"噛まない"、"噛めない"、あるいは"お口ポカ~ン"を始めとした、口腔機能発達不全症は、保育現場でも大きな問題になっている。 某県保育協議会の給食部会から、実態調査をしたいとの連絡をいただいた。 しかし現場で多人数についての調査では、口唇閉鎖力や舌圧測定装置などの機器は使えない。 もっと簡単で客観的に調べる方法はないだろうか? そこで思いついたのが、"ロウソクの吹き消しテスト"であった。 さて"玄米先生の弁当箱"魚戸おさむ(小学館)というマンガがある。 第6巻に、誕生日祝いのロウソクを吹き消すシーンが出てくる。 しかし、この4歳児は吹き消すことができなかったのだ。 そこでロウソクの吹き消しテストを思いついた。 これを幼児は、どの程度できるだろう。 保育協議会に提案すると、是非やりたいとのことであった。 保育園(23園)で3~5歳児(年少児~年長児)を対象に実施した。 方法は、椅子に座り、10cmと30cmの距離にロウソクを立て、炎を口の高さに固定し吹き消すように指示した。 これを現場の保育士が評価した。 その結果、年齢が上がるにつれ、吹き消すことができる幼児が増えた。 10cmでは、50~70%が簡単に、20~30%が何とかできた。 しかし30cmになると、急にできない幼児が増えた。 これだけで、口腔機能発達不全を判定できるとは思わないが、これが実態を示しているのだろう。 また様子を観察していると、"足が床についていない"・"座る姿勢が悪い"幼児は、消すことができないケースが多いことに気がついた。 姿勢と口腔機能は、深い関係があることがわかる。 さらに消せない幼児は、そもそも口唇をすぼめ"フ~"の口ができない。 "ハ~"、"ウ~"さらには"ス~"の口で消そうとしている。 きっと、"風車"や"シャボン玉"など、口遊びの経験がないのだろう。 (続く)
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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