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子どものための歯科って? Vol.2
―子どものお口の成長を育むためにできること―

2019/2/7 デンタル〇〇デザイン

本連載「子どものための歯科って?」では、生涯にわたる歯の健康の基礎が作られる子どもの歯と、歯科関係者はどう向き合えばよいか考えます。
2回目は、日本でわずか1,200人しかいない小児歯科専門医の重岡真理子先生に、子どもの口腔機能を正しく成長させるうえでとても重要な「食育」についてと、保護者の方々へ行っているアドバイスに関してうかがいました。

−−まりこ小児歯科では、保護者の方々への「食育」に関する指導も行っているそうですね。

はい、現代の多くの子どもに見られるのが「お口ポカン」と呼ばれる、口を半開きにした状態です。これは、食べ物をよく噛んで食べないことで、口周りの筋肉が発達しないことが主な原因ですが、他にも起こりやすくなっているのには、現代ならではの理由があります。その一つが近年乳児期によく使われる「抱っこ紐」と言われています。昔ながらのおんぶと違い、抱っこ紐で抱っこされている乳幼児は、頭が後ろに下がって寝ている姿がよく見られます。その姿勢になると、口を閉じていられないので、お口ポカンが習慣化してしまうのです。

−−抱っこ紐は母子が密着して、赤ちゃんの様子が常に見えることから一般に普及しましたが、そんな弊害があるんですね。

そうなんです。その他にも育児グッズでは、ストロー付きのコップも咀嚼機能低下の一因になっているのではないか、と言われています。ストロー付きのプラスチックコップであれば、親がぐっと押せば圧力で飲み物が押し出されます。すると反射で嚥下できてしまうんです。赤ちゃんの食事は母乳と哺乳瓶に始まりますが、離乳期の成長過程で、コップから水を飲むことを学習します。コップでの水飲みをするためには、唇をコップにくっつけて固定し、水がこぼれないようにしなければなりません。また口の中での舌の位置と動かし方も重要なのですが、近年、コップの前にストロー飲みを覚えることが一般化したことで、唇や舌の正しい動かし方を覚えずに大きくなる子どもが増えているんです。

−−そうした便利な育児グッズが増えたことで、人間本来の成長が阻害されてしまうことがあるんですね。

そういう子どもの問題って、歯や口だけではないんです。例えば最近の子どもは、自転車に乗る前の練習として、三輪車ではなく、ペダルがなくて足で蹴って走る2輪車によく乗っていますよね。確かにあれでバランス感覚は身につきますが、三輪車に乗ることで鍛えられる「ペダルを漕ぐ足の筋力」がつかないまま自転車に乗るので、かえって苦労するケースもあるそうです。

−−昔からずっと行われてきたことには、子どもの成長にとって必要なことが隠されているんですね。

そうだと思いますね。食事に話を戻せば、昔の日本の家庭では、ご飯を食べ終えてからお茶を入れて飲むのが普通でした。でもいまは、子どもも大人も、お水やお茶を食事と一緒に飲むのが一般的になっていますよね。しかし食べ物を噛まずに飲み物で流し込んでしまえるので、「よく噛んでものを食べる」という人間が生きる上で基本となる動作が、身につかない子どもが増えているんです。オムライスやカレーのような柔らかい食べ物を、水で流し込むような食生活が続くのは、子どもにとって大きな問題ですね。

−−なるほど、まりこ小児歯科では、来院する保護者の方に対してどのような食育や歯磨きなどの指導を行っているのでしょうか?

「毎日歯を磨いていて、フッ素も塗布しているのに虫歯になってしまって、原因がわからない」というお母さんには、一昔前に流行った「レコーディングダイエット」のように、1週間、⼦どもが何を⾷べたか、漏らさずにリスト化してもらうようにしています。そうすると、それを書いているときにお母さん自身が、「おやつの後に歯を磨いていなかった」といったように、原因に気づくことが多いですね。

歯磨き指導では、自宅で毎日するように、クリニックの床に敷いたマットの上で「いつもやっているように歯を磨いてください」と実演してもらって、改善点を伝えるようにしています。多少嫌がっても、毎日食後と寝る前に続けることで、子どもに「これは必ずしなきゃならないことなんだ」と習慣を植え付けることが大切です。お母さんたちにも「お子さんのために、毎日よくがんばっていますね」と称賛の声を伝えることは、心がけていますね。子どもが虫歯になって歯科医院に来られる保護者の方は、たいてい「自分のせいだ」とすごく罪悪感を抱いているんです。そこで歯科医から「説教」されたらますます落ち込んでしまいますので、できていることを最大限褒めて、「これから虫歯を増やさないようにこうしましょう」と具体的な方法を伝えるようにしています。
また食育に関しては、一人ひとりのお子さんの口腔機能の発達に合わせて、適切な食事を与えることがとても大切だと考えています。真面目なお母さんほど、育児雑誌やネットなどで「月齢何ヶ月になったらこういう食事を与えましょう」という情報どおりの食事を子どもに与えがちです。でも例えば「1歳ぐらいから、大人と同じものが食べられるようになります」と書いてあったからといって、前歯2本しか歯が生えていない子どもに、唐揚げをまるごとあげたら、噛まずに丸呑みするしかありません。丸呑みで食べることを覚えたら、奥歯が生えてきても、噛まずに食べることが習慣になってしまいます。タンパク質を食べさせたいのであれば、例えば柔らかい白身魚を与えてみるとか、少しずつ段階を踏むことが食育では重要だと考えています。

−−これからまりこ小児歯科が目指す目標があれば、教えていただけますでしょうか。

当医院の歯科助手、歯科衛生士には、保育士や栄養士の資格を持っているスタッフがいます。彼女たちと連携して、子どもたちの口腔機能の適切な発達を促す食事のレシピの開発や、保護者の方々への啓蒙活動に力を入れていきたいと思っています。また待合室には机も置いて、子どもたちが学校帰りに来院したときに、そこで宿題や勉強もできるようにしたいですね。小学校高学年ぐらいの子どもが一人で来ても、安心して治療を受けられる場所に当院がなれればと考えています。

−−日本でまだ数少ない、小児歯科専門医のお話、たいへん勉強になりました。ありがとうございました!

■■デンタルライフデザイン編集部では、まりこ小児歯科に来院される保護者の方々に、お子さんの歯の健康に関して日頃どのようなケアをされているか、アンケートを実施しました。その結果が、以下になります。

Q.日頃、お子さんの歯磨きや歯のケアに関して、苦労なさっていることはありますか?

・1人で歯磨きがなかなか上手くならない、集中して歯を磨かない。
(虫歯で来院した6歳女児の保護者)
・毎日の仕上げ磨きと、フロスを嫌がってなかなかさせてくれません。
(フッ素塗布のため来院した8歳と5歳のお子さんの保護者)
・歯磨きを嫌がり、すごい力で抵抗するので、歯磨き・仕上げ磨きをするのがたいへんです。
(2歳の女児の保護者)

Q. 虫歯を防ぐための工夫はなにかなさっていますか?

・寝る前の甘い食べ物、飲み物を控える。(6歳女児の保護者)
・間食時間を決めて、ダラダラ食べをしないように注意する。(9歳女児の保護者)
・定期的な検診と、歯科医院でのフッ素塗布やシーラント治療。(10歳男児の保護者)

Q.「小児を対象とする歯科医院に、期待することは?(絵本などのグッズ・設備でも、対応などのソフト面でもけっこうです)」

・子どもが嫌がらない対応や雰囲気づくり、保護者へのわかりやすい説明。
(6歳女児の保護者)
・明るい雰囲気、待っている間に遊べるおもちゃも何種類かあればいいと思います。
(2歳女児の保護者)
・不安にならないように治療内容を事前に伝えてほしい。治療をがんばったら褒めてあげること。(9歳女児の保護者)

アンケートを通じて、どのご家庭でもお子さんの歯磨きを習慣化するのにご苦労している様子が伺えます。小児歯科専門のクリニックは日本でまだ数少ないですが、全国の子どもが生涯にわたって自分の歯を大切に使い続けるためにも、その活躍の広がりが大いに期待されます。

まりこ小児歯科 https://www.mariko-ped.com/