アイルランドは、正式にはアイルランド共和国と言います。 アイルランドの地図【2】アイルランドの最新歯科事情
アイルランドは、英国の一部である北アイルランドとは別の国です。 アイルランド共和国を英国の一部と言うと、日本が中国の一部と言うくらい怒られます。 北欧の中のアイスランドとも一字違いで別の国です。 アイルランドの歯科医療モデルは、ヨーロッパの中の「ハイブリッドモデル」と呼ばれていて、英国の「ベバリッジモデル」と「北欧モデル」の混合のような形です。 <ヨーロッパの歯科医療モデル> 短くまとめれば、お兄さん格の英国の後ろを追いながら、北欧のように公務員の歯科医師を増やして国民の口腔保健の向上を狙いつつ、でも、人材も予算も間に合わないので、北欧に追いつくには程遠いというモデルです。 おまけに2008年のリーマン・ショックでアイルランドが受けた打撃は大きく、国家が破綻して、歯科医療費も随分削られました。 しかし、ここ数年、経済が上向いてきたおかげか、今年(2019年)、歯科医療制度に大きな改革が行われる予定です。 目玉は、0歳~16歳の子どもの(ほぼ)全面的な歯科医療が無料になることです。 <私の部屋に飾っていた抽象画。実は2歳の子どもの絵> 今までの歯科医療政策では、7歳、9歳、12歳に無料の検診が受けられましたが、人材不足でほとんどの子どもは12歳までに最初の検診を受けていないと批判されていました。 新しい歯科医療政策である Smile Agus Slainte(スマイルと健康)では、16歳までに8回の検診が国の保険制度に登録している歯科医院で無料で受けられます。 ・0歳~2歳に1回の検診 ・2歳~6歳の間に2回の検診 ・6歳~12歳の間に3回の検診 ・12歳~16歳の間に2回の検診 歯科医院の選択は自由です。 <遊園地の売店> 66歳以上の人には、義歯とインプラントの毎年の定期検診が入る予定です。 頭頸部がんの検査も含まれます。 Smile Agus Slainte(スマイルと健康)は、2019年から2026年まで続く予定です。 しかし、政府と歯科医師会との交渉はこれからとのことで、"ほぼ"とついている限り、どのような内容が全面的な歯科医療に含まれるのかはわかりません。 <暖炉のある歯科診療室> アイルランドでは、基本的に公立歯科医院が、小児と障害者を診ていて、国の保険制度に登録している開業歯科医院がそれを助けています。 上述のように待機患者の問題がある中、さらに検診数を増やすのですから、開業歯科医院が幼い子どもを診ることが急激に増えるでしょう。 アイルランド歯科医師会は、25年振りの歯科医療抜本改革で、予防歯科に焦点が当てられていることに歓迎するものの、どのような知識や技術が必要になるのか、会員は戸惑っているとのことです。 政府からの説明参考サイトは以下の通りです。 説明参考サイト <ある公立歯科医院の待合室> 次回に続く 「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 3 フロリデーション(上水道フッ素化、または水道水フッ化物添加)
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
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