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コラム

「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 3 フロリデーション(上水道フッ素化、または水道水フッ化物添加)

「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 3 フロリデーション(上水道フッ素化、または水道水フッ化物添加)
「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 3 フロリデーション(上水道フッ素化、または水道水フッ化物添加)

アイルランドの詳細はこちら(ウィキペディアより)
アイルランドの地図

【3】フロリデーション(上水道フッ素化、または水道水フッ化物添加)

アイルランドでは、1960年厚生大臣がフロリデーション法を提案、歯科医師らも支持しました。それに対し国民の一部が人権侵害を訴え、1965年に最高裁がフロリデーション法を合憲と判断して決着がつきました。1965年に首都圏、1973年までに他の都市部に1ppmのフロリデーションが始まりました。その結果、フロリデーションをしている地域の子どもたちの齲蝕が明らかに減少しました。 <首都ダブリンにあるラフカディオ・ハーンが子ども時代に住んでいた家> 2007年からはフロリデーションの濃度は0.7ppmを目標に下げられました。フッ化物配合歯磨剤が普及して、フッ素の取り過ぎが懸念されたからです。確かに日本に比べて歯牙フッ素症はよく見ます。白い斑点程度なので、気にする人はいないようです。 <浄水場にある水道水にフッ化物を添加する機械> しかし、フロリデーションの議論は常にテレビやラジオで行われています。よって、人々のフッ化物に対する知識は日本人よりずっと高いです。 <論文リンク> https://link.springer.com/article/10.1186/s12903-017-0345-x 2012年頃にショッキングピンクのビキニ姿でフロリデーションの反対運動をする若い女性が出現し、話題になりました。2018年にはアイルランド・食品安全機関が、アイルランドのフロリデーションでは健康に害がないことを調べました。 <浄水場にあるフロリデーションの部屋> 私が所属していたコーク大学口腔保健サービス研究所の修士課程では、必ず「フロリデーションvs.反フロリデーション」のディベートが行われます。自分の意志に反して、2グループに分かれて、議論するのですが、全ての学生が本心はフロリデーション派なので、茶番劇のように必ずフロリデーション派が勝ちます。教師側でフロリデーションに反対する人はいませんので、学生にこれほど影響するのですね。私は外部から来たので、そのバイアスがとても気になりました。 <浄水場にあるパネル> 最近終わったフロリデーションと口腔保健についての疫学調査を、私の同僚が行っていた時でした。データを分析していると、コーク上水場で調節するフッ化物の濃度が日々かなりの幅で変動していることがわかったのです。こんなにあちこちで議論しているのに!「四角い部屋を丸く掃く」アイルランドの国民性が現れている気がしました。 <浄水場にあるフッ化物濃度の記録簿> 次回に続く 「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol.4 パブの国で禁煙法を英断

著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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