんは多く、それに比べると平日は少ないものです。そう考えると、先述したように、本当に患者さんが来なくて困っている歯科医院はごくわずかであるという考えに至ります。これは規模の問題もありますが、私が開業した当初のような少人数の規模なら、特別なマーケティングなどをしなくても、一人ひとりの患者さんに向き合って丁寧に治療していれば、患者さんは付いてくれるものだと思います。特に地方の場合は患者さんにはそれほど困らなくて、逆に言うと地方には新たに採用できるスタッフがいないという問題があります。そしてこの傾向は地方に行けば行くほど強くなります。地方で開業している当院にとって、この問題をどう解決していくかが今後の課題だと考えています。 --規模を拡大していく上で、馬場先生が工夫されたことはどんなことでしょう スタッフ数が20人くらいになるまでは、ひたすら増員を続けました。そこからが実は大変で、スタッフがたくさん離職したり、また増えたりを繰り返す時期が1、2年ほどありました。何も考えずに、とにかく忙しいので人を増やそうとして、そうなると私の目が届かないからすぐ辞めてしまう、それでまた人を増やして、という悪循環でした。まるで「人を採用するために仕事をしているような」状態になってきて、「これは何とかしなければ」と思って、ビジネススクールで経営の勉強をするようになり、MBAを取得しました。以前から経営には強い関心を持っていました。学びの過程で、いろんな人たちの出会いや、経営に関する様々な本を読むようになって、「社会とはこうなっているんだ」「歯科業界の仕組みはこうだったんだ」と学ぶことができ、物事をかなり俯瞰して見ることができるようになりました。さらに、そこで一度立ち止まって「自分はどうしたいんだろう」と考えてみました。当院には長く勤務してくれているスタッフが多く、10年以上在籍するスタッフが20人以上いるんですね。このスタッフたちは辞めずにずっと頑張ってくれていて、勤務医の中にも当院で長年勤務してくださる先生が数人いました。その時に、「このスタッフたちと一緒に取り組みながら、地域を良くしていくという選択肢もあり得るのでは」と考えるようになっていきました。これから地方では目に見えて人が減っていく中で、私1人のマンパワーでできることはもう残されていないと考えた時に、できる範囲で拡大路線を選択して、私を含めてスタッフ全員が幸せになって、さらに社会も良くなっていく。もしそれがうまくいけば、もっともっと良い医療を展開できるかもしれないと考えるようになりました。ですから、ビジネススクールで学ぶようになってから、意図的に組織の拡大を狙っていったというのが真相です。とはいえ、歯科医療法人の事業規模はそれほど大きくはありませんから、現状では歯科が主導権を持って社会を変えていくのは難しいと言わざるを得ないですね。社会を変えるぐらいのインパクトを持つ歯科医院がいくつも出てこないと、社会を変えていくのは難しいと思っています。 --馬場先生が医院規模の拡大を目標にされているのは、将来的に社会を変えていくことが狙いなのでしょうか 私が変えるというより、すでに社会が変わってきていると言った方が正しいと思います。私は歯科医師会にも参画し、その中でいろんな勉強をさせていただく中で、開業を選択しない歯科医師が増えていることを知りました。開業資金が高騰し、医療機器のデジタル化も日進月歩で進化しています。そうした状況の中で、個人の歯科医院が大手医療法人と患者さんやスタッフを取り合うのはナンセンスです。そういう理由から、難しい舵取りを求められる歯科業界に柔軟に対応し、生き残っていくために規模拡大を目指したという部分もありますね。 開業して経営者になると、捨てないといけないものがたくさんあると思っています。その最たるものが「時間」です。例えば、歯科医師会の活動は、個人の診療の枠を超えて、広く社会全体の健康レベル向上に資する活動が求められています。そうした活動が社会を支えているわけですが、院長は自院を運営しなければいけない、歯科医師会の活動もしなくてはいけない、さらに地域での活動も求められます。この活動を院長一人で担うのはそもそも無理な話です。それに加えて、スタッフには週休2日や祝日の休日が必要ですし、パワハラやモラハラにも常に気を付けないといけません。私が開業した頃より、現在の方が圧倒的に厳しい時代だと思います。そこで、これからは職種を超えてチームを組んで臨むことが望ましいと考え、当院では院内で連携を密に取っていくスタイルを確立しつつあります。 2012年に開業した「はち歯科医院」本院 西鉄桜並木駅構内の1Fに分院となる「桜並木はち歯科医院」を2025年6月に開院

多くのスタッフをまとめていくための秘訣とは

--スタッフの数が増えると、教育システムの仕組みも必要になってくると思います 当院では、スタッフの入職後に1か月程度時間をかけて、まず医院のコンセプトやビジョンなどに関する座学講義を行います。その際に大事なポイントは、医院が最も大事にしているコンセプトをきちんと伝えて、十分に理解してもらうことです。また、それ以前に、スタッフ採用の際に私たちの組織にフィットする人を選べるかどうか。そのためには採用力がとても重要で、そこは教育とセットなのですが、スタッフのあるべき姿をきちんと設定して、そのあるべき姿に見合う人材を採用できるか、さらに採用後は、あるべき姿になるための教育ができるか、というところを仕組みとして落とし込むことが大事だと考えています。 --110人もスタッフがいると、まとめていくのが大変ではないでしょうか 部門やセクションごとにスタッフをわけるという方法もありますが、1つのコミュニティに20人、30人もいると、なかなかメンバー全員が打ち解けることはできません。もっと人数を減らして8人程度がチームとして最適な人数だと思いますので、そのチーム内で仲良くなれるように、当院にはいろんなチームが存在しています。その中で、いちばん大事にしてほしい仲間が「同期」です。入職した年は一生変わりませんから、やはり同期同士のチームの場合、頻繁に食事会を開催するなどして、交流を深めているようです。そのように絆を深めていくことで、その人となりがわかるようにもなり、「この人と一緒に働きたい」とか「あの人と一緒にこのプロジェクトをやってみたい」といった空気が醸成されるようになると考えています。

続・地域に求められる歯科医院の未来

--馬場先生が大事にされている「地域とのつながり」についてのお考えをお聞かせください 当院の3つのコンセプト「教育」・「家族」・「物語」を作った際に、それと同時に、「必ず大事にして欲しいもの」を5つ制定しました。その5つは、当院で歯科医療を行う上でなくてはならないものという位置付けになります。1つめはもちろん「患者さん」です。これは当然で、患者さんを大事にしないと医療は成立しません。2つめが「スタッフ」です。同じチームで働くスタッフを大事にできない人は、当院で共に働くことはできません。3つめが、「コ・デンタル」(歯科医師以外の歯科医療従事者)です。同じ医院に勤務しているかどうかは関係なく、この方々がいないと私たち歯科医師の仕事は成立しません。さらに4つめが「地域の方々」です。歯科医院の商圏をおよそ2キロ四方と考えて、その地域の人たちのうち、当院に通ってない人たちを大事にしないと、未来の患者さんはいなくなってしまいます。今は患者さんに困っていないとしても、未来の患者さんがいなくなったら私たちの仕事はなくなってしまいます。歯科医院は、基本的にはずっと“待ち”の仕事ですから、地域の方々を大事にしていく意識を持たないと、私たちの仕事は成立しません。最後、5つめは「自分」です。自分を大事にできない人は、患者さんもスタッフも大事にできません。はち歯科医院では、3つのコンセプト以外にこの5つを大事にしようと決めました。その中で、4つめの「地域の方々」を大事にするというところを具体的にイメージすると、今は当院に通っていなくても、「はち歯科医院のことは知ってるよ」とか、もっと言うと「はち歯科医院の人たちが、“むし虫歯にならないためにこういう生活をした方がいい”と言っていたよ」という噂が地域で広まっていく流れが大事なのではないかと考えています。 さらに、「詳しくは知らないけど、はち歯科っていろんなイベントやお祭りをやっているよね」みたいなコミュニケーションの場としての広がりでもいいと思っています。そのように地域を盛り上げていく、住みやすい地域にして人口を増やしていくことが、歯科医院の取り組みとしても必要だと思います。地域を盛り上げるという視点で言うと、「お祭り」は地域活性化につながるイベントの1つです。元々お祭りは、地域の町内会などが主催してお寺や神社で行っていましたが、例に漏れずここでも後継者不足で、私の近隣の町内会でも、72歳の方が「私がいちばん年下です」とおっしゃるのが現状です。その方々が一生懸命お祭りの準備をしてくださるのですが、いつまで続けられるのかを考えると厳しい状況と言わざるを得ません。一方で、歯科医院が長く地域に根付いていくために、お祭りを引き継ぎ、地域の人たちに喜んでいただくことも一つの方法です。単に客寄せという視点ではなく、地域の方々に「お祭り楽しかったね」という経験をしていただければ、関わるすべての人がハッピーになれるのではないでしょうか。やはり病院や歯科医院は怖い存在ですし、できれば行きたくない場所だと思います。それが「以前お祭りに行った歯科医院だったら馴染みがあるし気軽に行けそうだ」と思ってくださればそれでいいと思いますし、今後はそうした活動も歯科医院が率先していくことも考えていかないと、地域での交流の場がなくなってしまうのではないかと危惧しています。当院が主催する「はち祭り」もそんな思いから生まれたイベントで、これからもずっと続けていきたいと思っています。 2019年に開催された「第3回はち祭り」の様子。実に1,500人を超える皆様が参加してくださり、大いに盛り上がった。 --最後に、歯科医師の先生方にメッセージをお願いいたします これからの時代は、いろんな意味で「繋がり」がとても大事になると感じています。現在、当院でも他の開業医の先生たちと手を組んで、教育の部分に携わっていただいたり、一部診療にも来ていただいたりしています。今後は、そのような横のつながりが必要とされる時代になっていくのではないでしょうか。例えば、もし開業医の先生で本当に患者さん不足にお困りであれば、医院を週1日閉めて、当院で診療していただくという選択肢も見えてきます。また逆に、患者さんが多くて人手にお困りであれば、私たちが先生方の医院に出向いてサポートさせていただくことも可能になるかもしれません。当院はまだ他の医院を支えられるような規模ではありませんが、歯科医院同士が横の連携を強くしていくことは、とても大事な考え方であり、お互いに助け合っていければ、歯科医療の未来はそれほど暗いものではないと考えています。 インタビュイー 福岡県大野城市 医療法人星樹会 はち歯科医院 理事長 馬場 聡先生 <馬場 聡(ばば さとる)先生プロフィール> 福岡歯科大学卒業 九州歯科大学臨床研修医修了後、福岡県の歯科医院にて勤務 さくら歯科医院を継承後、はち歯科医院として開業 後に医療法人星樹会 はち歯科医院とし、現在に至る

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